肝性脳症の症状

肝性脳症の初期症状は、睡眠リズムの逆転や多幸気分・抑うつなどがあります。周囲への気遣いがなくなり、だらしなくなるなど人格・行動の変化も見られます。徐々に計算や字を書くといった日常的行為に困難が生じるようになり、異常行動も多くなります。腕を伸ばしたまま静止することができず、バタバタと羽ばたくような特徴的な動き(羽ばたき振戦)も見られます。
症状が進むと眠気が強くなりますが、時に興奮状態になり癇癪を起こして暴れます。最終的には完全に意識を失い、痛みにも反応しない昏睡状態に陥ります。
治療を受け原因を取り除けば治るケースもありますが、急性肝炎などによる重度の昏睡では致死率も高いです。

肝性脳症の原因

肝性脳症は、肝臓の機能の低下により毒性物質が体内に蓄積することが主な原因とされています。毒性物質はタンパク質の分解生成物によるものと考えられ、アンモニアやメルカプタン、スカトールなどが挙げられています。また血中アミノ酸の比率に変化が見られることから、アミノ酸のバランスの崩れを原因とする説もあります。
肝硬変など慢性の肝臓病の患者が大量にアルコールを摂取するなど、さらに肝臓に負担をかけることで発症するケースが一般的ですが、過度のストレスや発熱、便秘や下痢、脱水、消化管出血、高たんぱく食なども要因となります。
また、一部の薬物による影響も指摘されています。

肝性脳症の治療法

便はアンモニアを発生させるので、便秘を防ぐために下剤が利用されます。また、アンモニアを産生する腸内細菌を抑えるための抗生剤や、アミノバランスを整えるための栄養剤などが投与されます。家庭では高蛋白・高脂肪の料理を控え、便秘予防のために食物繊維を十分に取ることが重要です。
急性の感染症や薬物による肝性脳症の場合は、原因を取り除けば治るケースもあります。
初期の症状は認知症と混同されることもあるため、正しい知識を持ち、早めに受診することが重要です。