多発性嚢胞腎の症状

主に成人以降に発症する常染色体優性多発性嚢胞腎ですが、30代から40代までは基本的に無症状で経過してしまいます。そのため、無症状段階での発見は総じて遅れる傾向にあり、外傷後の肉眼的血尿や腹痛・腰背部痛などの初期症状が確認された際に発覚するケースが常となっています。これら急な痛みの原因としては、嚢胞感染や尿路結石などが考えられます。
一方、もう一タイプである常染色体劣性多発性嚢胞腎は、成人以降を発症対象となる前者とは異なり、基本的には新生児に見られる遺伝性腎疾患となっています。確率としては1万人から4万人の内の1人とされており、主に門脈域の拡張と線維化、門脈分岐の低形成といった門脈圧亢進症をきたすとされています。

多発性嚢胞腎の原因

2種類ある多発性嚢胞腎のタイプの内、主に尿細管の太さを調節するPKD遺伝子の異常を原因として発症するのが常染色体優性タイプとなっています。ただし、同じPKD遺伝子の異常であっても、PKD遺伝子には更に尿流を感知するセンサー機能(PKD1)とカルシウムチャネル(PKD2)の2種類に分類され、発症原因はこの2種類の内のどちらかの遺伝子異常となります。また、発症頻度の観点からいえば、後者のPKD2よりも前者のPKD1の方が85%と高い確立で異常をきたしています。
一方、新生児が主に発症する常染色体劣性タイプに関しては、同じ遺伝性腎疾患でも原因が多少異なります。前者がPKD遺伝子の異常が焦点となっているのに対し、後者はPKHD1遺伝子の異常が起因となっているのです。

多発性嚢胞腎の治療法

遺伝性疾患であるため家系的に親から子どもへと遺伝する可能性があります。優性遺伝である常染色体優性多発性嚢胞腎の場合、血縁的に遺伝発症する確立は50%と推定されています。ただし、あくまでも遺伝性疾患であるため家系内での発症者がいない場合でも、新たな突然変異が発生する可能性も十分にあります。
また、劣性遺伝である常染色体劣性多発性嚢胞腎の場合は、家系・血縁関係なく遺伝子の異常が発生します。
しかし、優性・劣性問わず遺伝子疾患を原因とする多発性嚢胞腎の明確な予防法は確立されていません。
また根本的な治療法も存在しないため、両者共に発症後の対症療法が基本となっています。
内服薬で、腎蔵の嚢胞が大きくなることを防ぎ、腎蔵の働きが悪くならないようにする効果を得られるものもありますが、この効果は、多発性嚢胞腎の患者さん全ての方に出るものではないという事が分かっています。