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産まれたばかりの子を引き取って育ててますが、子猫の頃からフラフラした歩きで、ネッ...

獣医師への相談

相談者40歳/女性
産まれたばかりの子を引き取って育ててますが、子猫の頃からフラフラした歩きで、ネットで探すと小脳形成不全の猫と同じような動きです。
ご飯も食べるし、おしっこウンコも自分で出来て元気なのですが、なにか良くなる方向へできる方法がないのだろうかと思います。
近所の獣医さんには確定診断は麻酔をしてMRIをとる方法があるとのことですが、もともと障害がある子なのでリスクがあると。田舎なのでMRIがある病院も近くにはありませんし。
なにか方法はありますか?
症状としては、3歳の今までに2回、ひきつったようになりましたが一晩だったら元に戻ってました。あと、シッポを踏んでも無反応など痛覚がないような。
4匹兄弟で捨てられていて、バラバラに引き取られたのですが、うちの子ともう1匹がフラフラしていて、あとの2匹は普通にしています。
獣医師からの回答
こんにちは、ご相談ありがとうございます。

生後間もなく保護され、いま3歳の猫ちゃんがいらっしゃるとのことですね。
そして、小脳形成不全の猫の動きに似ているような動作が見られるとのことですね。


まず生まれつきのフラフラとしたような動きについては、確かに首から上の脳の異常を疑います。
小脳は運動の制御に関わる部分ですので、相談者さまが発見した「フラフラとした歩き」や「シッポを踏んでも無反応(痛いという知覚を、痛みを示す動きにつなげられない)」というできごとは十分に小脳の異常を疑う訴えと言えると思います。


小脳形成不全について、こちらのページに概要がまとめてありますのでよろしければご参考になさってくさい。
https://doctors-me.com/pet/cat/nerve/4

これを前提としたお話しになりますが、猫ちゃんでの小脳形成不全には猫汎白血球減少症と呼ばれるパルボウイルスが原因になる疾患が背景にあることが多くみられます。

4匹の同腹猫ちゃんがいたうちの2匹で同じような小脳の異常を疑う症状が見られることから、その原因が小脳形成不全が仮定すると、もともとその母猫が妊娠中にこのウィルスに感染していたために、胎子に小脳の形成不全(低形成ともよばれます)が生じたということも考えられます。
お話を伺う範囲では、個人的にはこちらの疑いがあるのではないかという印象をもちました。
突発的に小脳形成不全が偶然2匹で起こるというよりは、妊娠猫でのウイルス感染により子供4匹のうち2匹が小脳に異常が出るという方が確率は高いと考えます。

状況を確定するためには、たしかにかかりつけの先生がおっしゃるようにMRIを使った検査が必ず必要になりますし、そのために麻酔のリスクを考えなくてはいけません。
また仮に本当に小脳形成不全であったと確認されても、さきほど引用したページにあるように生まれつきの異常については治療して異常のない子と同じように機能回復することは不可能になるため、できることがないという状態になります。

すでに3歳まで成長しており、自分で排泄や食餌がコントロールできている点を考えるといまはその子なりにじょうずに生活できていると考えられるため、動作についてはひとつの個性として受け入れるという考え方もありますし、また麻酔リスクは年齢が上がるほど増していくのも一般的なので若いうちにしっかり調べておくという考え方もあります。
MRIについてはこのような観点でいまいちどご検討いただければと思います。

個人的にはMRIに進む前に、背景にパルボウィルス感染があったかもしれないという点をもう少し確認する価値はあるかもしれないと思います。
パルボウィルスは母猫から子猫へ母子感染すると言われており、多くは幼い猫で感染すると致死的になってしまうのですが、たまたま運よく(小脳に異常は出たものの)命を落とさずに済んだというケースかもしれません。
この場合に、ウィルスキャリアである(発症していないがウィルスを持っている)ケースがわずかにあります。すでに元気に3歳になっているとのことなので、とても可能性が高いとも言い難いのですが、抗体価を調べることである程度感染歴にあたりをつけることができるかと思います。
かかりつけの先生ともご相談されてみてはいかがでしょうか。

ご参考になりましたら幸いです。

相談者40歳/女性
お返事ありがとうございます。
以前から獣医さんに聞きたいと思いながら、ゆっくり聞ける機会もなく過ぎてきたので、今回相談することができて良かったです。
もうひとつ、気になることを相談させて下さい。
この子の他に、3匹の猫を飼っています。
もうすでに3年経っていますが、ウイルス感染が原因としたら感染する可能性はありますか?
獣医師からの回答
パルボウィルスは便や唾液に出てくるため、もし感染して十分にウィルスを排出している子と日常生活を共にしていたら容易に直ちにうつって、深刻な下痢や血便を引き起こします。また多くの場合で致命的になります。
猫ちゃん本人も3歳まで元気に過ごしていますし、同居の猫ちゃんもお元気ということであれば、振り返って考えるとウイルス感染の可能性は低い(ゼロとは言えませんが)ということになるかなという印象です。

ところで、ご相談の猫ちゃんを含め、これまでにパルボウィルスのワクチン(猫汎白血球減少症)の予防接種を行ってますでしょうか?もしも同居の猫ちゃんが接種していた場合、ご相談の猫ちゃんが保護当時に仮にウイルスを持ち込んでいたとしてもワクチンで守られていたと考えられます。そして、その場合今後も伝染の恐れはないでしょう。
どの子もこれまでワクチン未接種の場合、はじめから持ち込んでいた可能性自体が上記の通り低いかもしれません。

これまでを総括すると、もしも丁寧に運動失調について獣医師が調べるとしたら、

身体検査をして運動失調の原因箇所を絞り込む(脳か末端の手足だけの問題か)

血液検査で内臓全般の異常がないか、神経系に異常をきたすと考えられるウィルスの感染の有無を広く調べる

以上の情報を持った上で、脳そのものの画像情報を見るのであればMRIを撮る


という流れになります。
どこまで調べるかは飼い主さまのお考えに沿ってご相談になりますので、どれをお選びになってもよろしいかと思います。
ただ、はじめにおっしゃっていたような、生まれつきからある運動失調の症状をなくすような治療、というものですと残念ながら難しいかもしれない…となってしまうかもしれません。

なかなか診察室だとゆっくりお話することができず、我々も心苦しく思っているところもあります。
今回お話からだけではありますがひとつの意見を述べさせていただきましたが、今後かかりつけの先生ともお話するときのご一助になれば幸いです。
どうぞお大事にしてくださいね。
相談者40歳/女性
ご丁寧にありがとうございます。
相談出来て良かったです。