体の色素が十分に作られず、透きとおるような白い肌を持つ「アルビノ」。
あまりよく知られていませんが、海外においてはアルビノが神聖化され畏怖の対象になり、たとえば白い蛇がご神体として扱われることもあるといいます。
また、アフリカではアルビノの体の一部が呪術に使用されたり、縁起物として扱われることがあるため、襲われたり、墓が荒らされるといった恐ろしい事件が起きているようです。
このように特殊な存在として語られるアルビノですが、偏見や差別につながることがないように、医師の解説をもとに理解を深めていきましょう。
目次
皮膚の色素が少なくなるメカニズム
皮膚には表皮と真皮の間にメラノサイトという細胞があります。メラノサイトは紫外線や様々なホルモンに反応してメラニンという黒い色素を作ります。
作られたメラニンは周囲の細胞に取り込まれ、紫外線から細胞を守る帽子のように使われています。
白色人種でも黒色人種でもメラノサイトの細胞数は変わりませんが、メラニンの粒の大きさが違うため、肌の色が違って見えるといわれています。
皮膚の色が薄くなる「色素脱失症」
皮膚の色が異常な状態のうち、色が薄くなる場合を色素脱失症といい、そのメカニズムは大きく分けて3つ考えられます。
・メラノサイトの数が減る
・メラノサイトの数はあるが、メラニンを作る過程に何らかの問題がある
・作ったメラニンを周囲の細胞に配ることができない
尋常性白斑
メラノサイトの数が減ることによって、皮膚の一部の色が薄くなる病気の一つが尋常性白斑です。
生まれつきの病気ではなく、大人や高齢者になってから皮膚の色が白くなってくることもあります。アメリカ人歌手の故マイケル・ジャクソンさんはこちらにあたります。
アルビノ
メラニンを作る過程に問題があることによって、全身の皮膚や髪の毛が生まれつき白い個体をアルビノといいます。
この症状はヒトに限らず動物に広く見られ、例えば眼の赤い白ウサギや、白ネズミはアルビノの個体です。また、アルビノのカラスやスズメがいるとニュースになることもあります。
ヒトの場合、およそ1~2万人に1人程度の割合といわれています。
ヒトのアルビノの症状
アルビノの人は、メラニンを全く作れない場合もあれば、わずかに機能が残っている場合もあり、症状は人それぞれです。
一般的には髪・まつ毛・眉毛が真っ白から黄色で、皮膚は血管の色が透けて見えるためピンク色をしています。
メラニンは眼の虹彩(日本人では茶色、白色人種では青や緑色の部分)や、眼球を包むブドウ膜にも存在しますが、アルビノの人はこういった目の色素もないため、青や灰色の目をしています。
アルビノがある人のハンデ|日光による激しい日焼けと皮膚がんのリスク
日光に含まれる紫外線は皮膚細胞の遺伝子を傷つけ、がんを引き起こします。こうした紫外線から体を守る役目を持っているのがメラニンです。
アルビノの人はメラニンが少ないため、紫外線によるダメージが大きく、日光が当たると激しい日焼けが起こります。
また、皮膚がんが起こりやすいといわれており、 サハラ以南のアフリカにすむ黒色人種のアルビノでは、アルビノでない人と比べて、皮膚がん発生率が約1000倍になるという研究結果もあります。*1
こういった日光が引き起こすアルビノの合併症に対して現在のところ根本的な治療はなく、日光を避けるということしかできません。
アルビノがある人のハンデ|視力の低下や眼の症状
アルビノがある人は、眼が小刻みに震える眼振(がんしん)や、目の位置がずれる斜視にもなりやすく、視力は眼鏡をかけても0.1以下のことが多いとされています。
眼の治療としては、まぶしさを防ぐ眼鏡をかけたり、視力が低い人へのリハビリ訓練を行ったりします。*2
アルビノの人の子どもが必ずアルビノになるわけではない
アルビノの原因は生まれつきの遺伝子の異常で、劣性遺伝という形式で子孫に遺伝します。
この遺伝形式では、アルビノではない両親から生まれた子供がアルビノである、という現象が起こり得ます。
ヒトは両親から1つずつ、合計で2つの遺伝子をもらいますが、染色体劣性遺伝の症状は、もらった遺伝子の両方に異常があった場合のみ発現します。
参考画像:アルビノが遺伝するケース
たとえば、異常がない遺伝子をA、異常がある遺伝子をaとすると、
・父が持つ遺伝子は Aa→ アルビノは発現しない
・母が持つ遺伝子は Aa → アルビノは発現しない
・子供は(父からaを、母からaをもらって)aa→ 両方異常があるためアルビノとなる
ということも起こりえます。
最後に医師から一言
当たり前のことですが、見た目が美しく珍しいアルビノも、同じ人間です。
外見にばかり目を向けるのではなく、紫外線に弱い、視力に問題があるといったハンデや、助けを必要としていることを理解したうえで、共生していくことが大切なのではないでしょうか。
(監修:Doctors Me医師)
参考資料
*1Lekalakala, P. T., Khammissa, R. A., Kramer, B., Ayo-Yusuf, O. A., Lemmer, J., & Feller, L. (2015). Oculocutaneous Albinism and Squamous Cell Carcinoma of the Skin of the Head and Neck in Sub-Saharan Africa. Journal of Skin Cancer, 2015, 1-6.