大血管転位症とは
大血管転位症は先天的な心疾患です。 通常左右の心房・心室をつなげる血管は、右心室から肺動脈が、左心室から大動脈が出ています。しかし大血管転位症の患者では、それぞれの血管が通常とは逆の心室から起始して大血管の位置関係が転位しています。全ての心疾患患者のうち4〜8%を占めると言われており、患者の男女比は男子の方が多いようです。
大血管転位症の症状
大血管転位症の症状のうち最も代表的なものは、新生児期のチアノーゼです。このチアノーゼは酸素を吸入しても改善が見られないという点に特徴があります。チアノーゼの他に、胸部レントゲン時の心拡大が認められる場合があり、たいていはこれらの症状が見られることが大血管転位症の発見につながっています。また、肺に流れ込む血液の量が増加したときに見られる、多呼吸や努力呼吸などの症状が出現する場合もあります。
さらに、本来全身に血液を送る役割を担わないはずの右心房によって全身に血液を送るための強い働きが行われる状態が続くため、長期に渡る負荷が右心房にかかることになります。そのために大血管転位症の患者にはしばしば三尖弁の逆流や心不全が見られる場合もあります。
大血管転位症の原因
大血管転位症の原因は現代医学でははっきりと明らかにされてはいません。今のところは胎児期に心臓が形成される際に、動脈幹を大動脈と肺動脈に分けるための壁が正常に形成されなかったことが要因とする説や、心臓を形作るうえで右に折れ曲がるべき管が左に折れ曲がってしまったためとする説が有力です。しかし、普遍的な原因として定義されてるものは未だにありません。同じくチアノーゼを代表的な症状とするファロー四徴症という心疾患は、染色体異常に合併して誘発されるということが明らかにされていますが、大血管転位症の場合は染色体異常は見られないことが多いです。原因は不明ですが、母体に糖尿病を罹患している場合に、発生リスクが上がると言われています。
この病気は発生頻度が全心疾患のうち4~8%と非常に低く、患者の例がまれであるため原因の研究における症例が少ないことが問題となっています。
大血管転位症の治療法
大血管転位症は原因がはっきりしていない疾患であるため、病気そのものの発生を予防することはできません。この疾患は治療を何も行わないと半年以内に9割の患者が死亡すると言われており、長期生存のためには初期段階での専門的な治療を施すことが不可欠とされています。そのため、チアノーゼなどの症状が現れた場合は、ためらうことなくただちに医療機関を受診する必要があります。その点では早期発見、早期治療がこの病気に対する最大限の対策と言うことができます。
大血管転位症の完全な治療のためには、生後2週間以内に心房内血流転換術を行うことが求められるので、そのためにも早期の発見、心臓外科医による早期治療が何よりも大切だと言えるでしょう。
- このコンテンツは、病気や症状に関する知識を得るためのものであり、特定の治療法、専門家の見解を推奨したり、商品や成分の効果・効能を保証するものではありません
- 専門家の皆様へ:病気や症状の説明について間違いや誤解を招く表現がございましたら、こちらよりご連絡ください