下垂体前葉機能低下症とは
視床下部・下垂体には、摂食中枢、体温中枢、渇中枢などが存在し、腫瘍などにより局所症状、摂食異常(肥満、痩せ)、体温異常、高ナトリウム血症、低ナトリウム血症や精神神経症状のほかに、下垂体機能低下症に伴なう症候をきたします。下垂体前葉機能低下症は、前葉ホルモンの分泌が低下した状態をいいます。全ての前葉ホルモンが減少・欠落した場合を汎下垂体機能低下症、複数のホルモンが欠落した場合を部分下垂体機能低下症、単一のホルモンが欠落した場合を単独欠損症と呼びます。
下垂体前葉機能低下症の症状
下垂体前葉機能低下症は、下垂体前葉ホルモンの欠落症状と原因疾患による症状からなります。前葉ホルモンが欠落した場合、以下のような標的内分泌腺から産生分泌されるホルモンが低下し、そのホルモンに関する欠落症状が現れます。
(1)黄体ホルモン、卵胞刺激ホルモン系:無月経、性欲の低下、腋毛、恥毛の脱落、性器萎縮、乳房萎縮、第二次性徴発来遅延。
(2)副腎皮質刺激ホルモン系:易疲労性、低血糖、低血圧、食欲不振。
(3):甲状腺刺激ホルモン系:耐寒性低下、低体温、脱毛、便秘、顔のむくみ、皮膚乾燥、精神機能低下、発育不全、声が低く話し方がゆっくりになる。
(4)成長ホルモン:低血糖、小児において成長率の低下。
(5)プロラクチン:産後の乳汁分泌低下。
下垂体前葉機能低下症の原因
下垂体前葉機能低下症の原因としては、下垂体腺腫、分娩後下垂体壊死(シーハン症候群)、下垂体近傍の腫瘍、炎症などが頻度の高いものとして挙げられます。分娩後下垂体壊死は、分娩時の大量出血により下垂体の働きが悪くなる事で引き起こされます。炎症性疾患としては、結核などにより起こります。放射線治療後の障害として現れる事もあります。
また、まれに下垂体の発生・形成異常、遺伝子異常によって起こる事も示されています。近年、リンパ球性下垂体炎など自己免疫異常を機序とする疾患などが注目されています。
下垂体前葉機能低下症の治療法
下垂体前葉機能低下症の予防・治療としては、原因に関連したものを行う必要があります。下垂体に腫瘍が認められた場合には、手術適応があると判断された場合には手術を行います。術前、術後の副腎皮質ホルモン(コルチゾール)と甲状腺ホルモンの欠落がある場合には、ホルモン補充が必須となります。
全てのホルモンが欠落している場合には、コルチゾールを最初に補う事がもっとも重要となり、次に甲状腺ホルモンを補います。性腺機能低下症がある場合には、年齢によっても異なりますが女性ではカウフマン療法を行い、男性ではテストステロンを補います。副腎皮質ホルモンと甲状腺ホルモンの補充は、障害にわたって必要で、必ず主治医の指導に従い使用を継続する必要があります。
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