福山型先天性筋ジストロフィーとは
福山型先天性筋ジストロフィーとは、乳児期の早期から遺伝性による進行性の筋力低下が認められる先天性筋ジストロフィーのうちの一つの疾患です。福山型先天性筋ジストロフィーは、日本人特有の常染色体劣性の遺伝性筋疾患で日本での小児の筋ジストロフィーのなかでは2番目に多く、日本人の約90人に1人が保因者であり発生率は出生26000人に1人で発生するとされています。
福山型先天性筋ジストロフィーの症状
福山型先天性筋ジストロフィーは、新生児時から筋力や筋緊張の低下が認められる場合、哺乳力や泣き声が小さいことで気付かれることがあります。乳児期早期から認められる場合は、首のすわりや寝返り、お座りの成長速度が遅いなどで気付きます。また、顔面の筋力低下として表情が乏しく口をぽかんと開けている特徴があります。多くの場合、8歳頃までには運動発達があり床に座った姿勢で移動したりや四つ這いでの移動ができるようになり、稀に歩行も可能となる場合もあります。しかし、8歳以降は筋力低下が徐々に進行していきます。進行とともに心機能障害や呼吸障害、摂食嚥下障害が現れます。
福山型先天性筋ジストロフィーでは、中枢神経症状の中等度から高度の精神遅滞が全例で認められ、目の異常も併発して起こることがあります。また、患者の約半数でけいれんが現れます。
進行は個人差がありますが、20歳を超えて生存している人は少数です。
福山型先天性筋ジストロフィーの原因
福山型先天性筋ジストロフィーの原因である遺伝子は、2000~3000年前にあたる日本人の祖先が突然変異を起こし、それが日本人全体に広がったと考えられています。福山型先天性筋ジストロフィーの患者にはフクチン蛋白が欠けており、フクチン蛋白が作られないことにより病気が発生します。フクチン蛋白の形成異常の遺伝子は第9番目の染色体の長腕の真ん中あたり(9q31)にある遺伝子座によるもので、このフクチン遺伝子によって発症することが分かっています。
常染色体上に存在する1対の遺伝子両方に異常がなければ発症しない常染色体劣性遺伝であるために、片方の親が保因者の場合は発症せず双方から異常のある遺伝子を受け継いだ場合に発症します。
福山型先天性筋ジストロフィーの治療法
福山型先天性筋ジストロフィーの効果的な治療法は現在のところありません。病気の症状によって適切に対処する対症療法が主になります。筋力の低下による症状ではリハビリテーションによって運動能力を維持して進行を防ぐ予防や関節の拘縮を防止することができます。呼吸障害では鼻マスク式人工呼吸器などを使用して、心機能障害では薬での治療を行い、けいれんでは抗けいれん薬を内服してけいれんを抑えます。摂食嚥下障害では消化管内にチューブを用いて流動食を投与するなどの適切な治療を行います。
研究グループが1998年にこの病気の原因であるフクチン遺伝子を発見してからも、様々な研究が行われており効果的な治療法が期待されています。
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