医師監修

包虫症/エキノコックス症とは

「エキノコックス症」とは、エキノコックスという寄生中の一種が人体に侵入することによって起こる諸症状のことを言います。体内に異物が混入して引き起されることから、感染症の一例と捉えられています。感染経路としては犬、猫など糞に混入したエキノコックスの卵が作物、飲用水などに混入しそれを人が口から摂取してしまうことが挙げられます。エキノコックスが体内に入ると主に肝臓にコロニーを作って増殖し、重大な肝機能障害を引き起こします。

包虫症/エキノコックス症の症状

エキノコックス症は、感染初期には自覚症状がないことがほとんどです。卵の状態で体内に入ったエキノコックスは、幼虫の状態で血管やリンパ管を移動し、9割以上が肝臓に病巣を作ります。感染したばかりのころは症状が出ないため気づきにくいですが、やがて成長していくとともに嚢胞と呼ばれる病巣を作り出し、肝臓に定着して数を増やしていくことにより徐々に肝臓の機能を阻害してしまいます。

最終的には肝臓が腫大し、右腹部に痛みを生じます。また肝臓の腫大が胆汁を分泌する胆管を圧迫してしまうために黄疸の症状が発現することもあります。あるいは皮膚に激しい痒みを伴う、腹部に水が溜まってしまうなどの症状を連鎖的に発症してしまうこともあります。

また嚢胞が破れて中の寄生虫が露出してしまうとアレルギー症状の重篤な状態、アナフィラキシーショックを発症して非常に危険な状態となることがあります。また嚢胞が破れると、肺や脳に病変が転移し命にかかわることがあります。

エキノコックスの潜伏期間は非常に長く、成人なら10年、小児で5年と言われます。この間に自覚症状がほとんど無いため、事前に発見して対処することを難しくしています。

包虫症/エキノコックス症の原因

エキノコックスは産卵、成長の過程で複数の動物に寄生する寄生虫です。
寄生される動物を宿主と呼び、幼虫が寄生する中間宿主が野ネズミなど、成虫が寄生する終宿主がキツネや犬などです。

終宿主である動物の糞とともに虫卵が排出され、その水や土から生えた草等を中間宿主が食べることによって、体内で孵化し幼虫となります。さらに中間宿主を終宿主であるキツネなど肉食の哺乳類が捕食することによって、終宿主の体内で成長、産卵し世代交代するのです。よって、エキノコックスに感染してしまう可能性があるのはのは、キツネ等の野生動物が生息している地域であり、日本では北海道に多いことが知られています。

人間に感染するのは虫卵に汚染された井戸水や沢の水、山菜などを加熱せずに摂取してしまうことが原因だと考えられています。

包虫症/エキノコックス症の予防/治療法

エキノコックスの予防としては、感染例の多い地域で土や草木に触った場合は、その後にしっかり手を洗うことです。

キツネの生息数が多い地域では卵の駆除の目的で定期的にこれらの動物を捕獲する対処も取られています。そして経口感染を防ぐために最も注意すべき点は、そのような地域で生水を飲まないことや山菜等を加熱せずに食べないことです。エキノコックスの発症があることが認知されている地域では、井戸水や沢の水は必ず煮沸して飲用とします。エキノコックスは熱に弱く、60度以上で完全に死滅させることができます。井戸水や沢の水、山菜などを必ず加熱することが重要な予防策と言えるでしょう。

エキノコックスは症状が発現してから完治させるのは難しいこともあるため、北海道では検診等でスクリーニング検査を行っています。他にも感染例の多い地域、南米、地中海、中央アジア、アフリカ、カナダ北西部などに出かけ自然林の多い場所などに滞在した場合は、予防を目的として医療機関を受診すること望ましいでしょう。

潜伏期間の長いエキノコックスは感染したかどうかを個人で判断することが非常に難しいのが問題です。感染を防ぐためには、日本では北海道に多く生息していることを認識、海外旅行をする場合には現地にどのような感染症の危険があるのかを事前にしらべ、汚染されている可能性のある地域で加熱せずに飲食物の摂取を避けることです。

万が一、エキノコックスに感染してしまった場合の治療は薬物治療や肝臓の切除術が行われます。

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