インフルエンザの感染経路

飛沫感染が主ですが、接触感染でも感染します。

飛沫感染


インフルエンザは、感染した人のくしゃみや咳などによって飛び散ったウイルスを含む粒子(飛沫)を、鼻や口から吸い込むことで感染します。

接触感染


ウイルスのついたものに触れ、手指などを介して口や鼻の粘膜にウイルスが入ることでも感染します。

インフルエンザの潜伏期間

潜伏期間の目安


インフルエンザに感染してから発症するまでの期間は、1~3日です。

潜伏期間での感染力


一般的にインフルエンザは、発症する前日から他の人に感染させる能力があるとされています。

インフルエンザの症状

インフルエンザの症状の特徴


インフルエンザの症状の主な特徴は、38℃以上の高熱と急激な体調の悪化です。インフルエンザの症状には、ほかにも頭痛や関節痛、全身倦怠感、喉の痛みなどが挙げられます。症状の一部しか現れない人もいれば、あらゆる症状が出る人もいます。

●インフルエンザと風邪の症状の違い
風邪の場合は咽頭痛や鼻水、咳など気道症状が中心です。それに対して、インフルエンザの場合は、全身の倦怠感、筋肉痛、頭痛など全身症状が出やすいことが特徴です。

インフルエンザの主な症状






  • 悪寒や寒気を感じてガタガタと震える

  • 頭痛

  • 関節痛、筋肉痛

  • 全身の倦怠感

  • 食欲不振

  • 胃痛、腹痛、吐き気

  • 下痢

  • 咳、くしゃみ、鼻水

  • 喉の痛み





ウイルス別の症状


●A型
A型ウイルスは感染力が強く、ときに大流行を起こすことが特徴です。「H3N2」と「H1N1」という2種類の型が主に流行します。

急激に38~40℃を超えるような高熱が出ることがあり、発熱に伴い悪寒や震え、関節痛や筋肉痛を伴うことも多いです。頭痛や咳、腹痛や嘔吐、下痢が起こることもあります。

●B型
B型ウイルスは、遺伝子が変異しにくいことが特徴です。「山形型」と「ビクトリア型」という遺伝子構造が異なる2種類があります。

症状は基本的にA型ウイルスと同じですが、下痢や腹痛など消化器の症状が多いと言われています。高熱を伴わない場合もあります。

インフルエンザの症状が軽い場合


病原体に感染するまでの過程で、予防接種をしている場合など体の免疫がまさると症状が出なかったり、軽い症状で済んだりすることがあります。

自身が強い症状が出ていなくても、他人に感染させるほどのウイルスが増殖していることがあります。注意点として、咳やくしゃみが出る場合は、マスクをして周りに配慮しましょう。

インフルエンザの検査

検査方法


細長い綿棒を鼻の奥に入れて、鼻や喉の粘液を採取して検査を行います。検査キットの種類によっては、鼻水(鼻かみ液)で検査を行える場合があります。

●迅速検査の仕組み
反応液の中には、インフルエンザウイルスにだけ反応する抗体物質が含まれ、ウイルスが抗体と結びつきます。結びついた抗体とウイルスが通過すると発色する抗体があり、その発色が陽性として現れる仕組みです。

インフルエンザに感染していても陰性と判定される理由




  1. 鼻水の採取がうまくいっていない

    鼻の奥に綿棒を入れられるのは痛く、暴れると鼻の奥まで綿棒を入れられないことがあります。そのため、採取がうまく行かず正しい判定がされないことがあります。また、採取時に鼻血が出てしまい反応液に血液が混ざり込むことで、精度が落ちることもあります。




  2. ウイルスがそれほど増殖していない

    症状が現れてから検査をするまでの時間が短いと、ウイルスの増殖が十分ではなく、陰性と診断される場合があります。





検査を受けるタイミング


●発症後12~24時間程度
精度は、検査キットによっても若干異なります。発症早期から検査で陽性となる場合もありますが、12時間程度経つと90~95%の患者さんで陽性となるとされています。48時間以内に抗インフルエンザ薬の内服が理想的と考えらえます。重症化しやすい小児や高齢者、または同居者などでは疑わしい症状が出ている場合には早期に検査がすすめられます。ただし、早期の場合には、擬陰性の場合があるため繰り返し検査をすることがあります。

インフルエンザの出席停止・自宅待機期間


●学生の場合
インフルエンザと診断され、発症した後5日間経過する、なおかつ解熱後2日(未就学の幼児は3日)経過するまでの出席停止が必要となっています。

●社会人の場合
社会人の場合、インフルエンザと診断されても、休業や出勤停止は会社によって異なります。一般的に、発症した日から3~7日間は、ウイルスの排出の可能性が高いため、外出を控える必要があります。

インフルエンザの治療

インフルエンザにかかった場合、解熱鎮痛剤による対症療法、抗インフルエンザ薬や漢方薬による治療などを組み合わせて治療を行います。

【抗インフルエンザ薬】


抗インフルエンザ薬には、ウイルスの増殖を抑えたり、症状を軽減したりする効果があります。

※インフルエンザウイルスなどのウイルス性の感染症において、抗菌薬は効果がありません。
※インフルエンザにかかったときは、どの種類の抗インフルエンザ薬を飲んでも飲まなくても、異常行動が現れる可能性があります。

タミフル


●特徴
オセルタミビル(商品名:タミフル)は、感染した患者さんに接触した家族や医療関係者に対しての予防投与としても使用されます。

●副作用
下痢や悪心、発疹などが起きる場合があります。腎機能が低下している人では用量の調整が必要になることがあります。

リレンザ


●特徴
ザナミビル(商品名:リレンザ)は、口から吸入するタイプの薬です。口・鼻やのど・気道と同じ経路で薬を入れれば、より効率的に感染部位に薬を届けられるという発想で作られた吸入薬です。

●副作用
副作用として、下痢や発疹、悪心が起こる場合があります。

イナビル


●特徴
ラニナミビル(商品名:イナビル)は、1回の吸入で投与が終了する抗インフルエンザ薬です。

●副作用
副作用として、下痢や悪心、蕁麻疹などが起こることがあります。

肺炎や喘息発作などを合併している場合には吸入薬は適さないことがあります。

●母乳への影響
イナビルの母乳への移行はごくわずかで、赤ちゃんへの影響はさほどありません。赤ちゃんへの影響が気になるという方は、吸入後12時間程度授乳を中止するとよいでしょう。

ラピアクタ


●特徴
抗インフルエンザ薬で唯一の点滴薬が、ペラミビル(商品名:ラピアクタ)です。この薬は予防投与には使用できません。他の抗インフルエンザ薬が使用できない場合に検討される薬です。

●副作用
副作用として、下痢や白血球減少、嘔吐などが起こる可能性があります。

ゾフルーザ


●特徴
バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)は、2018年3月に発売された抗インフルエンザ薬で、1回の服用でよい経口薬です。

●副作用
副作用として、下痢や悪心が起こる可能性があります。また、ウイルスの遺伝子変異を起こす率が高いとされており、使用に関しては慎重に行う必要があります。

【漢方薬】


麻黄湯、柴胡桂枝湯、竹茹湯胆湯などがインフルエンザに対して保険適応があります。それぞれの患者さんの病態に応じて、使い分けることができるようになっています。

このうち麻黄湯は近年注目されており、臨床症状の改善に対して抗インフルエンザ薬と同等の効果があったという臨床研究データも出ています。麻黄湯に含まれる成分に、抗ウイルス作用やサイトカイン抑制作用、免疫賦活作用などがあるためと考えられています。

インフルエンザ予防接種

インフルエンザワクチンを毎年受けるべき理由


予防接種は、次に同じような病原体が入ってきたときに、病原体を破壊する抗体を産生できるようにすることが目的です。しかし、インフルエンザワクチンは、接種の数カ月後には、ウイルスを排除するに十分ではないレベルに抗体価が低下します。そのため、毎年の予防接種が必要になります。

インフルエンザ予防接種の効果


・インフルエンザにかかりにくくする
・死亡や脳症といった重症化を防ぐ

インフルエンザ予防接種の時期


●1回接種の人は12月中旬までに
接種して効果を発揮するまでに、約2週間かかります。そのため、インフルエンザが流行り始める前の10~12月中旬ごろまでには、予防接種を受けるとよいでしょう。

●2回接種の人
13歳未満の子どもは、インフルエンザウイルスに対する免疫を1回だけでは得られないことがあるため、2回受ける必要があります。また、持病がある人や免疫が抑制されている人などは、医師の判断で2回接種になることがあります。

・1回目は10~11月中旬ごろまでに
1回目の予防接種は、10~11月中旬ごろまでには受けましょう。

・ 2回目は12月中旬までに
2回目の接種は、1回目の接種から1~4週間あけて受ける必要があります。遅くとも、12月中旬までには2回目を打ちましょう。病院によっては、ワクチンの在庫が無くなることもあるため、注意が必要です。

予防接種後の注意点


接種当日は、いつも通りの生活をして構いませんが、激しい運動や飲酒は避けてください。接種した部位は清潔に保ちましょう。入浴は問題ありませんが、接種した部位はこすらないようにしてください。接種した部位が赤く腫れたり痛んだりすることがありますが、ほとんどは数日で軽快します。

インフルエンザ予防接種の副反応

軽度の副反応


予防接種をした10~20%の人が打った箇所に以下のような症状を発症しますが、2~3日ほどでよくなります。



  • 赤くなる

  • 痛くなる

  • かゆくなる

  • 腫れる





中度の副反応


予防接種をした5~10%の人が発症しますが、2~3日でよくなります。



  • 発熱

  • 頭痛

  • 寒気

  • だるさ

  • 発疹

  • じんましん

  • 赤み

  • かゆみ





重度の副反応


後遺症や死亡のような重い副反応が非常にまれにあります。しかし、予防接種とのはっきりした因果関係はわかっていません。



  • ギランバレー症候群

  • 急性脳症

  • 急性散在性脳脊髄炎

  • けいれん

  • 肝機能障害

  • 喘息発作

  • 紫斑



インフルエンザに感染した際の注意点

水分補給を十分に行う


高熱や下痢などで脱水症状を引き起こす場合もあるため、経口補水液などを摂取して水分補給を十分に行いましょう。

外出を控える


インフルエンザは、他人に感染しやすいという特徴があります。インフルエンザの発症が確定した、または疑われる場合は、学校・職場など人が集まるところへの外出は控えましょう。

インフルエンザの予防

手洗い・うがい


外出後は手洗い・うがいをしましょう。外でついたウイルスを洗い流すことで、体内へのウイルスの侵入を抑えることができます。家族や同居する人がいる場合は、みんなで「手洗い・うがい」を習慣化してインフルエンザ予防をすることが大切です。

マスクをする


インフルエンザは飛沫感染でも感染してしまうため、マスクをすることは多少の感染予防になります。同時に、自分の咳やくしゃみの飛沫から他人に感染するのを防ぐ効果もあります。

栄養と休養をとる


抵抗力が低下するとインフルエンザにかかりやすくなります。休養をしっかり取り、体力をつけて抵抗力を高めることで感染しにくくなります。また、インフルエンザが流行っているときには、必要以上の外出を控え、ウイルスを寄せ付けないようにしましょう。

適度な湿度を保つ


喉や鼻の中が乾かないように、加湿器などで室内の適度な湿度を保つことが大切です。適度に換気をして、新しい空気を入れるのもよいでしょう。