誰にでもなる可能性がある認知症。予防や根治のための治療など、世界各国で認知症に関する研究が進められています。

 

Doctors Me編集部は、2019年11月11日(月)に開催された『デール・ブレデセン博士来日記念 認知症対策特別セミナー』に行ってきました。今回は、気になるセミナーの内容をダイジェストでお送りします。

 

 

日本における認知症の現状と課題

ブレインケアクリニック名誉院長である今野裕之先生からは、日本の認知症の現状と課題についてお話がありました。

 

 

日本の認知症の現状

日本における認知症患者数は、2012年は4,620,000人、2025年には6,750,000人、2040年には8,020,000になると予測されています。

 

認知症の基礎疾患は、7割近くがアルツハイマー病です。2割ほどが血管性認知症、そのほかがレビー小体型認知症、前頭側頭変性症などになっています。

 

認知症治療における課題

現在の政府の方針としては、認知症の発症を遅らせ、認知症になっても希望を持って生活できる社会を目指しています。あくまで認知症との共生を目指し、「認知症を治療する」ということを目標としていないのです。

 

また、アルツハイマー病の治療薬には、現在4種類あるものの、どれも根本的な原因を治療しているものではありません。そのため、より根本的な治療薬や治療法が求められています。

 

リコード法

アルツハイマー病のリスク要因には、加齢や遺伝子、糖尿病、高血圧、肥満、感染など、多岐にわたります。リコード法は、これらの要因にアプローチできるオーダーメイドのアルツハイマー病治療法です。

 

従来は、アミロイドβという物質が脳に蓄積して神経が障害されると考えられていました。リコード法では、アルツハイマー病のリスク因子の発生後、防御反応としてアミロイドβが蓄積、そのあとに神経が障害されると考えます。ブレインケアクリニックでは、このリコード法の理論に則って、認知症予防のために取り組みを続けています。

 

 

認知機能低下の予防と回復:プリコードとリコード

アルツハイマー病などの神経変性疾患を専門とするデール・プレデセン医学博士からは、認知機能低下の予防と回復についてお話がありました。

 

 

リコード法

アルツハイマー病の原因は1つではなく、複数の要因によるものだと解明されています。リコード法とは、患者さんごとの原因を確定して、一人ひとりのサブタイプに合わせて対策をとる治療プログラムです。臨床試験が進められており、患者さんの認知機能が改善する傾向が見られています。

 

いずれ、アルツハイマー病は、ハンセン病やポリオのように過去の病気となるでしょう。

  

認知症の回復と予防の基本

45歳以上で、特に家族に認知症患者さんがいる方は、認知症予防を意識した生活を始めるとよいでしょう。

 

認知機能の回復と低下予防のための基本的な注意点は、主に以下になります。

 

・インスリン抵抗性を改善する

特に2型糖尿病は、認知機能にとってよくないため、ケトジェニックダイエットや適度な運動、十分な睡眠などで改善する。睡眠時に無呼吸になっていないかも確認する。

 

・栄養を摂る

ビタミンB12など、十分な栄養を摂る。

 

・整腸

プロバイオティクスやプレバイオティクスで腸の調子を整える。

 

・感染症の治療

HSV(単純ヘルペスウイルス)やボレリア菌などの病原体に感染している場合は治療する。口腔内の衛生環境も重要なため、歯周病や歯肉炎の予防や治療も必要。

 

・毒素の除去

金属毒素や有機毒素、生物毒素など、毒を特定して除去する。

 

 

編集部コメント

認知症は一度発症すると治らない病気というイメージ強かったのですが、セミナーをうけて、いつか認知症を根本的に治せる時代がくるのかもしれないと希望を持つことができました。

 

認知症のリスク要因には、肥満や睡眠不足など、生活習慣も挙げられていました。日頃から健康的な生活を送ることが大切ですね。