みなさんは「隠れインフルエンザ」という言葉を聞いたことがありますか?インフルエンザが流行ると、少しの体調不良でも「もしかしてインフルエンザかも…?」と不安になる人も多いと思います。

 

そこで今回は、「隠れインフルエンザ」について医師に解説していただきました。

 

 

隠れインフルエンザとは 

 

「隠れインフルエンザ」とは、症状が軽く熱も高くないが、検査ではインフルエンザ陽性だった場合を指す俗語です。

 

そもそもインフルエンザの典型的な症状は、38度を超える発熱、悪寒、関節の痛み、鼻水、鼻づまり、咳、のどの痛みなどです。

 

しかし、同じインフルエンザウイルスに感染しても症状の出方は人それぞれで、これらの症状が軽症で済む場合があります。

 

 

どのような人がなりやすい?

 

どの年代であっても、隠れインフルエンザ状態になる人はいます。

 

ワクチンを接種した人や、似たようなウイルスに感染したことがあり免疫がある人は、軽症で済む場合があるでしょう。ウイルスが体に入ってきたときにゆっくり休み、早期にウイルスに対抗できた場合なども軽症のうちに治る可能性があります。

 

 

病院を受診する必要は?

 

「隠れインフルエンザかも…?」と思ったときに、すぐに病院に行ったほうがよいのかどうか迷う方もいると思います。食べる、寝る、排泄するなど、日常生活上の動作に異常がないようであれば、受診の必要性は低いでしょう。

 

逆に、つらくて食事がとれない、息苦しく寝られない、起き上がれない、尿が出ないなどの異常があれば、風邪かインフルエンザか他の病気かに関係なく受診が必要です。

 

症状が軽いときの受診はちょっと待って!

 

体調が悪いときに原因がインフルエンザとわかれば、病名がはっきりして安心でき、今後の見通しも立ちます。

 

しかし、インフルエンザは毎年冬に流行し、人口の5~10%、つまり日本では600万~1200万人の患者が発生しています。

 

これらの患者と、「自分はインフルエンザではないか」と思う人たちが病院に押し寄せ、全員に迅速検査や抗インフルエンザ薬を処方することは、医療機関のキャパシティや医療経済から考えると難しいでしょう。

 

病院で検査さえすればインフルエンザと風邪を100%見分けられると考える人がいますが、必ずしもそうではありません。

 

軽症の場合でもインフルエンザであれば抗インフルエンザ薬を飲まないと治らない、ということもありません。基本的にインフルエンザは、風邪と同じように自然治癒する病気です。

 

抗インフルエンザ薬を使うことで1日ほど早く治ると言われています。しかし、インフルエンザ陽性でも軽症で、副作用のリスクのほうが大きくなると考えられる場合は、処方されないことがあります。

 

抗インフルエンザ薬を乱用すれば、耐性を持つウイルスの出現も考えられます。運が悪ければ、病院で他のウイルスをもらってくる可能性もあります。

 

症状が軽い場合は、必ずしも病院に行かなければならないわけではありません。受診する前に一度考えてみてもよいかもしれません。

 

早めの受診が必要な人

 

以下の人は、普段からかかりつけの医師と連携し、重症かどうかを判断する基準を緩めておき、早めに受診するようにしましょう。

 

・乳児

・妊婦

・65歳以上の高齢者

・持病のある人

・免疫を抑制する薬を飲んでいる人など

 

 

会社は休むべき?

 

咳やくしゃみが少ないのであれば、他人にうつすリスクは低いと考えられます。熱が低くても、咳やくしゃみの症状が強ければ、人にうつす可能性は高くなります。

 

症状が治まるまでは会社を休みましょう。

 

※子どもの場合は、学校保健安全法で「発症後5日、かつ解熱後2日を経過するまでは出席停止」と決められています。軽症のインフルエンザでも、インフルエンザと診断された以上は出席停止期間を課せられるのが現状です。

 

 

最後に医師から一言 

 

体調が悪いときは、風邪だろうとインフルエンザだろうと無用な外出は控えましょう。インフルエンザについては、流行前のワクチン接種が大前提になります。

 

咳エチケットとしては、咳が出ている人がマスクをし、マスクがなければ袖で口もとを隠すなどの工夫をしましょう。鼻水などが付いたティッシュはすぐ捨てる、公共物を鼻水の付いた手で触れないなどのエチケットも必要です。

 

ただの風邪かインフルエンザかにこだわらず、自分の体からの声に従い、つらければ早めに休む、水分や栄養を取ることが大切です。