乳がん闘病中の芸能人の報道などで、乳がんに対する関心が高まり、検診の必要性が知られるようになってきました。

 

実際に検診を受けようとしても、何歳から受けたほうがよいのか、マンモグラフィや超音波検査など検査方法はどれがよいのか、よくわからないですよね。

 

今回は、私たちが乳がん検診を適切に受けられるよう、乳がん検診について医師に解説していただきました。 

 

 

乳がん検診はなぜ大切?

 

早期の乳がんは、自覚症状があまりないと言われています。

 

他のがんや病気についても言えることですが、はっきりした自覚症状が現れてから検査や治療を行うよりも、検診で早期発見したほうが予後がよいのです。

 

 

乳がん検診を受ける方法は3つ 

1.自治体による住民検診

40歳を過ぎると、自治体による乳がんの住民検診が2年に1回行われます。費用は、自己負担が数100円ほどで、残りは税金でまかなわれます。

 

2.会社の健康診断

働いている会社や所属している健康保険組合から、健康診断の際に「何歳以上の希望者は乳がん検診も受けられます」などと案内される場合があります。

 

検査方法は、個人の判断に任せて選べる場合もあれば、「40歳未満は超音波検査のみ・40歳以上はマンモグラフィのみ」などと決められている場合もあります。

 

3.個人で乳がん検診を受けに行く

症状がない方は、自分の自由意志で乳がん検診を全額自己負担で受けることもできます。その場合、健康保険は適用されません。

 

好きな検診方法で、好きな頻度で受けることができます。

 

症状がある方は乳腺外科へ

胸を触るとしこりがある、痛い、外から見て皮膚が赤い、皮膚がひきつれて凹んでいるなどの症状がある場合は、検診を受けるのではなく、乳腺外科などを受診しましょう。

 

その際は、健康保険適用で医師が必要と判断した検査を受けることになります。

 

 

乳がんの検査にはどのような種類がある?

マンモグラフィー機器 

乳がんの検査は多種多様で、それぞれメリットとデメリットがあります。

 

セルフチェック

セルフチェックは、自分で乳房やわきのリンパ節を触って、しこりがないか確認する方法です。手軽でいつでもできますが、自分の手だけが頼りなので見逃すこともあります。

 

しこりができるに至らない早期のがんは、セルフチェックだけでは発見することはできません。

 

医師の視診・触診

視診では、医師の目で乳房の皮膚のひきつれや変色がないかを確認します。触診では、手で乳房やリンパ節を触ってしこりがないかを確認します。

 

手軽ですが、恥ずかしいと感じる方もいます。また、医師であっても視診と触診だけでは、早期のがんは発見できないことがあります。

 

マンモグラフィ

マンモグラフィとは、乳房用のレントゲン検査のことです。視診・触診では見つけられないがんでも発見できることがあります。

 

マンモグラフィのデメリットとしては、乳房を平たく押しつぶして撮影するため痛みがあることと、ごくわずかですが放射線被ばくを伴うことが挙げられます。

 

40代未満の女性に対しては、マンモグラフィを全員に行うことは推奨されていません。

 

また、若い女性は乳腺がぎゅっと詰まっており、乳腺にまぎれて病変が見えにくい場合があります。そのため、一般的にマンモグラフィより超音波検査のほうが向いていると考えられています。

 

超音波検査(エコー)

超音波検査とは、乳房に超音波を発する器具を押し付け、病変を探す検査です。お腹の中の赤ちゃんを見る超音波検査と原理は同じです。

 

乳腺濃度の高い若い女性、妊娠・授乳中の女性については、マンモグラフィよりも超音波検査のほうが適しています。

 

超音波検査のデメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。

 

・がんではない良性のしこりについても発見し過ぎてしまうため、不必要な精密検査や、がんの疑いによる精神的負担が起こりうる

・病変を見つけ出せるかどうかは、検査をする検査技師もしくは医師の技能に依存する

・マンモグラフィと比べると早期の乳がんで見られることがある石灰化という状態を見つける能力が劣る

・マンモグラフィと比べると検査に時間がかかる

 

MRI検査

MRI検査では、磁気を利用し、画像を描き出します。

 

MRI検査は、病変の検出能力が高いため、血のつながった家族に乳がんが多いなど、乳がんのリスクが高い方に望ましいとされています。

 

 

検診を受けるのに適した時期はある?

月経がある女性の場合、月経が終わった直後は乳腺が比較的しぼんでいるので、検査がしやすいです。

 

一方で、月経前は乳腺がふくらむため検査にはあまり適しません。

 

 

年代別の注意点

胸に手を当てほほえむ女性

 

40代以降の方 

40代以降の方については、自覚症状がなく、それまでの検診で異常を指摘されていなければ、2年に1回の視診・触診とマンモグラフィを受けることで乳がんによる死亡率を減らすと考えられています。

 

ただし、さまざまな研究から、「検診でがんが発見され治療を受けた人の中に、放っておいても寿命に関係しないような病変をがんと過剰診断し、治療してしまった人たちが含まれているのではないか」という意見も挙がっています。

 

今後、検診の年齢・頻度・方法などは変わっていく可能性があるため、動向をチェックしましょう。

 

20~30代の方

20~30代の若い方については、「症状はないけど乳がんが心配」という場合は、自費で検診を受けることが基本です。

 

血のつながった家族の中に乳がん患者が多いと、乳がんになる可能性が高くなると言われています。このような方には、20代であっても1年に1回ほど、超音波検査やMRI検査がすすめられます。

 

乳がんのリスク因子としては、家族歴のほかに、喫煙、飲酒、肥満、シフト制の仕事など不規則な生活習慣が考えられています。

 

若いうちから、健康には気をつけるようにしましょう。

 

 

最後に医師から一言

乳がんを診察する医師

 

検診は大切ですが、検診さえ受けていれば、乳がんで命を落とすことは絶対にないというわけではありません。がんの見落としも可能性としてありますし、運悪く進行が非常に早いがんにかかることもあります。

 

乳がんが発見されたら、手術・抗がん剤・ホルモン治療・放射線治療などを、時には数年にわたって行い、少なくとも5年以上は定期受診が必要になります。

 

治療中は妊娠できない場合もありますし、がん患者になった精神的重圧も大変なものでしょう。

 

乳がん検診のメリットとデメリットを知って、適切なタイミングで受けるようにしましょう。

 

参考資料 

疫学・予防 【目次】 乳癌診療ガイドライン 日本乳癌学会

乳がんの検診と診断 患者さんのための乳癌診療ガイドライン 一般社団法人日本乳癌学会