薬剤性難聴の症状

薬剤性難聴の症状は、蝸牛に障害が起こった場合には、耳鳴りで始まることが多いのですが、耳鳴りが起こらないこともありますので、こういう場合は気づいてみれば難聴になっているということがほとんどです。初めは高い周波数の音が聞き取りにくくなり、次第に会話で使う周波数に達すると、いよいよ難聴に気づくことになります。

そしてさらに低音域へと進行していき、最悪の場合は、まったく聞こえなくなります。しかも両方の耳に症状が出ることがあります。薬によっては、めまいやふらつき、時に吐き気や頭痛が起こることもあります。とくに前庭半規管が大きな損傷を受けた場合は、歩行時に景色がぶれるようになり、歩行障害になったり、転倒しやすくなったりします。

薬剤性難聴の原因

薬剤性難聴の原因は、内耳に障害を与える薬剤によるものです。アミノ配糖体系という、ふつうの炎症に用いられる薬剤が属すグループの薬剤ですが、難聴が起こる可能性を注意深く観察しながら用いなかったり、長期間にわたって使用することが避けられない場合などが考えられます。

代表的な薬剤にはストレプトマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシンなどの抗生物質、利尿剤のフロセミド、抗がん剤のシスプラチンがあげられます。いずれの薬剤でも内耳の感覚細胞の障害が発生します。また薬剤の種類により、障害を起こす部位が蝸牛に起こすものと前庭半規管に起こすものとにわけられます。前者にはジヒドロストレプトマイシン、カナマイシン、後者には硫酸ストレプトマイシンがあげられます。

薬剤性難聴の治療法

薬剤性難聴は、難聴を感じていなくても、耳鳴りが起こったら聴力検査を行うことで早期に発見することで予防します。アミノ配糖系の薬剤を使用しても全く難聴を起こさない人もいますし、短期間のうちに症状が出る人もいますので、薬剤の使用を始めたら注意深く経過を見る必要があります。

結核などの治療はアミノ配糖系薬剤を長期間使用する場合は定期的に聴力検査を行い、難聴の兆候があれば薬剤の使用を中断するか、他の薬に切り替えて様子をみます。とくに点耳薬は、耳に障害を起こすものが少なくないので、10日以上連続して使用しないようにし、薬剤の併用にも注意します。また腎機能が低下している人や高齢者は薬が体内に蓄積しやすいので、注意が必要です。