飲み会続きで疲れがとれない、二日酔いがつらい…。その原因は、肝臓にあるかもしれません。

今回は、知っているようで知らない肝臓と二日酔いの関係について、日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医である中村先生に解説していただきました。

中村光康先生
(日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医)


そもそも肝臓ってどんな働きをするの?


<物質の代謝、解毒作用、胆汁の生成>
肝臓はお腹の右上にある臓器で、体内の化学工場にあたります。肝臓の細胞は、体を支える様々な働きをしています。

腸から吸収された栄養素は、血液と共に門脈* から肝臓に送られ、体に必要な物質に作り替えられ再合成されます。アルコールや薬など、体に有害な物質がある場合には解毒を行います。

また、脂肪の消化に必要な胆汁を作る働きや、体内で不要になった老廃物を胆汁に混ぜて体外に捨てる役割もあります。

* 門脈:消化管や内臓 (膵臓、胆嚢、脾臓)で取り込まれた栄養素などを肝臓へ運ぶ血管

なぜ二日酔いになるの?


飲食をすると、栄養を含む様々な物質が腸から門脈を通じて入ってきますが、細菌や薬の成分、食品添加物など体にとって有害なものも入ってきます。肝臓にはこれらを解毒排出する作用があり、アルコールも毒素とみなされます。

飲酒すると、アルコールは20%が胃から、80%は小腸から吸収されます。そして、血液中に運ばれたアルコールは、肝臓に運ばれた際にアセトアルデヒドという物質に変えられます。アセトアルデヒドはさらに分解されて、最終的に水と二酸化炭素になり、血液に戻され体外に排出されます。

しかし、肝臓がアルコールを分解できず、途中でできるアセトアルデヒドが体内に残ってしまうと脳にも悪影響を及ぼしてしまい、吐き気や頭痛などの症状が起こります。お酒を飲んだ翌日に、このような不快な症状が残っている状態を二日酔いといいます。

すぐにできる対処法とは?



【十分な水分補給】
お酒を飲むと、尿の量が増えて脱水になりやすくなります。アルコールによって、腎臓から水分を再吸収させるホルモンが麻痺し、水分が過剰に排出されてしまうためです。

飲酒の前後は、十分に水分補給をすることが重要です。

【十分な休養】
飲酒後は、十分に休養を取る必要があります。体を横にして休むことで、肝臓への血流量を増やす効果があるため、できるだけ横になって休むようにするとよいでしょう。

【アミノ酸やビタミンなどの栄養摂取】
お酒を飲むとビタミンの消費が早くなり、不足がちになります。そのため、ビタミンを始めとして、アミノ酸や電解質なども十分に摂りましょう。

中村先生からのメッセージ


毎日アルコール60g以上(日本酒で3合以上)のお酒を毎日5年以上飲むとアルコール肝障害になるリスクが高いと言われています。肝硬変になり、さらに癌になることもあります。

長期間飲酒を続けるとアルコール依存症を起こすこともあり、そうなるとせん妄や記憶障害など様々な合併症を起こして治療のため入院が必要な場合もあります。

また、お酒が分解される過程では「酸化ストレス」の原因となる活性酸素も過剰に発生します。肝障害の原因になるだけでなく体全体にとっても悪影響で、老化の促進因子といわれています。

お酒を飲むことは気分を明るくしてくれたり、人との関係を深めてくれたりする場合もあります。しかし、肝臓のアルコール分解能力には遺伝的な個人差もあるため、自分の限界を知り、飲めない人に無理に勧めないことを心がけましょう。



【監修】中村光康 先生
中村麻布十番クリニック 院長。慶應義塾大学医学部卒。医学博士
米国の肝臓研究所で博士研究員を務め、日本肝臓学会肝臓専門医、東部会評議員でもある。肝臓病はもちろん生活習慣病などの一般内科、胃・大腸の内視鏡検査など、総合内科診療を実践している。
診療科目:内科、消化器内科、アレルギー科