ナルコレプシーの症状

ナルコレプシーの主な症状


ナルコレプシーの主な症状には、以下の4つが挙げられます。

1:日中、場所や状況に関係なく強い眠気に襲われる。気がついたら眠っている。

2:喜び・笑い・怒りなど、感情が高ぶったときに脱力してしまう。(情動脱力発作やカタプレキシーと呼ばれる)

3:睡眠麻痺(金縛り)が頻繁に起こる。

4:入眠時に現実に近い夢(幻覚)を見る。(体感幻覚という、暑い・寒い・痛いなどの感覚がある夢)


そのほかにも、眠気が強い状態で体を動かした結果、その間の記憶がなくなる「自動症」、夜間に何度も目が覚めてしまう、熟眠感を得られないなどの症状がみられます。

例外もありますが、思春期に発症することが多く、高校や大学進学などに影響しやすいです。治療を受けられないと周りから理解が得られず、心を病んでしまったり、希望の進路に進めなかったりすることがあります。

【タイプ1】に特徴的な症状


●情動脱力発作(カタプレキシー)
情動脱力発作は、ナルコレプシーに特徴的な症状の一つです。感情が高ぶるとろれつが回らなくなったり、まぶたが閉じたり、膝が笑うなどの症状がみられます。

重症な場合には、倒れこんでしまうこともあります。持っている物を落としたり、体をぶつけたりしてケガをすることもあります。

また、情動脱力発作は、意識はあっても脱力により返事などの意思表示をすることができないため、意識がないと思われることがあります。

●体温調節がうまくできない
【タイプ1】の人は体温調節がうまくできず、平熱が通常より低かったり、汗をかきやすかったり、手足が冷えやすかったりします。

代謝が悪いため、食事量のわりに太りやすく、睡眠時無呼吸症候群や糖尿病のリスクが高いこともわかっています。

ナルコレプシーの原因

オレキシンの欠乏


ナルコレプシーは、「オレキシン」という神経伝達物質が欠乏することが原因であると特定されています。オレキシンとは、睡眠と覚醒の維持において中心的な役割をしている物質です。

オレキシン細胞に対する自己抗体ができることで、オレキシンを作るオレキシン神経が損傷を受けてしまいます。その結果、オレキシンが分泌されなくなり、ナルコレプシーに至るのではないかと考えられています。

つまり、オレキシンが生まれつきないわけではありません。2019年現在、なぜ自己抗体ができるのか、オレキシン神経のみが障害されるのかについては、まだわかっていません。

【タイプ2】の人は、オレキシン濃度は低くありませんが、オレキシンが通常のように働かなくなっていることで起きると考えられています。詳細に関しては、まだわかっていません。

その他考えられる要因


ほかの人種の有病率(2000人に1人の割合)に比べて、日本人は有病率が高いと言われています。日本人だと600人に1人の割合ということがわかっています。

そのほかにも、ヒト白血球型抗原(HLA)と強い関連性があることも指摘されています。

また、ナルコレプシーなどの過眠症と発達障害(自閉症スペクトラム:ASD、注意欠陥多動性障害:ADHD)の合併がしばしばみられることがわかってきています。

ナルコレプシーの治療

薬物治療


ナルコレプシーの治療は、薬物療法が第1選択です。

昼間の眠気に対しては、中枢神経を刺激して目を覚ます作用のある薬を内服します。

情動脱力発作や睡眠麻痺(金縛り)、入眠時幻覚(特に悪夢)などに対しては、抗うつ薬を使用します。夜間の睡眠が充分にとれず睡眠不足になると、薬の効果が弱まってしまうため、注意が必要です。

生活習慣の改善


薬物療法と併せて、生活習慣の改善を行います。

日常生活で注意してほしいこととして、以下のことが挙げられます。

・夜間に睡眠時間を充分に確保する
・昼休みや夕方などに30分程度の仮眠を取る
・生活習慣を見直し、規則正しい生活をする


また、【タイプ1】の人は、高度の肥満や糖尿病になるリスクが特に高いため、暴飲暴食は避けましょう。