ろれつが回らなくなるとはどのような状態?

脳の模型
話をするときは、脳から命令を出し、それを伝える神経を通り、筋肉のある顔の筋肉や舌を動かして、言葉を発します。

これら脳・神経・筋肉のどこかに異常があると思い通りに話せなくなりますが、この状態をろれつが回らないといいます。

原因1:病気

脳・神経の病気


脳の構造
■ 脳血管疾患(脳梗塞や脳出血)
大脳や小脳や脊髄が犯されると、ある日突然、症状が起きます。

一過性能虚血(TIA)は本格的な脳梗塞の前触れです。
ろれつが回らなくなる症状は数分~数時間(24時間以内)で症状が改善しますが、ここで放置していると、本格的な脳梗塞になることもあり、非常に危険です。放置せずに受診をするべきでしょう。

■ 脳腫瘍
同様の症状が起きますが、これは突然と言うよりも、徐々に悪化することが多いです。

■ パーキンソン病やアルツハイマー病
脳や神経が犯されるためです。

■ 認知症
脳が犯されるためです。

■ 筋萎縮性側策硬化症(ALS)や多発性硬化症
神経が犯され、舌や筋肉が萎縮するためです。

■ 脊髄小脳変性症
筋肉を管理する小脳がおかしくなる場合です。

■ ウェルニッケ脳症
偏った食事や多飲などにより栄養失調になり、ビタミンB1不足で発症する重篤な脳障害になります。

筋肉の病気


筋肉の構造
■ 筋ジストロフィー
重症筋無力症など筋肉が犯される病気になります。

■ ジストニア
自分の意志とは無関係に筋肉が動いてしまう病気です。(生まれつきのものと薬の副作用によるもの)

■ 加齢
筋肉の衰えにより症状が現れます。

舌や口腔・咽喉頭の病気


口腔内
舌がん、咽喉、唇などにがんや腫瘍ができる場合です。

精神的な病気


ストレスが溜まっている女性
■ ストレス性障害、不安障害、精神的緊張状態過労
過剰なストレスは自律神経の異常を引き起こし、交感神経が過剰になり、舌や口のまわりの筋肉に力が入りすぎるためです。

原因2:病気以外

酔っ払いの男性

お酒


一時的に酔っぱらってろれつがまわらなくなることはしばしばありますが、慢性的に大量に飲んでいる人はビタミンB1不足になっていることが多いためです。

疲労やストレス


一時的に緊張しているときや焦っているとき、脳で冷静な命令が出せない、交感神経が過剰で筋肉が過緊張してしまうために起こります。

脱水や唾液不足


口の中が乾燥して舌がうまく動きにくいことがあります。

極度の寒冷


寒さでも交感神経が過剰になり、また、筋肉が過緊張するために起こります。


向精神薬・抗うつ薬・睡眠導入剤・てんかんの薬や抗がん剤でもジストニアが起きることがあるためです。

治療法

脳のMRI

検査内容


突然発症した場合、脳のCTや脳MRI、脳の血管を見る検査などで、脳の病変や血管の狭窄がないかを診ます。

治療内容


■ 血栓の治療
発症から4.5時間以内の脳梗塞の場合、血栓(血の塊)を溶かす点滴治療(t-PA、ウロキナーゼ)をすることがあります。

また、それ以上経過していても新たに血栓が作られるのを予防する薬(ヘパリン、アルガトロバン)など点滴投与をすることがあります。

症状と発症からの時間によります。

■ 脳の治療
脳障害の程度により、脳の腫れを抑える薬(グリセオール、マンニトール)や脳を保護する薬(エダラボン)などを投与することがあります。

処方される薬


退院してからも血栓をできにくくするため、アスピリンなどを飲んでもらうことがあります。

対処法

応急処置で電話連絡
突然に症状が出る場合のほとんどが脳血管疾患です。

同時に吐き気、麻痺、ふらつくなどの症状があることも多く、脳の障害の部位や大きさ、発症から治療までの時間がその後の後遺症の程度をかなり左右します。

応急処置


1. 暑くない場所に寝かせる(立つと脳血流が低下する)
2. 衣服を緩め、メガネや入れ歯などははずす
3. 横向きになって吐いたものが喉に詰まらないようにする
4. 車を呼びとにかく早急に受診する

治療開始までに3時間以上経過すると後遺症が残りやすくなります。

医療機関について手続きや説明などに1時間はかかりますから発症して2時間以内に病院に到着することが必須です。

予防法

深呼吸
ストレスや過労など、交感神経の過剰状態で起きている場合は、休息をとることが最善の治療法です。薬剤よりもしっかりと睡眠をとり、趣味やくつろげる状態を作りましょう。

また、ゆっくりと深呼吸をすることで脳への酸素を増やし、くつろぐ効果もあります。安らぐ音楽鑑賞、瞑想やヨガなども交感神経の興奮を抑える作用があるので、試みると良いでしょう。

最後に医師から一言


酔っぱらって、あるいは人前で話すために緊張して、あるいはのどが渇いてろれつが回らなくなった経験は誰にでもあると思います。

多くが問題なく回復しますが、時には本格的な脳梗塞の前触れとしての症状のときもあります。

はっきりした原因がわからないときは、速やかに受診してくださいね。

プロフィール

監修:医師 松本 明子
1968年生まれ、鳥取大学医学部卒業。広島の病院で内科勤務した後、2009年~海外転出し、アメリカで予防医学を学ぶ。 2013年~「DNA Diet and Lifestyle遺伝子に沿った食事と生活」という、オンライン健康プログラムにより自然治癒力を最大限に引き延ばす、老化と病気の予防と治療のための健康指導を行っている。