糞線虫症の症状

糞線虫症の症状についてお話します。糞線虫の幼虫が皮膚に侵入する時、痒みを伴う丘疹が現れる時があります。
感染後に免疫反応として咳や痰、喘息様の呼吸器症状、変化する肺浸潤影などが認められることがあります。
病原性の雌虫が十二指腸の粘膜に寄生すると、一過性の粘り気がある下痢便や下痢と便秘が交互に繰り返すといった消化器症状が出現する場合があります。それと同じ時期位に蕁麻疹や線状の皮膚炎など皮膚症状が生じる時があります。しかし、糞線虫が寄生していても、明らかな症状が出ない無症候性の人がいます。
体力が衰弱した人や免疫抑制療法中の人などは重症化しやすく、播種性糞線虫症といい、人体内で自家感染が過剰に起こり、消化吸収障害や腸管麻痺、血中に大量の腸内細菌と糞線虫が放出されて全身にまわる敗血症、肺炎、化膿性髄膜炎などを合併するという生命の危険な状態になる場合があります。

糞線虫症の原因

原因である糞線虫は、国内の鹿児島の奄美大島や沖縄などの南西諸島に分布しています。糞線虫は雌の単為生殖によって子孫を増やす特異な寄生虫で雌成虫は長さが2~3mmです。
感染は裸足でぬかるみの中を歩いたり、水溜りや池で行水するなどで人の皮膚に侵入して感染します。表皮を突き抜けた後は、血流に乗って右心から肺にいき、ここで方向を変えて細気管支、気管、食道の分岐部まで上がり、さらに飲み込こまれ腸管におりて十二指腸の粘膜の奥深くに寄生して、病原性である雌虫になり産卵をして人の体内で自家感染をし生活環を形成します。この生活環境により何十年に及び感染が続く場合があります。
体が衰弱した人やステロイド薬、抗がん薬などで免疫力が低下しているひとは糞線虫が過剰に増えて播種性糞線虫症という発生の原因となります。

糞線虫症の治療法

糞線虫症は、自然治癒ではほとんど望めませんので軽症であっても治療を行う必要があります。駆除薬であるイベルメクチンによる投与が有効です。播種性糞線虫症では腸内細菌による敗血症や化膿性髄膜炎を合併しますので、抗菌薬と併用して長期にわたり全身管理をする必要があります。
感染する恐れがある地域に行く場合には、汚水や汚れた土壌を素手・素足で触れないようにすることが大切です。
ペットに感染した場合では治療を早く行い、治療時にはペットの糞はすぐに処理するようにして、周囲の環境を清潔に保つようにして予防を行いましょう。