欧米では、自己管理方法の1つとして一般的なカウンセリング。洋画にカウンセリングシーンがよく出ることもあり、一度受けてみたいという方もいるのではないでしょうか?
最近では、チャットや電話で受けられるカウンセリングも出てきており、日本でも手軽に受けられるようになってきています。
そこで今回は、カウンセリングについて井上先生に解説していただきました。
カウンセリングって何?
カウンセリングは、相談者の心因から出ている症状を少しでも改善するために役立つものです。
カウンセリングの方法や流派は色々とあり、目的も相談者によって異なってきます。そのため、カウンセリングと言えば「これ」といった形はありません。
カウンセラーと相談者との関係は、まっさらな状態で始まり、そこから2人が関係を作っていきます。
日本人のカウンセリング事情
日本人のカウンセリング利用率は、世界的に見ても低いと言われています。
その理由の1つとして、日本人特有の自分の意見や気持ちをバンバンと相手に言わないといった奥ゆかしさをよしとする風潮があると考えられます。そのためか、他国と比べると人に相談することが苦手な人が多い傾向があります。
そのうえ、「カウンセリングを受けたら、メンタルが弱い人とレッテルを張られるのではないだろうか…」とネガティブな印象をもつ人もいます。このような誤解から、カウンセリング利用率が下がってしまうと考えられます。
カウンセリングに保険は使える?
カウンセリングには、原則は保険が適用されません。全て自費であることが一般的です。そのため、相談者の経済的負担が大きいのは事実でしょう。
病院でカウンセリングを受ける際の注意点
医療機関では、同じ日に保険が適応される診療と保険が適応されない診療を行うことができません。これは、「混合診療」と言って、法律で禁止されている行為です。
たとえば「心療内科の診察日と同日に、同じ病院でカウンセリングを受けることは出来ない」と知っておく必要があります。
このように、相談者には経済的負担だけでなく、時間的な負担ものしかかります。
料金はどれくらい?
カウンセリング料金は自費のため、各医療機関が自由に定めることができます。そのため料金には幅があり、一概には言えません。
目安としては、50分1回のセッションを行ったとき、8,000円~12,000円くらいが相場になります。
大学院生などが担当するときは、トレーニングの意味合いも含まれるため、もう少し安価になります。気になる人は、各大学の心理学部などに問い合わせてみるのも良いでしょう。
カウンセリングを活用するタイミング
カウンセリングなどの心理療法を活用すると良いタイミングは、主に心因で精神的症状が出ているときです。
例を挙げると、仕事や周囲の人間関係などが原因で、不安やイライラなどの症状が出ているときです。
薬でも一時的に症状は改善します。しかし、周囲との関係や自身の考え方を変えるには、カウンセリングが有用ということもあり、根本的な治療にも繋がります。
※ 心因ではなくても、発達障害やパーソナリティ障害などにより症状が出ている際にもカウンセリングが用いられることがあります。
「べき思考」に苦しんでいる
「べき思考」で物事を考えると、心的なストレスを抱えやすい状態になります。「社会人なら、こうすべき」、「主婦とは、こうあるべき」といった社会的な常識や基準を自分に当てはめてしまうことで、自分らしさを失い辛くなってしまいます。
薬も一時しのぎには有効です。しかし、このような「べき思考」の人には、薬というより、カウンセリングなどで認知(考え方や捉え方)を変えることが効果的なケースもあります。
実際に、カウンセリングによって自己の基準で物事を判断できるようになり、不安や辛さが解消された例もあります。
最後に井上先生から一言
患者さんの中には、精神科医から処方される薬に「余計に頭が混乱するのではないのか…」、「一生、薬に依存するのではないか…」などの恐怖を感じる人がいます。
そのため、薬は服用せずに、カウンセリングだけを希望される人もいます。しかし、薬とカウンセリングの役割は別物です。薬で改善できない領域もあれば、カウンセリングで改善できない領域もあります。
そして、同じ病名であっても、カウンセリングが有用な時期もあれば、逆にカウンセリングによって症状が悪化してしまう時期もあります。
そのあたりも含めて、主治医の先生やカウンセラーに相談して利用してみましょう。
プロフィール
- 監修:医師 井上 智介
- 島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。