「子どもがどうしても学校に行きたがらない…」そんな悩みを持つ親御さんは少なくないようです。

 

不登校にはさまざまな要因がありますが、その一つに、分離不安障害という病気があります。今回は、分離不安障害について、精神科医の井上先生に解説していただきました。

 

 

分離不安障害とは?

分離不安障害とは、3歳以降の幼稚園や学校に行く時期に、母親や保護者から離れ、社会生活が送れるよう自立する過程でみられることのある精神疾患です*1。 

 

親と離れることに感じる「分離不安」は、多くの子どもにみられます。しかし、子どもの多くは不安に折り合いをつけ、克服していくことで自立します。 

 

しかし「分離不安」が克服できず、不安がどんどん大きくなってしまうと、腹痛などの身体的な症状が現れることがあります。このような症状が生活が困難になるほど強い場合、分離不安障害といわれます。

 

 

どのようなきっかけでなりやすい?

 

乳幼児期は、母親と一緒にいることで安心を実感します。そのため、分離不安障害の症状は、3歳までであれば発達段階として、正常の反応と考えられています。3歳以降の症状は、母親からの愛情を確かめるものだともいわれます。

 

分離不安障害の原因としては、3歳以降のイベントとして保育園や学校に行くなど、環境の変化が影響しているケースが多いです。

 

親の都合で住み慣れた町からの引っ越しを余儀なくされたり、両親が離婚したりするなども大きな環境の変化です。

 

さらに、親と一緒にいる時間が極端に短いなど、子どもが親からの愛情を確認できない状態であれば、より分離不安障害になりやすいのです。

 

 

分離不安障害の改善方法、予防法とは

【改善方法】

児童精神科で診察やカウンセリング、認知行動療法、箱庭療法などを行います。不安への感受性を減らし、不安を少なくする方法をとります。

 

不安の症状が強い場合には、極まれに抗不安薬など内服薬を使う場合もあります。 

 

【予防方法】 

家庭で子どもに愛情を持って接すると、自然と分離不安の克服がうながされ、分離不安障害に発展することを防ぐことができるといわれています。

 

お子さんの不安は、両親の精神状態にも影響されるため、おおらかな気持ちでいることも大切です。

 

 

周囲の人ができるサポートとは

 

まず家庭でできることとしては、家族と一緒に過ごす時間とスキンシップを増やすことです。

 

具体的には、お風呂に一緒に入ったり、一緒に寝たり、手をつなぐことも有効です。子どもがより「自分は親から愛されているのだ」という実感を持てるようにしましょう。

 

実際に学校に行けない場合は、学校の先生の協力や理解も必要です。

 

分離不安障害の症状が強いときは、無理せずに休ませるのも一つの手です。少しでも本人が頑張れそうであれば、最初は一緒に登校したり、保健室登校したりして段階的に進めていきましょう。

 

 

最後に井上先生から一言

親から離れるのは、誰にとっても不安な出来事です。だからこそ、子どもは親から物理的に離れていても、心理的な安心感を持っていることが大切です。

 

特に3歳までは発達段階として、親と離れることに極度の不安を感じるのは正常な範囲です。心配する必要はありません。

 

3歳以降に、分離不安障害かな…と思ったときは、ぜひとも児童精神を扱う医療機関に相談してみてください。

 

いきなり医療機関に相談することにためらいがある、近隣にそのような医療機関がないという方は、まずは市町村の保健センターやスクールカウンセラーに相談してからでも大丈夫です。

 

なにより、両親だけで悩みを抱え込まないようにしてくださいね。

 

参考資料

*1 カプラン臨床精神医学テキスト 日本語版第3版 P112

 

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。