完全大血管転位症の症状

完全大血管転位症では、生後すぐに、チアノーゼが起きることから心疾患が疑われます。全身から戻ってきた黒い血液は、正常な状態では、右房、右心室を通り、肺動脈から肺へ送られます。肺で酸素を得て、赤い血液となった後、左房、左心室から大動脈を経て全身へ送られます。

完全大血管転位症では、このままでは全身に酸素が送れませんので、大動脈と肺動脈の間、あるいは左心室と右心室の間、左房と右房の間に、卵円孔と呼ばれる穴があいています。卵円孔から血液が交りあうことで、大動脈から全身を流れる血液が酸素を得ている状態です。

完全大血管転位症の原因

完全大血管転位症の原因は不明であり、はっきりとした理由はわかっていません。胎児期には、動脈の元となる組織の動脈幹の内部に、壁ができることによって、大動脈と肺動脈が形成されます。

完全大血管転位症は、動脈の形成の過程において、遺伝子の異常によって、壁の形成異常が引き起こされることによるとする説があります。

完全大血管転位症などの先天性心疾患の原因として、母親の大量の飲酒や喫煙、胎児の害のある薬の服用、風疹などのウイルスへの感染、母体糖尿病といった母体からの影響によるともされています。遺伝子の異常に、いくつかの要因が組み合わされて起こるようです。

完全大血管転位症の治療法

完全大血管転位症は、先天性の病気ですので、予防方法はありません。生後2~3週間以内に、大動脈と肺動脈を付け替えるとともに、冠動脈も入れ替えるジャテン手術を行い、卵円孔も塞ぎます。

ジャテン手術が行えない場合には、人工血管を用いて右心室と肺動脈肺動脈をつなぐラステリ手術や、薬または手術によって、卵円孔を広げる処置が行われます。ジャテン手術後の予後は順調なケースがほとんどですが、カテーテル治療や再手術が必要とされるケースもあります。