みなさんは、渡航外来という診療科を知っていますか?

 

長期休暇を利用して海外に行くという方も多いと思いますが、そのようなときに必要になってくるのが渡航外来への受診です。

 

海外に行く予定のある方は、ぜひ事前に知っておいてもらいたいもの。そこで今回は、渡航外来について医師に話を伺いました。

 

 

渡航外来とは

 

渡航外来(トラベルクリニック)とは、旅行や仕事、留学などで一定期間海外に滞在する方の健康問題に特化した外来のことです。以下のようなことに対応してもらえます。

 

・渡航前のワクチン接種

・健康診断

・診断書作成

・現地での健康維持のためのアドバイス

・薬や物品などの紹介

・帰国後の診療 など

 

※医療施設ごとに対応できる内容が異なるため、受診前に必ず調べてから行くようにしましょう。

 

 

なぜ渡航外来を受診したほうがいいの?

 

理由1:渡航前のワクチン接種

渡航先の国によっては、ワクチン接種歴や健康状態について英語の診断書を求められたり、規定されたワクチンを接種していないと入国できない場合があります。

 

日本ではほとんどみられなくても、渡航先の国ではよくみられる感染症(ポリオ、黄熱、A型肝炎、髄膜炎菌性髄膜炎など)に備えるためには、渡航前のワクチン接種が必要です。

 

反対に、麻疹・風疹など日本で特に流行している感染症を渡航先の国に持ち込まないためにも、渡航前のワクチン接種は大切です。

 

理由2:渡航先で必要となる知識を得る

渡航先の国では、さまざまな困難が起こる可能性があります。渡航外来では、渡航先で困ったときにどう対処したらよいか事前にアドバイスをもらえるので、困難に備えることができます。

 

たとえば、マラリアなど日本ではみられない病気になった場合にどうするか、予防薬や虫よけをどう使用したらよいか、野犬に噛まれた場合に狂犬病にはどう対応するのか、登山時の高山病にはどう対処すればよいかなど、渡航先ではこのような知識も必要です。

 

また、日本ではほとんど使用したことのない薬を活用しなければならない場合もあるでしょう。

 

もともと持病や常用薬がある方などは、渡航先での体調悪化や薬が切れてしまった場合に、同じような薬を手に入れるにはどのようにコミュニケーションを取るのが適切かなども、渡航前に考えておくことが大切です。

 

理由3:帰国後の診療

海外から帰ってきて発熱・下痢などがあった場合は、渡航先の国特有の病気を念頭に置いて診察を受ける必要があります。

 

一般の病院では、どの国でどのような病気が流行しているか、その病気にはどのような検査を行いどう対応するのか、といったことに慣れていない可能性もあります。そのため、帰国後の診療についても専門性を持った渡航外来で診てもらうとよいでしょう。

 

 

ワクチン接種は必ず必要?

 

ワクチン接種については、渡航先の国によって規定はさまざまです。事前準備がいらない国もあれば、短期の旅行であってもワクチン接種が必要な国もあります。

 

たとえば、アフリカや南米の熱帯地域では、黄熱のワクチン接種と予防接種証明書が必要になります。東南アジアなどの発展途上国に1カ月以上滞在する予定があれば、A型肝炎、日本脳炎、狂犬病などについて考慮する必要があります。

 

自分が滞在する予定の国や地域でワクチン接種が必要かどうかは、病気の流行状況によっても異なります。

 

各国の詳しい流行状況は、検疫所や大使館に問い合わせるか、厚生労働省検疫所*1 などで情報を探すとよいでしょう。

 

 

どれくらい前に受診したらよい?

 

海外渡航が決まったら、できるだけ早めに渡航外来を受診するようにしましょう。その理由としては、渡航先の国に必要なワクチンを全てリストアップし、いつどのワクチンを打つのかスケジュールを組む必要があるためです。

 

ワクチンの中には、期間をあけて複数回の接種をしないと十分に免疫を得られないものもあります。また、1つのワクチンを接種してしまうと、その後約1カ月間は他のワクチンを接種できない場合もあるのです。

 

すべてのワクチンが打ちたいと思ったときにすぐ手に入るというわけではありません。珍しいワクチンは海外から輸入したり、検疫所から取り寄せなければならない場合もあります。

 

さらに、ワクチン接種予定の方が体調不良になれば、接種できずに延期になることもあります。

 

渡航外来自体も予約制の場合が多いです。海外渡航の予定がある場合は、できるだけ早く渡航外来の予約を取ることをおすすめします。

 

 

受診時の持ち物は?

 

予防接種証明書には、いつ何のワクチンを接種したか、その日付まで詳細に記入しないといけない場合があります。そのため、母子手帳があれば持参するようにしてください。

 

旅行先の国や留学先が指定している記入用紙があれば、持参しましょう。また、常用薬、既往歴についても整理しておくとよいでしょう。

 

また、実際に持って行く予定の薬やお薬手帳などがあれば持参してください。

 

 

最後に医師から一言

 

厚生労働省検疫所*1 や日本渡航医学会*2 のWebサイトでは、渡航外来やトラベルクリニックの一覧もあります。海外でも健康に過ごし、意義ある滞在ができるように、渡航外来を活用してみましょう。

 

参考資料 

*1 厚生労働省検疫所

*2 日本渡航医学会 国内トラベルクリニックリスト