暖かく過ごしやすくなるにつれて近づいてくるのが、花粉症のシーズン。今や、国民の1/4以上が罹患すると言われる花粉症、不安な方も多いのではないでしょうか。
そこで、今回は花粉症の治療でよく用いられる点鼻薬について薬剤師が解説します。
点鼻薬とは?
点鼻薬とは、鼻腔に直接入れる薬を指します。
鼻に「シュッシュ」と噴く、あるいは目薬のように鼻に「ポタポタ」入れるものです。
主に、花粉症や鼻炎などによる鼻づまりの症状に対して使われます。飲み薬に比べて局所的に作用し、全身への影響が少ないことが特徴です。
点鼻薬の種類
点鼻薬は、主に4つの成分に分かれます。
以下、それぞれの成分と代表的な医薬品を紹介します。
ステロイド剤
【例】
・アラミスト(一般名:フルチカゾンフランカルボン酸エステル)
・フルナーゼ(一般名:フルチカゾンプロピオン酸エステル)
・ナゾネックス(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)
・エリザス(一般名:デキサメタゾンシペシル酸エステル) など
花粉症の治療において、使用される頻度が高いのはステロイド剤です。花粉症では、基本的に中等症以上の方に用いられる薬です。抗炎症や抗アレルギー作用があり、くしゃみ・鼻水・鼻づまりに効果があります。
少量の薬を鼻に直接吹きかけることで効果が望めるため、吸収による全身への影響や副作用はほとんど見られません。また、1年以上連用しても安全と言われています。
鼻に使用することでの副作用として、鼻の乾燥・鼻出血がまれに見られますが、いずれも軽度の場合が多いです。
ステロイド剤(経口や塗り薬も含め)に共通する注意点は、用法用量を守り、自己休薬をしないことです。ステロイド剤は、指定された期間使い続けることできちんと効果が出ます。すぐに改善したと感じなくても、やめないでください。
反対に、見かけの症状がよくなっても、しっかり症状が治まっていない状態で休薬すると症状が悪化するリスクがあります。医師の指示に従って正しく使用すれば、効果が見込め、副作用も少ない薬です。
抗ヒスタミン剤
【例】
・ザジテン(一般名:ケトチフェンフマル酸塩)
・リボスチン(一般名:レボカバスチン塩酸塩)
ヒスタミンとは、くしゃみ・鼻水の原因になる物質です。アレルゲンが体内に入ると、反応した部位からヒスタミンという物質が出てきます。この出てきたヒスタミンの作用を抑えるのが、抗ヒスタミン剤です。
現在、抗ヒスタミン剤は点鼻薬より飲み薬のほうが一般的です。飲み薬と同様に眠気が出るものもあるため、使用の際は注意が必要です。
遊離抑制剤
【例】インタール(一般名:クロモグリク酸ナトリウム)
アレルゲンが体内に入った際に、ヒスタミンが出てくることを防ぐ薬です。効き目が出るまでに2週間ほどかかる穏やかな薬のため、早くから使用を始めることが重要です。
抗ヒスタミン剤とは異なり、眠気はでません。遊離抑制剤も、飲み薬のほうが一般的です。
血管収縮剤
【例】コールタイジン(一般名:塩酸テトラヒドロゾリン)
鼻の中の血管を収縮し、腫れを引かせることで鼻づまりを改善する即効性のある薬です。市販薬で手に入る(ナファゾリン、トラマゾリンなど)身近な薬ですが、効き目が良い分、注意点があります。
ポイントは、長期連用を避け、症状のひどいときに使うことです。長く頻回使用すると、段々効かなくなり量も回数も増え、副作用が出る恐れがあります。
他の花粉症の点鼻薬は症状が緩和しても継続が大切ですが、血管収縮剤はひどい症状に対してのみ使います。
点鼻薬全てに共通する使い方
点鼻薬は、鼻が通っているときに使います。おすすめは、お風呂上りです。
1.軽く鼻をかみ、容器をよく振ります。
2.片方ずつ滴下又は噴霧します。症状が片方でも、基本的に両方の穴に点鼻します。用法・用量は指示通り使いましょう。
3.薬を奥に行き渡せるために、軽く上を向き数秒待ちます。もし液だれしてきたら、拭き取って構いません。鼻はかまないようにしましょう。
4.点鼻薬のノズルを乾拭きし、完了です。
※使用した点鼻薬は容器を立て、遮光場所で保管しましょう。冷蔵庫に入れる必要はありません。
点鼻薬を使うときの注意点
点鼻薬の主な中止の原因は、液だれなど使用の不快感や使用法への不満です。しかし、点鼻薬の使用法は非常に重要なため、しっかり指導してもらうことが大切です。
空噴霧の必要があるものやカウンター付きのものなど、点鼻薬の種類によっては使用法が複雑です。難しいと感じた場合、薬を受け取る際に「その場で今日の分を噴霧出来るか」是非聞いてみてください。
実際に一度使ってみるとわかりやすいですし、サンプルを使って指導してくれる医療機関もあります。
また、ほとんどの点鼻薬は液剤ですが、中には液だれを改善した粉末タイプの点鼻薬もあります。医療用医薬品では、エリザスが粉末タイプですので、液だれが苦手な方は医師に相談してみてください。
最後に薬剤師から一言
花粉症で主に用いる点鼻薬は、ステロイド剤です。安全性が認められているお薬ですが、注意が必要な方がいます。それは、妊婦・授乳婦、乳幼児、ステロイドに注意が必要な病気の治療中もしくは薬を服用中の方です。
花粉症の症状を耐えるのはつらいものです。個々に応じて治療法が選択されますので、医師にご相談ください。
プロフィール
- 監修:薬剤師 吉田
- 大型病院前の調剤薬局を数店経験し、薬の副作用・飲み合わせや食事指導、お子さんへの薬の対応など広く携わる。 また、感染症と漢方分野に強く興味を持ち、積極的に学会や講演会に参加。現在ヨーロッパ在住。