自分の考えていることが、他人に伝わっているかもしれない…と感じる場合は「思考伝播」という症状かもしれません。
統合失調症などの病気が原因にもなるそうなので、異変に気付いたら早期に治療が必要だそうです。
今回は、思考伝播の原因、特徴、治療法について、医師の井上先生に分かりやすく教えていただきました。
思考伝播とは
思考伝播は、他人に自分の考えが勝手に伝わっていってしまうと感じる体験の事をいいます。もちろん正常な体験ではなく、病的な体験です。
この思考伝播は、自分の考えであるにもかかわらず、「自分が考えるのではなく,他人によって考えさせられている」という感覚を体験をする作為思考(させられ体験)の一種と考えられています。
思考伝播の原因
思考伝播は比較的、統合失調症に特異的な症状になります。そのため、統合失調症スペクトラム障害と呼ばれるカテゴリーに入る妄想性障害、短期精神病性障害、統合失調感情障害などでも起こりうる症状です。
その他に、アルコールや覚せい剤などの違法薬物の影響で、同様の症状が現れることもあります。
思考伝播の人の特徴
・頭の中だけで考えた事が、他人にも知られていると感じる
・考えた事が直接相手に伝わっているように感じる
・自分の考えが世界に知れ渡っていると感じる
思考伝播と似ている「思考察知」や「思考奪取」との違い
思考察知
自分の考えが他人に見抜かれてしまうと感じる体験です。自分の中の固有なモノが外に知られて自分から離れていると感じて、被害感を伴いやすいのが特徴的です。
思考奪取
自分の考えが抜き取られる、奪い取られると感じる体験です。これも統合失調症に特異的な病的な体験のひとつです。説明がつかない思考の脈絡の断絶などは、この現象に関係していることが多いです。
思考伝播の治療法
検査内容
特化した検査はありません。ただし、統合失調症などの疾患を疑う時は、今までの症状やエピソードの問診だけではなく、知能検査や人格検査などを行います。知能検査や人格検査にもたくさんの種類が存在しており、各々の特性を考慮しながら、必要に応じて行うべき検査を選択します。
治療内容
思考伝播の症状を訴えられる時の治療内容は、統合失調症に対しての治療を行うのが一般的です。そのため第一選択は薬物療法になります。
その他には、精神療法や作業療法などの精神科リハビリテーションなどもありますが、薬物療法にとって代わるものではなく、薬物療法を続けながら行うものとなります。
薬
使用する薬は抗精神病薬と言われるカテゴリーから使用します。もちろん内服薬が一般的ですが、どうしてもお薬を飲み忘れたりして継続できない方は、外来の受診に合わせて1回の筋肉注射、または皮下注射で2~4週間の薬効が期待できるデポ製剤が有用です。
思考伝播の改善方法
統合失調症などの疾患としての症状で起こることが多いので、なかなか自力だけで解決することは困難です。しかし、自宅で昼夜逆転しないなどの生活リズムを整えることは大切です。
最後に井上先生から一言
思考伝播がある時は精神的にも非常に不安になっている時だと思います。もしかしたら、思考伝播以外の症状も認めており、辛い時期なのかもしれません。
思考伝播は統合失調症の1つの症状であることも多く、なかなか自力で解決することが困難です。このような症状を認めた時は、早期に医療機関に相談して治療を開始していきましょう。
プロフィール
- 監修:医師 井上 智介
- 島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。