外傷性頸部症候群の症状

外傷性頸部症候群は、交通事故などで頸部が瞬間的に激しく振れて、首の軟部組織に外傷を負った状態です。このため、首の痛みやこわばり、頭痛などのほか、軟部支持組織に含まれる深部受容体や交感神経受容体が影響を受けるため、めまいやふらつき、吐き気、耳鳴りなどさまざまな症状を発症します。時には記憶障害や認知神経機能障害などを伴うこともあります。
症状は事故直後に表れるだけでなく、数時間から数日後にも発症することが多いのも特徴です。
また、首の奥には「頸髄」という手足につながる神経の幹があり、そしてそこから神経の枝が手に伸びている神経根があります。これらの神経が損傷を受けた場合、むち打ち損傷にとどまらず身体機能に重大な影響をきたす恐れがあるため、事故後はできるだけ速やかに検査を受ける必要があります。

外傷性頸部症候群の原因

外傷性頸部症候群の症状が発症する原因は、追突などの衝突事故によって、頭部が瞬間的に大きく振れることで頸部の軟部支持組織に衝撃を受けることによる損傷です。事故などで衝撃を受けたとき、頸椎へ過大な負荷を防ぐため身体が反射的に筋緊張を起こし、首を支える筋や腱の組織の断裂、および靭帯の損傷といった軟部支持組織がダメージを受けることでさまざまな症状を引き起こします。
追突などの事故では、衝突のショックにより体が強い力で前後に動かされ、頸部がむちのようにしなることで損傷につながるため、以前はむち打ち損傷と呼ばれました。しかし、むちのように加害的に与える動きではないため、現在では外傷性頸部症候群という呼び名が一般的に使われます。頸部捻挫、頸部挫傷と呼ぶこともあります。

外傷性頸部症候群の治療法

外傷性頸部症候群と診断されたら、鎮痛剤や筋弛緩剤、湿布薬等による治療を受けます。また一定期間は安静にしなければなりません。ただし損傷の度合いによっては、あまり長期間の安静はかえって症状を長引かせることになり慢性化につながります。これを予防するため、医師の判断のもと適正な期間を経たのちは、徐々に首を動かして筋組織の柔軟性や筋肉の強化を促し、運動機能の改善を目指すほうがよいとされています。
かつては長期間首にカラーをつけることが多かったですが、近年では比較的早い段階からリハビリを行うことが、治療の長期化を防ぐという考え方が浸透してきています。