発疹チフスとは
発疹チフスは、リケッチアによる感染症のことをいいます。シラミの媒介で人に感染し、人口密集地域、不衛生な地域で多く見られます。一般的にはアフリカ諸国、ヨーロッパの東部と中部、アジアの寒冷山岳地帯で多く発症し、日本では1957年以降の感染例はありません。
発疹チフスの症状
リケッチアの潜伏期間は6~15日で、12日程度で発疹チフスを発症します。頭痛、悪寒、脱力感、嘔吐、手足の疼痛を伴い突然発熱し、体温は急激に上昇します。激しい頭痛や意識障害が起こり、重症化すると昏睡状態になることもあるため注意が必要です。発熱後2~5日で体幹に発疹が見られ、その後全身に広がりますが、顔に発疹が見られることはありません。
初期は淡紅色で指圧により消退しますが、数日後には暗紫色の点状出血斑となり指圧により消退しなくなります。発熱からおよそ2週間で急速に解熱します。通常、一度感染すると長期間の免疫ができますが、まれに潜伏感染の状態となり数年後に再発することも少なくありません。
発疹チフスの原因
発疹チフスの病原体はリケッチア(微生物)で、シラミの媒介により人に感染しますが、リケッチアの自然宿主は人です。シラミが感染者を吸血するとシラミの腸管内でリケッチアが増殖し糞便中に排泄します。シラミは吸血時に排便するため、人は刺し口や引っかき傷などから糞便やつぶしたシラミが擦り込まれ感染します。シラミは感染後2週間程で死亡しますが、リケッチアは死亡後の体内で数週間残ります。糞便内のリケッチアは60℃の蒸気20秒で死滅しますが、室温で2週間以上、まれに300日間も感染力が残ることがあるため注意しなければなりません。
発疹チフスの治療法
発疹チフスは人から人への感染が見られないため、一番の予防はシラミ駆除になります。衣類や寝具を清潔にするのはもちろん、加熱消毒などを行いシラミの発生を防ぐことが大切です。また、ワクチン摂取も効果的ですが、発症者がいなくなったため日本国内をはじめ多くの地域でワクチンの入手が不可能となっています。発症した際は抗生物質などで治療がおこなわれます。
シラミに寄生されてしまった場合は、マラチオンやリンデンを散布することにより駆除します。日本国内では近年発症が確認されていませんが、路上生活者でシラミの発生が報告されているため注意した方がいいと考えられます。
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