ゲームにのめりこみ、依存している状態を指す「ゲーム障害」が、2018年からWHO(世界保健機構)が認定する病名として登録されることになりました。

 

ちょっとした時間つぶしのつもりが依存していた…なんてことにならないために、気をつけるべきポイントはどこにあるのでしょうか?

 

今回は精神科の井上先生に、ゲームに依存してしまう心理や、ゲームと適度な付き合いをしていくためのポイントについて解説していただきました。

 

目次

 

ゲーム障害とはどんな病気?

ゲームをやりすぎている男性

 

ゲーム障害とは、ゲームに対する依存症のことです。

 

ゲーム障害はれっきとした病名であり、2018年に改訂される世界保健機構(WHO)の国際疾病分類(ICD-11)に掲載されることが決まっています。

 

スマホなどで、ゲームを「空いた時間についやってしまう」状態から、「仕事中でもゲームが気になってやってしまう」、「四六時中、ゲームの内容が気になって、ゲームの電源をオフにできない」などといった、衝動や渇望をコントロール出来なくなっている状態のことをいいます。

 

 

ゲームをやめられなくなってしまう心理とは? 

ゲームをかなり楽しんでいる女性

 

ゲームに限らず依存に至る前段階では、「気持ちよさ」などの快楽を感じている状態があります。この快楽を継続させるために、量や行動を増やすことによって、依存の状態がエスカレートするのです。

 

とくにオンラインのゲームの場合、希薄な人間関係を保ちながら他の利用者とチャット機能で簡単にコミュニケーションをとることができ、ゲーム内での称賛などで承認欲求や自己肯定感を満たすことができるため、心地いい状態をつくりやすいのです。

 

現実に比べて心地がいい状態となりやすいゲームを安易に求めてしまうのは、ストレス社会が影響している面もあります。

 

 

ゲーム障害が悪化したときの危険性は?

家族よりゲームを優先する男性

短期的な影響

短期的には本人の体や心の健康問題が起きます。例えば、常に苛立ちや焦燥感を感じたり、昼夜逆転・睡眠障害なども起こりえます。

 

さらに、食生活が乱れることもあります。

 

長期的な影響

長期的には家族や社会での関係に影響します。家族や職場でのコミュニケーションが極端に減ってしまい、仕事の能率が下がってミスを犯したり、ゲームのために遅刻や欠勤をするようになることもあります。

 

他にも言葉づかいが攻撃的になったり、家事や育児の放棄をする、といった状況も見られます。

 

 

ゲーム障害かも? と思ったら

カウンセリングを受ける男性

 

ゲーム障害かなと思ったら、精神科の受診になります。ただし、ゲーム依存症やネット依存症を得意とした病院の受診をお勧めします。治療は患者さんと医師だけでなく、家族や臨床心理士なども交えて協力しながら行っていきます。 

 

診察や様々な検査の結果を踏まえて、外来治療や個人カウンセリング、デイケアや入院治療などを提案することになります。どれかひとつの治療法にしぼるのではなく、通院やカウンセリング、ミーティングを繰り返しながら治療を進めることが多いです。

 

薬物治療についてはゲーム障害に特化した薬物がないため、あまり行われません。もちろん、睡眠障害があれば睡眠薬を処方することはあります。

 

 

ゲーム障害にならないゲームとの付き合い方

ゲーム障害の改善 

まずはセルフチェック

まずはゲーム障害になっていないか、自分で疑ってみましょう。

 

ICD-10による「アルコール依存症」の診断基準をアルコールからゲームに置き換えて、依存ではなく趣味の範疇に入っているか確認してみます。

 

(a)アルコールを摂取したいという強い欲望あるいは強迫感
(b)アルコール使用の開始、終了、あるいは使用量に関して、そのアルコールの摂取行動を統制することが困難
(c)アルコール使用を中止もしくは減量したときの生理学的離脱状態.その物質に特徴的な離脱症候群の出現や、離脱症状を軽減するか避ける意図で同じ物質(もしくは近縁の物質)を使用することが証拠となる.
(d)はじめはより少量で得られたその精神作用物質の効果を得るために、使用量をふやさなければならないような耐性の証拠.(この顕著な例は、アルコールとアヘンの依存者に認められる.彼らは、耐性のない使用者には耐えられないか、あるいは致死的な量を毎日摂取することがある.)
(e)精神作用物質使用のために、それにかわる楽しみや興味を次第に無視するようになり、その物質を摂取せざるをえない時間や、その効果からの回復に要する時間が延長する.
(f)明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、いぜんとしてアルコールを使用する.

出典:内閣府

 

関連記事

「アルコール依存度」チェック

あと1杯…ついつい飲み過ぎていませんか?

「アルコール依存度」チェック

 

 

プレイ時間を把握し、管理する

そのうえでゲームのプレイ時間を可視化するために、ノートに記載してその時にゲームを始めた理由を簡単に付け加えてください。

 

どれほど自分がゲームをやっているか分かれば、やってはいけない時間を決めましょう。例えば、食事中は絶対にゲームをしない、もしくは通勤のバスの中でスマホを触らない、という具合にです。

 

さらにゲーム時間以外を別の行動に置き換えてみましょう。例えば、バスの中では本を読むとするとします。

 

2週間程度で行動を見直して、自分で立てた約束事がしっかり守れているか確認してみて下さい。自分の行動を管理できるよう心がけ、ゲームとの適切な距離を保っておきましょう。

 

 

最後に井上先生から一言 

ゲームがいつでもどこでもプレイができる時代になり、さらに承認欲求や自己肯定感までも高めるモノになりました。これほど、気軽で刺激的な現実逃避はないと思われます。

 

だからこそ、患者さんだけでなく家族や社会がゲーム障害のリスクへの理解を進めて、ゲームとの適切な距離を保てるようにすることが大切になります。

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。