お化け屋敷など暗い所が苦手、あるいは夜に電気を消して寝れない、という人はいませんか?
暗闇が得意な人の方が少ないとは思いますが、動悸や発作など日常生活に支障をきたす症状が出た場合は「暗所恐怖症」が疑われます。
今回は、暗所恐怖症の原因・症状・克服法を、医師の井上先生に分かりやすく解説していただきました。
暗所恐怖症とは
暗所恐怖症とは、高所恐怖症などの恐怖症のカテゴリーに含まれる疾患になります。
暗い所は誰でも明るい場所よりも不安が強くなったりしますが、暗所恐怖症では、暗所を異常な程に怖がり、電気の付いていない寝室に入れないなど日常生活にも影響がでる疾患のことをいいます。
暗所恐怖症の原因
暗所恐怖症は、1つの原因で起こるものではありません。
遺伝的
生まれつき他人よりも不安が強い人がいます。
体調不良
疲れが蓄積している時や風邪をひいているなど、体調を崩している時は起こりやすいです。
緊張
近日に大きな会議で発表しなければならないなど、緊張感が高まっている時にも発症しやすいです。
暗所恐怖症の症状
暗所に入ると、人一倍に不安が襲ってきて、冷静を保てなくなります。その結果、大量の汗をかいたり震えたり、過呼吸になったり、激しい動悸など体の反応もみられます。酷い方であれば、そのまま気を失うような方もいます。
その他に、暗所に入る前から、また発作が起こるのではないかと考えてしまい、暗所以外でも強い不安を抱えて日常生活に大きな影響をもたらすことがあります。
暗所恐怖症の治療方法
暗所恐怖症に特化したチェック項目はありませんが、同時に社会不安障害を合併している方が多いので、その検査を行うことがあります。有名な検査では、LSAS-J(Liebowitz Social Anxiety Scale Japan)や社交不安・対人恐怖評価尺度(SATS)を使用します。気になる方は、自己チェックしてみてください。
薬物療法としては、特効薬はないものの、対症療法的に使用することがあります。例えば、抗不安薬や睡眠薬などを使用することもあります。
暗所恐怖症の克服方法
暗所に慣れる練習をする
根本的には、暗所に徐々に慣れるしかありません。幸い、暗所は段階を踏んで作り出せるので、最初は少し暗い状態で開始して、何分間そこで過ごせたなどの成功体験を積み重ねていってください。ただ、自分で一人で慣れる練習をするのも辛いので、何か発作が出た時の対処のためにも、誰かと一緒に行う方がいいです。
周囲に相談する
信頼できる家族や友達に、暗所で強く不安がでる事を相談してみましょう。病院に通院されている人であっても、一人で悩まれている方も多く、気持ちがふさぎ込み病気に立ち向かう気力が出てこない事も多々あります。
また同じような悩みを抱える方が集まる自助グループがあれば、積極的に参加してみましょう。たくさんの人と自分の症状に関して共有することが大切です。
どうしても寝れない場合は?
例えば暗所に行く前に自分の好きな音楽をかけるなど、できるだけリラックスできる環境を作ることが大切です。またどうしても、寝れない時は睡眠薬を使用することも一つの選択肢なので、医療機関で相談してください。
最後に井上先生から一言
暗所恐怖症に限らず、何かしら恐怖症を持っている方はたくさんいます。自分だけなぜこんな思いをしなければならないのかと、塞ぎこんでしまうことなく、自分の症状を話せる方を見つけて下さい。
それだけで、こころの重荷が取れて軽快する人もいます。そして、日常生活に影響がでるようなレベルならば、必ず医療機関を受診してください。
プロフィール
- 監修:医師 井上 智介
- 島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。