体調不良のとき、ちょっと体に異変を感じたとき、大きい病院と近所のクリニック、どちらの医療機関にかかればいいのか迷いますよね。
そこで今回は、病院とクリニック(診療所)の使い分け方について、医師に解説していただきました。
医療施設にはどんな種類がある?
日常会話の中では、医療施設を全てまとめて「病院」と呼ぶことがありますよね。
医療法という法律の上では、医療施設は「診療所」と「病院」の2つに分けられています。
診療所(クリニック)
診療所(クリニック)とは、主に入院を必要としない患者さんを対象とする医療施設です。診療所には入院施設がないか、あっても19人分以下です。また、診療所は、医師が1人いれば開設可能です。
「○○内科」「○○クリニック」などの名称が多く、地域のかかりつけ医の役割を果たします。
症状があるときに、最初に受診する医療施設であることが多いです。
病院
病院とは、20人以上が入院できる設備がある医療施設を指します。
病院はさらに、以下に分類されます。
・一般病院
・特定機能病院(高度な医療を提供する)
・地域医療支援病院(かかりつけ医の支援をする)
・精神病院(精神の病気の患者さんのみを受け入れる)
・結核病院(結核の患者さんのみを受け入れる)
それぞれの病院は、医師・看護師・薬剤師などの最低配置人数が決まっており、施設の構造についても法的な規制があります。
「特定機能病院」や「地域医療支援病院」は、診療所からの紹介患者さんを受け入れて、高度な医療や救急医療を提供する役割があります。
どのように使い分ければよい?
軽症で入院が必要ないと思われる症状の場合は、まず診療所を受診しましょう。
そこで入院や精密検査が必要と判断されれば、病院へ紹介状を持って受診するのが理想的です。
紹介状とは?
紹介状は、医師が患者さんを別の病院の医師に紹介するときに必要となる書類です。
正式には「診療情報提供書」と言い、患者さんの基本情報や病気・症状、治療の経過などさまざまな情報が記載されます。
病院の規模が大きくなるごとに制度は変わりますが、紹介状なしで規模の大きい病院を受診すると、診察料金に加算して料金が請求されます。
特定機能病院と一般病床が500床以上ある地域医療支援病院について、平成28年度以降は、医科(歯科以外)の場合、初診時に5,000円以上、再診時に2,500円以上が追加請求されることになっています。
この制度には、紹介状を持って受診する重症の患者さんの受け入れをスムーズに行い、軽症の患者さんが大きい病院を受診するのを防ぐ目的があります。
なんで使い分けが必要なの?
全員が病院を受診してしまうと、軽症の患者さんで病院が混雑し、本来の高度医療・専門医療・救急医療を提供する役割が果たしにくくなってしまいます。
また、病院に勤務する医師の働き方改革の上でも、病院の外来診療が医師の負担になっているという考え方があります。
患者さんからよくある質問
待ち時間も長くお金もかかるのに、どうして大きい病院を受診したがる方が多いのでしょうか?
以下の質問は、患者さんからよく聞かれることです。
【Q1】診療所の医師は信頼してよいのか不安です。
診療所の医師は1人しかいない場合もあり、心配になるかもしれません。しかし、診療所の医師はほぼ全員、かつては病院に勤務して指導を受け、腕を磨いている医師です。
また、診療所勤務になってからも、地域の医師会の講習会や学会などに参加し、知識をアップデートしている医師がほとんどですよ。
【Q2】診療所は、医療設備が限られているので、診断が遅れてしまうのでは?
「症状があって不安だから、最初からできるだけ詳しい検査を全部して、早く原因をはっきりさせて安心したい。」という気持ちはよく分かります。
しかし、軽い症状で必要性の低い検査を全て行っていては、医療経済的に破綻してしまいます。
【Q3】何か問題が起これば病院に紹介されるのだから、普段から病院で診てもらいたい。
病院と診療所(クリニック)で患者さんの医療情報を共有し、連携していく仕組みは発達してきています。
病院と診療所を使い分けていかないと、いざというときに本当に病院で治療が必要な人がスムーズに受け入れられない可能性があります。
最後に医師から一言
病気のときには誰だって不安になりますよね。その不安を「大きい病院なら何とかなるだろう」という形で打ち消すのではなく、普段から気軽に相談できるかかりつけの診療所(クリニック)を作っておくとよいでしょう。
また、そのようなかかりつけの医師と、緊急の場合はどうするか、住んでいる地域にはどんな病院があり、どのような方法で助けを求めたらよいかなどについても話し合っておくことができれば理想的だと思います。