- 相談者32歳/女性
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父親(66)の食道癌に関してご相談です。
5月の人間ドックで食道がんが見つかり、6月に内視鏡手術で切除、ステージはT1A-MMでした。そして、術後の診断に昨日行ったところ、病理検査の結果INFがcのため、癌が転移しやすく危険なので、食道全摘出、胃の上部の摘出をすすめられました。
大きな判断なのでこれから、セカンドオピニオンは得る予定なのでさが、このキーポイントになるINFについて質問です。
ネット検索などをしますと、INFが浸潤増殖様式であること、タイプにa.b.cがあることは分かりました。また、過去にはα、β、γで分類されていたこともわかりましたが、それ以上のことはよく分かりません。
INFというものは何を示すのでしょうか。また、このタイプにより、どういったリスクが高まるのでしょうか?
以下のようなページを見ましたが、少し心許ない状況ですので質問させて頂きました。
http://www1.c3-net.ne.jp/kecchougan/byouri.html
http://m.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/q1265738012
もし、公的な論文やウェブページで参考になるものがあれば併せて教えて頂ければ幸いです。
- 医師からの回答
- 大変申し訳ありませんが、少々専門的な質問ですので解答までお時間を頂きたく存じます。
- 医師からの回答
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返信が遅くなったことをお詫び申し上げます。
まず最初に私はがんの専門家ですが、食道がんの専門家ではないことをお断りしておきます。
まず、IFNとは組織学的浸潤増殖様式infiltrative growth patternの事です。
参考論文に病理写真が出ていますが、INFcは浸潤が強く、すなわちより食道の外側に広がりやすい組織型です。
INFcの場合再発リスクが高い事が知られています。
ここから本題です。
食道がんの治療はStage0であれば、ESDなどの内視鏡治療が標準ですが、
Stage1では手術±αが標準です(がん情報サービス参照)
stageの詳細については近畿大学のHpを見てください。
T1の患者さんの場合、N0かN1以上かでstageが変わります。
Nはリンパ節転移(nodeのN)の段階です。
画像検査でリンパ節転移が明らかな場合、Stage1以上が確定しますが、
画像検査でリンパ節転移が明らかでない場合、リンパ節転移の有無は手術をしてリンパ節を採取しなければ正確には分かりません。
したがって、画像上リンパ節転移が明らかでない患者さんでは局所の進展様式から画像検査で見えないリンパ節転移の可能性を推定しなくてはなりません。
画像上、リンパ節転移がなくても、T1bの場合はすでに微小転移が生じている可能性があるためstage1として扱われます。
一方で、T1aで画像上リンパ節転移がない場合、標準治療は内視鏡になりますが、手術をしないので果たして本当にリンパ節転移がないかは分かりません。
そのため、局所の浸潤形式の違いから予後を解析したところ、INFcの患者さんでは明らかに予後が悪い、すなわちすでに微小転移が起こっている可能性が高い事が過去の研究で明らかになっており、T1aであってもINFcの方の場合は手術治療をお勧めするという説明だと思われます。
食道がんは極めて予後不良な病気ですが、治療、特に食道全摘の手術リスクや術後の生活の質(QOL)の低下は相当なものがあります。
根治の可能性を高めるためより体に負担となる治療を選ぶか、再発リスクは上がるがより負担の少ない治療を選ぶか、最終的には患者さん自身の判断になると思います。
正解は個人個人だと思いますので、各先生方のご意見を十分に参考になさってください。
参考になるサイトについては以下の通りです。
・がん情報サービス:
http://ganjoho.jp/public/cancer/esophagus/treatment_option.html
・近畿大学医学部 外科教室のHp
http://www.kindai-geka.jp/general/esophagus/prgrsn_espgl%20_cncr.html
・参考論文(フリーで参照できるます)
http://link.springer.com/article/10.1007/s00535-012-0587-y/fulltext.html
- 相談者32歳/女性
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迅速な解答をありがとうございます。
まさか、ここまで早くお返事を頂けるとは思っていませんでした。参考論文まで教えて頂き、今後を考える上で非常に参考になります。
また、別途質問させていただく機会もあるかと思いますが、まずは取り急ぎお礼まで