トラコーマの症状

トラコーマの病原体は結膜上皮細胞に寄生し、感染から1?2週間程度の潜伏期間を経て急性結膜炎と類似の症状が出現します。初期には、眼瞼結膜に乳頭や濾胞などを形成するため、まぶたの腫れ、結膜の充血・むくみ、眼脂等の症状が現れます。

慢性期には結膜から角膜に血管新生が起こり、その周囲が白濁するトラコーマパンヌスの状態が続きます。適切な治療がなされなかった場合や感染を繰り返した場合、結膜に形成された瘢痕組織が引き攣れて睫毛乱生が生じ、その刺激によって角膜にも瘢痕ができます。重症化して角膜潰瘍になると他の感染症にもかかりやすく、角膜混濁まで進行した場合は視野減少や失明に至る恐れがあります。

トラコーマの原因

トラコーマは、眼の分泌物中にある病原体から感染します。衛生状態の良い先進国ではあまり見られませんが、アフリカや中南米、中東の農村などに特に多く、過密状態での生活、水資源の不足、衛生施設未整備などが危険因子とされています。流行地では、接触感染のほか、眼や鼻の分泌物にたかるハエも媒介となり伝播しています。

また、先進国でも妊娠中の母体が性器クラミジア感染症に罹患している場合、分娩時に新生児が感染することがあります。トラコーマは、失明の原因となる疾患の1つなので、WHOによって「GET2020(世界トラコーマ排除計画)」などが進められています。

トラコーマの治療法

トラコーマは、眼の分泌物中の病原体が人の手などを介することで起こります。手洗いを励行して清潔を心がけ、眼の分泌物が付着している恐れのあるタオルやハンカチ、枕などを人と共有しないことが大事です。

流行地においてはハエも媒介となって病原体が運搬されます。ハエを駆除するとともに、手や顔を清潔にしておくことが予防に?がります。母体から子どもへの産道感染については、母親は出産前に性器クラミジア感染症の検査、治療を行い、新生児には抗生剤を点眼することで予防できます。