網膜色素変性症の症状

網膜色素変性症の多くは、段階的に次のような症状を発現します。
・夜盲…網膜の視細胞の多数を占め暗所で働く杆体細胞が先に変性するため、初発症状として現れます。
・視野狭窄…足下が見づらい、人混みでよく接触するといった日常生活の異変で気づきます。
・羞明…明るい場所でまぶしいと感じる症状です。
・視力低下…病変が網膜の中心に及ぶにつれ視野狭窄が進み視力が低下します。
・失明…黄斑部に集中する錐体細胞に病変が及ぶと光を失いますが、高齢期まで視力を保つ例もあります。
  
網膜の退行変性は長い期間をかけて起こるため、病状の進行も極めて緩やかです。合併症として、若年のうちから白内障を発症する場合があります。

網膜色素変性症の原因

網膜色素変性症は遺伝性疾患とされています。遺伝形式が、常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X染色体連鎖性遺伝の3種類に分類され、形式ごとに症状や進行速度等が異なります。常染色体劣性遺伝の場合は血族結婚により出現頻度が増加し、X染色体連鎖性遺伝の場合は発症が早く重症化すると分かっています。
 
遺伝性が確認できず突然発症したように思われる孤発例もありますが、何らかの形で遺伝が関与していると考えられています。いまだ根本的な治療法はなく、iPS細胞を用いた網膜再生治療や遺伝子治療、人工網膜などの研究が進められています。

網膜色素変性症の治療法

網膜色素変性症は遺伝性の疾患であり、現状では予防法も治療法も確立していません。暗順応改善薬やビタミンAなどの投与が退行を遅らせるとして処方されていますが、効果が明確になったわけではありません。
  
しかし、再生医療の登場により、網膜色素変性症も治療の可能性が高まったとして研究が進んでいます。残存視力を活用するため、遮光眼鏡や弱視眼鏡、文字を読みやすくする拡大読書器などの補助具の開発や、低視力でも快適に生活するための種々の整備も実施されています。