聴覚過敏とは
耳鳴、耳閉塞感、異聴(本来の音と違う音に聞こえること)と並んで聴覚異常感に含まれる症状です。
いまだ確率された定義はありませんが、「音が引き起こす神経信号の異常な増幅により、聴覚路内で音に誘発され神経活性が異常に亢進してしまうこと」とされております。
また、Stedman医学大辞典によれば、「通常の環境音に対する嫌悪的または苦痛な反応を伴うような音に対する感度の亢進」とされています。
聴覚過敏の原因
感音難聴
音の調節を司る内耳細胞の障害による突発性難聴、老人性難聴、騒音性難聴、強大音の暴露による音響外傷などで、音に対する調節が出来なくなり、過敏になります。
顔面神経麻痺
ベル麻痺、ハント症候群などにより、本来、強大な音から耳を守っている耳小骨のアブミ骨筋反射が低下することにより生じます。
耳管機能不全
鼻の奥にあり鼻と耳をつなげている管である耳管の狭窄と開放。特に、耳管の開放では自分の声が響く自声強調がおきます。
ストレス
音に対する脳の感度が亢進することが原因となります。
聴覚過敏の症状
■ 音が響く
■ 金属などのこすれる音が頭の中で響く
■ 本来の音より大きく聞こえる
■ あらゆる雑音がすべて強大な音に聞こえる
など
病院での聴覚過敏の治療法
検査内容
詳細な問診と標準純音聴力検査などの聴覚検査に加えて、聴覚過敏用に作られたKhalfaの質問紙などを用いて判断します。
治療内容
聴覚過敏の原因疾患がはっきりとわかればその治療をまず最優先に行います。
また、疲れやストレスなどに対する生活指導、心因性のものが原因であれば心療内科や精神科での治療を行います。
薬
原疾患の治療が優先されますが、基本的に薬で治るという状態ではないことが多いでしょう。
自分でできる聴覚過敏対策
外からの音を防ぐ耳栓や防音保護具であるイヤーマフの使用、また体の中の原因を抑えるための休養や音に対する環境そのものを変えることが対策になります。
聴覚過敏セルフチェック
□ 周囲の音を気にしないようにすることに困難を感じるか
□ 騒音のある環境で集中したり読書をすることに困難を感じるか
□ 知り合いから周囲の音に対して神経質だと言われたことがあるか
□ 社交場で周囲の音を不快に感じるか
□ 人に誘われたときに、すぐに周囲の音を我慢しなければならないと感じるか
□ 出かけた先で我慢しなければならない音のことを考えて、招待を断ったり、外出をやめたことがあるか
□ 周囲の音によって、ストレスやイライラを感じるか
※ 日本人の場合に当てはまるにはさらなる検討が必要とされています
(参照:「Khalfa Hyperacusis Questionaire日本語版の妥当性について」より一部抜粋)
最後に岡田先生から一言
聴覚過敏は、有効となる薬や治療法が確立されていなく、本人にしか症状がわからないこともあり、「様子をみる」もしくは「精神的なものである」と医療者側から回答されがちです。
そればかりか、疲れやストレスにより症状が増悪し、さらに悩むことになります。可能であれば、耳栓などで外からの音から自分を守り、独りで悩まずに根気よく医療機関に相談してください。
プロフィール
- 監修:耳鼻咽喉科 岡田先生
- 1982年生まれ、2000年群馬県内の県立高校を卒業後、同年4月に私立大学医学部医学科に入学。2006年3月に同大学卒業後、研修医として市中病院を2年間勤務。その後、大学病院に勤務し、2010年4月、大学院に入学、頭頸部癌、感染症を主に基礎研究を行い、医学博士を取得。