熊本をはじめとする九州地方で大きな地震が起こりました。はじめに大きな地震が起きてからまもなく1週間、避難されている方の健康状況がニュースで取り上げられています。

そのなかのひとつ「エコノミークラス症候群」は命を落としてしまう危険のある病気ですが、少し気をつければ予防することができるといいます。医師にエコノミークラス症候群について詳しく聞いてみましょう。

Q.エコノミークラス症候群とは、そもそもどのようなことでしょうか。

エコノミークラス症候群とは、「静脈血栓塞栓症」とも呼ばれます。

同じ姿勢で長い間座っていたり同じ姿勢をとり続けたとき、主に下肢の静脈に血の塊である血栓(けっせん)ができます。長時間同じ姿勢でいた状態から立ちあがる、歩き出すなど身体を動かしたときに、血栓も血の流れに乗って動きます。その血栓が詰まってしまうことで症状は起こります。

血栓や血塊によって肺の血管に詰まることもあります。これを肺動脈血栓塞栓症といいます。その場合、呼吸困難を起こす、心肺停止に至ることがあります。

もともとは飛行機に乗って、長いフライトを狭い座席で動かずに過ごした時に起こりやすいものとして知られていますが、ニュース等で言及されているように、被災した際に車中泊をしたり、避難所で姿勢を変えずに長時間過ごすことで、いつでも起きる可能性があります。

Q.症状はどのようなものでしょうか。

下肢が腫れあがる症状が起こります。血流が止まった部分によって腫れあがる場所は変わりますが、足やひざなどに腫れ、むくみが起こります。

<脚に血栓が詰まった場合の症状>
・むくみ
・筋肉痛のような痛みを発生

座席に座った姿勢を長時間続けた場合には、特に膝の裏あたりの痛みや腫れが起こりやすい特徴があります。特に片方だけの脚の痛みやしびれ、腫れは要注意です。


また、血栓が肺に流れて詰まる肺動脈血栓塞栓症となった場合、息苦しさや呼吸困難などが起こります。

<肺に血栓が詰まった場合の症状>
・軽度:咳や血痰、胸痛、呼吸の息苦しさ
・重度:意識を失う


その他、脳に血栓がつまる場合もあります。

<脳に血栓が詰まった場合の症状>
・手足に力が入らない
・ろれつが回らない
・言葉が出ない
・顔がむくむ
・最悪のケースでは意識を失う
※他の部位に比べて稀ではありますが、上記のように脳梗塞のような重篤な症状を伴います。

Q.もしエコノミークラス症候群になってしまった場合、どうしたらいいでしょうか。

もし、エコノミークラス症候群の症状を感じたら、すぐに病院を受診しましょう。夜間や休日でも、救急外来をまずは受診することが大切です。

比較的軽症である場合は、血栓を作りにくくする薬を飲む治療方法をとります。血栓の範囲によっては、血栓を溶かすはたらきをする薬を処方する場合もあります。

症状が重い場合には、詰まっている部位の近くまでカテーテルを入れて薬を直接注入する、場合によっては手術をして血栓を摘出するなどの治療がおこなわれます。

Q.エコノミークラス症候群かも、と思ったらどんな対処をしたらいいですか。

片足の腫れやしびれ、違和感などを感じたら、真っ先に医療機関を受診することが大切です。残念ながら、エコノミークラス症候群になってしまうと、自身で対処することはできません。

ですから、まずは予防が大切です。「足がむくんでいる気がするな…」と感じた時点でむくみを解消するようにしましょう。

Q.エコノミークラス症候群を予防するためにできることはあるでしょうか。

エコノミークラス症候群を予防するため、以下の2点を心がけましょう。

・水分を十分に補給すること
・適度に身体を動かしておくこと


飛行機や新幹線などの長距離移動中は、少なくとも2~3時間に一回は通路を歩いたり、座席から立ち上がって姿勢を変え、血液を循環させるようにすることが大切です。座席でのストレッチなども有効ですね。

なお、飲酒やタイトな服はエコノミークラス症候群の可能性を高めてしまいますので、できる限り避けてください。

車の中などでも同様で、十分に水分を補給すること、狭い中でもできるだけ身体を動かすようにすることが大切です。足を組みかえる、足の指を動かす、足を上下に動かすストレッチや屈伸などを取り入れるようにしましょう。

最後に医師からアドバイス

エコノミークラス症候群は、誰でもなる可能性があります。特に、お年寄りや生活習慣病をお持ちの方、肥満の方は注意が必要です。

災害などの場合、恐怖や混乱などでなかなか水分補給や運動がままならない場合もあると思います。とはいえ、エコノミークラス症候群は予防できるものです。まずはお互いに声を掛け合って予防するように心がけるといいですね。

(監修:Doctors Me 医師)