びまん性軸索損傷とは
びまん性軸索損傷とは脳にある軸索という神経細胞の一部が広範囲に渡って損傷した状態のことを言います。6時間以上の意識消失を起こすのが特徴で、主に転倒や自動車事故が原因で生じます。また、近年騒がれている乳児の揺さぶられっ子症候群も、このびまん性軸索損傷の一因とされています。脳組織の挫滅、血腫がない場合にも付けられる病名です。
びまん性軸索損傷の症状
びまん性軸索損傷では、外傷の直後から意識状態が悪くなるのが特徴です。また退院後には、記憶障害、人格変化、攻撃的な性格、集中力や判断力の低下、自発性の低下などが見られることがあります。このため今までの人間関係の維持や社会復帰、他人とのコミュニケーションなどが難しくなり、本人に限らずその家族も問題を抱えることがあります。
肉眼でその変化を確認できることはありませんが、CTスキャンをすると小さな点状出血を確認することがあります。MRIスキャンでは拡散強調画像という撮影法が診断に有用です。重症化すると脳幹という生命維持中枢が直接ダメージを受け、呼吸が困難になったり、急死する可能性もあるため注意が必要です。
びまん性軸索損傷の原因
びまん性軸索損傷の原因は、交通事故や転倒などの外傷が一般的です。特にねじれるような力が脳に伝わることにより発症しやすく、脳神経細胞がの変形や断裂が起こり損傷を受けると考えられています。そのため頭部に直接打撲がない場合でも脳が強く揺れることによって生じることがあります。びまん性軸索損傷が生じると脳細胞の壊死が起こります。そのために脳が腫れ、頭蓋内の圧力が高まります。それが高まると脳への血流が滞るようになり、損傷が悪化するとされています。
CTスキャンなどによって点状の出血が認められる場合もありますが、開頭術でその血腫の除去は不可能であり、重症化すると植物状態になります。
びまん性軸索損傷の治療法
びまん性軸索損傷の治療方法においては、今現在効果的な治療法は確立されていません。そのため、脳挫傷や血腫など合併症のある場合に対症療法を施すことになります。合併症にならないように全身状態を保ち、呼吸の安定化、高体温防止、脳への血液や酸素供給などに留意しながら脳の回復を待ちます。受傷してから24時間以内に意識回復が認められず、脳幹障害が認められる場合、その死亡率は約60%とされていて、例え命が助かったとしても意識障害や知能、記憶などの後遺症が残る場合があります。しかし、個人差は大きいですが若い人においては、損傷を受けていない箇所の神経細胞とシナプスが形成され、回復が期待できる場合もあります。
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