2018年現在、ワクチンで防げる感染症にも関わらず、風疹が日本で流行しています。
漫画「コウノドリ」の風疹エピソードが無料公開になったことでも話題になりましたが、妊娠中の女性にとっては、外に出るのも不安ですよね。
そこで今回は、風疹の流行状況やワクチン接種について医師に解説していただきました。
【2018年】風疹の流行状況は?
首都圏の30~40代の男性を中心に流行
首都圏を中心に流行が続いている風疹ですが、まだ終息の気配はみられません。
国立感染症研究所から発表された2018年10月10日の状況によると、東京・千葉・神奈川を中心に、2018年の累計患者数は1100人を超え、例年の10倍以上となっています。
男性患者は、女性患者の5倍多く報告されています。男性は30~40代に多く、女性は20~30代に多くなっています。これらの年代は、集団予防接種が行われておらず、実際の風疹患者に接したこともない年代です。
患者の90%以上は、予防接種歴がない、もしくは接種したか不明の人です。また、病人やその体液に接する機会が多い医療関係者の患者が多いという傾向があります。*1
そもそも風疹とは?
感染ルート
風疹は、麻疹のように空気感染はせず、咳やくしゃみのしぶきで感染する飛沫感染と、接触感染(ウイルスを含んだ体液に触れた手で粘膜に触れること)で感染すると言われています。
そのため、風邪やインフルエンザに対する対策のような、手洗い・うがいが有効と考えられます。
症状
典型的な症状として、感染から14~21日の潜伏期間の後、発熱・発疹・リンパ節の腫れが起こります。発熱は、患者の半分くらいでしかみられず、発疹も小さく淡いピンク色で目立たない場合があります。鼻水や白目の充血が起こることもあります。
また、風疹では、症状がはっきりしないまま治る「不顕性感染」が、15~30%程度あると言われています。
風疹における大きなリスクは?
先天性風疹症候群
十分な免疫がない妊婦さんが風疹に感染すると、胎盤を通過してウイルスが胎児に感染します。生まれてきた赤ちゃんは、先天性風疹症候群という様々な異常を起こすことがあります。
どの時期に感染するかによって、赤ちゃんの症状は異なります。妊娠初期に感染すると難聴、心疾患、目の白内障・網膜症などが現れやすく、妊娠2カ月を過ぎると心臓の問題は起こりにくくなります。
妊娠12週までに風疹に感染した場合は、85%の赤ちゃんに先天性風疹症候群が起こると推定されています。*2
妊娠20週を過ぎると問題がない場合が多いとされています。しかし、妊娠後期であっても風疹に感染すると、赤ちゃんが風疹に感染して生まれてくる可能性はありえます。
生後しばらくしてからⅠ型糖尿病や知的障害、脳炎などが分かる場合もあります。
また、妊婦さんの風疹感染は、胎児死亡や流産・早産につながることもあると言われています。
風疹ワクチンは何科で受けられる?
風疹ワクチンは、主に、小児科、内科、耳鼻科、婦人科、渡航外来などで受けることができます。渡航外来とは、主に海外旅行をする人などを対象にワクチン接種を行っている外来です。
まずは血液検査で抗体検査を
ワクチンは急に製造を増やすことが難しい薬です。子どもへの接種が優先でもあり、接種したい人全員に速やかにワクチンが行きわたるとは限らない状況のようです。
そのため、まずは抗体があるかの血液検査を行い、抗体が少ない場合のみ接種するといったように、複数回の受診が必要です。
最後に医師から一言
先天性風疹症候群は、妊娠前のワクチン接種で予防できる病気です。しかし、実際には何度接種しても十分な免疫を得られない体質の方もいます。そのため、社会全体でワクチン接種を進め、風疹を撲滅していく必要があります。
風疹ワクチンは、自費で1万円近くかかることが懸念点となっていますが、自治体によっては家族に妊娠中・妊娠予定の女性がいる場合には、検査費用や接種費用を補助する場合もあります。
血液検査をして、免疫が基準値にギリギリ達していたとしても、感染する可能性はゼロではありません。特に妊婦さんは、無用な人ごみへの外出は控え、うがい手洗いを励行するといった注意が必要です。
参考資料
*1 国立感染症研究所 感染症疫学センター(2018)「風疹急増に関する緊急情報:2018年10月10日現在」
*2 Sarah J. White , et al. Clinical Obstetrics and Gynecology. 2012;55(2):550–559.