2019年9月24日~30日は、結核予防週間です。結核と聞くと、時代劇などでゴホゴホと咳をして手のひらに血がつくイメージがあるかもしれません。結核は昔の病気と思われがちですが、現在も1年間に約1.7万人が罹患している病気です。
そこで今回は、結核について武井先生に解説していただきました。
結核の症状は?
結核の症状は、初期では喘息や風邪の症状と変わりありません。2週間以上にわたって以下の症状が出る場合は、結核の可能性も考えられます。
・咳、痰
・微熱
・倦怠感、食欲低下
・血が混じった痰が出る など
結核の原因は?
結核菌への感染
結核の原因は、結核菌に感染することです。発症すると、主に肺に炎症を起こします。
結核を発症している人の咳やくしゃみによって結核菌が空気中を浮遊し、それを吸い込むと感染します。このような感染の仕方のことを、「空気感染」と言います。
結核は、発症している人からうつるもので、感染していても発症していない人からうつることはありません。
潜伏期間は?
結核は、インフルエンザのように感染したら間もなく発症するような病気とは異なり、潜伏期間が比較的長いという特徴があります。これは、結核菌の細胞分裂がゆっくりであるためです。
結核に感染した人の約半数は、実際に発症するまでに半年から1年程度かかります。残りの半数強に関しては、2年以内に発症することが多い傾向にあります。ただし、2年経過して発症しないからといって、発症のリスクはゼロになるわけではありません。
長期間が過ぎた後、高齢によるリンパ球機能の低下、ステロイドの内服、抗がん剤治療などによって発症することもあります。お年寄りに結核が多いのもこのためだと言われています。
結核に感染した可能性がある場合
結核に感染しているか調べる
結核を発症している人が身近にいる場合は、結核菌に感染している可能性があります。病院や保健所などでインターフェロンガンマ遊離試験を行い、感染の有無を確認します。
年に1度は健康診断を受ける
結核に感染していても、実際に発症するまでは期間があることが多いです。そのため、定期的に健康診断を受けて、レントゲンなどにより結核を早く見つけることが大事です。
それによって、重症化を防ぐのはもちろん周囲への感染を防ぐことが可能です。
予防内服をする
結核に感染した直後から発症するまでの「潜在性結核感染」の状況では、結核の薬の1つである「イソニアジド」という薬を半年間飲み続けることで、発症のリスクを低下させます。
途中で服用をやめたりすると、耐性菌を作る結果になりかねないため、一旦服用を始めたら、きちんと飲みきることが重要です。
結核の治療
X線撮影検査と喀痰検査(培養・塗抹・遺伝子検査)によって、結核が発症しているか調べます。その後、結核菌を排菌している場合は、基本的に入院により薬物療法が行われます。
かつては治療期間が2~3年と長くかかっていました。現在は薬の質が向上したため、治療期間は半年~9カ月程度に短縮されています。
昔より治療期間が短縮しているとはいえ、治療薬は最大4種類使用するうえに、強い薬のため腎臓や肝臓、視力・聴力に影響が出るリスクがあります。
結核は予防できる?
1歳までにBCGワクチンを接種することで、小児の結核発症リスクを6割ほど減らすことができます。また、重篤な髄膜炎や全身性の結核感染症のリスクも7割ほど減らせることがわかっています。
しかし、予防接種の効果は10年ほどで切れてしまうため、大人になってからは注意が必要です。
最後に武井先生から一言
結核は、日本でも時々みられる疾患です。咳が長引いて悪化する、倦怠感があるなどの症状がある場合は、早めに受診してください。
プロフィール
- 監修:医師 武井 智昭
- 慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。