新型コロナウイルス感染症の診断に用いられているのが「PCR検査」です。ニュースなどでも聞いたことがある人が多いと思いますが、どのような検査なのでしょうか。分かりやすく解説します。
PCR検査とは
PCRとはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略で、患者の体液から採取した遺伝子を複製して数を増やし、ウイルスを検出する方法です。
患者から採取された検体をそのまま検査しても、遺伝子の量が少なすぎてウイルスを検出することは難しいとされています。
しかし、PCR法で遺伝子を増やすと、ウイルスを見つけやすくすることができます。
光る薬でさらにウイルスを目立たせる
今回の新型コロナウイルス感染症の検査では、従来のPCR法の手順にひと手間加えられています。
それは、ウイルスの遺伝子に光って反応する「蛍光試薬」を使用すること。
ウイルスの遺伝子が増えれば増えるほど光は強くなるので、さらに発見しやすくなるのです。
大阪大学微生物学研究所 微生物病研究所からのコロナウイルス情報:ウイルス検出法
PCR検査では何をするの?具体的な流れ
「帰国者・接触者相談センター」(24時間対応)や、開業医などのクリニックで診察した医師によりPCR検査が必要と判断された場合には、患者を帰国者・接触者外来へ紹介し、そこでの医師の判断を踏まえて検査を行うこととなります。
検査の方法
患者の検体は、「殺菌した綿棒を鼻の穴に入れてぬぐった液」「吐き出した痰」などから採取されます。
結果が出るまでの期間は状況次第ですが、1日~数日の間とされています。
2019-nCoV感染を疑う患者の 検体採取・輸送マニュアル200228更新
PCR検査の費用
帰国者・接触者外来を設置している医療機関などで必要性が認められたPCR検査費用については、原則患者負担はありません。
ただ、そのときの患者の症状の状況や検査希望の有無によっては、以下の費用が発生する可能性があります。
- ・6~70歳の方、70歳以上で現役並みの所得がある方:4800~5850円
- ・6歳未満の方、70~75歳の方:3000~3900円
- ・75歳以上の方:1500~1950円
新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて
PCR検査で陽性になったらどうなる?
入院した場合は、以下の条件を満たせば退院することができます。
- ・症状が軽快して24時間後のPCR検査で陰性を確認
- ・1回目の検体採取後24時間後に再度検査を行い、2回連続で陰性を確認
ただ、陰性になった後、再び新型コロナウイルスが陽性となる人がわずかですが確認されています。
咳や発熱などの症状が出た場合は、帰国者・接触者相談センターに連絡して判断を仰いでください。
また、民間企業が販売しているPCR検査キットでは、陽性にも関わらず陰性の結果になる「偽陰性」が出る可能性が指摘されています。
検体の採取や検査結果の判断には専門的な知識が必要です。PCR検査は指定された医療機関で受けるようにしましょう。
まとめ
PCR検査は、ある程度のウイルス量があればほぼ正確に診断できるとされている方法です。もちろん、検体の取り方や場所、感染からの経過日数などによってその正確さは変わる可能性もあります。
発熱などの症状があったり、新型コロナウイルス感染症に対する不安があったりするときは、まずは「帰国者・接触者相談センター」に相談してみましょう。
プロフィール
- 監修:医師 井林雄太
- 福岡の国立総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床、健康長寿に関連するミトコンドリア基礎研究に従事しつつ、内分泌代謝内科専門医や糖尿病専門医等の資格を取得。栄養学/アンチエイジング学にも専門を広げ、予防医学の一環として内分泌・糖尿病教育に力を入れながら医療系メディアにおいて情報発信を行っている。