新型コロナウィルス感染症が広がったことで、最近はマスクが手放せなくなりました。そのような中でマスク着用による顔の肌荒れのトラブルが増えています。
今回は、肌荒れの原因、対処法、マスクの選び方も含めてご説明します。
マスクをつけると肌が荒れるのはなぜ?
マスクを長時間付けることによる肌荒れの理由を、主に3つ挙げます。
摩擦
マスクをしていると、顔の動きによってマスクが擦れることが繰り返されます。
そのような摩擦が長時間続くと、皮膚表面の角層が刺激を受けて、皮膚のバリア機能が低下します。
そのため、マスクをしている部位の皮膚は、刺激を受けやすく、乾燥しやすい状態になってしまいます。
蒸れ
マスクをしていると呼気によって湿度が高い状態になり、雑菌が繁殖しやすい環境になります。
乾燥
逆にマスクを外すと、マスクを着けていた時の過剰な湿度がなくなり、皮膚の水分が一気に蒸散します。
また、マスクにより保温されていた温度も一気に下がり、皮膚が乾燥します。乾燥すると皮膚のバリア機能が低下し、雑菌などが侵入やすくなるのです。
このように、マスクの摩擦や、マスクの着脱を繰り返すことで温度差・湿度差が発生し、肌を健康に保つバリア機能や保湿機能が乱れて、肌荒れの原因になります。
マスク着用でどんな肌荒れが起きる可能性がある?
マスクによる肌荒れとして多いものはニキビ、湿疹、かぶれなどです。
ニキビ
マスクによる「摩擦」で皮膚表面の角層が厚くなり、毛穴の入り口が詰まりやすくなります。
また、マスクによる「皮膚のバリア機能の低下」でニキビの原因菌となるアクネ菌が増殖しやすくなります。それにより、ニキビができやすくなります。
湿疹
マスクによる摩擦、蒸れ、乾燥の繰り返しによる「皮膚のバリア機能の低下」によって、皮膚は敏感になり、通常では刺激にならないようなものでも刺激を受けてしまうようになります。
それにより、皮膚への刺激によって炎症が起こり、湿疹ができます。
かぶれ
マスクの素材自体にかぶれてしまう場合があります。
マスクによる肌荒れが起きた場合の対処法
自宅でできる対処法
まずは、バリア機能を整えるための肌のお手入れと、マスク内を清潔に保つことが重要です。
〇帰宅後、マスクを外した後は、低刺激性のクレンジング・洗顔料でやさしく汚れを落とします。
〇洗顔後は、低刺激性の化粧水や乳液などでしっかり保湿をしてください。化粧水や乳液がしみる場合は、よりしっとりしたクリームなどを使いましょう。
〇マスク装着時、特に食事後は口周りを清潔にしてからマスクを装着します。
〇マスク内が蒸れたり汗が出たりした場合は、こまめにふき取りましょう。
〇マスクはこまめに洗ってください。
医療機関での治療方法
自宅での対処で良くならない場合は、皮膚科を受診して相談しましょう。それぞれの症状に合わせた主な治療法を挙げます。
〇ニキビ
過酸化ベンゾイルやアダパレンなど、毛穴の詰まりを改善する塗り薬が用いられることが多いです。
赤ニキビや黄ニキビなど炎症のあるニキビが多い場合は、抗菌薬の塗り薬・飲み薬を併用します。
また、必要に応じて漢方薬、ビタミン剤などの飲み薬が用いられる場合もあります。
〇湿疹、かぶれ
皮膚の炎症を抑える目的でステロイドの塗り薬が用いられることが多いです。
また、痒みが強い場合は抗ヒスタミン薬の飲み薬を併用する場合もあります。
肌荒れを防ぐためにはどんなマスクを選べばいい?
マスクの選び方
販売されているもので多いのは、ガーゼマスクと不織布マスクです。
不織布マスクは化学繊維でできているので、天然素材の綿でできているガーゼマスクよりもかぶれやアレルギーが起こりやすいと言われています。
花粉やウイルスを排除する機能は不織布マスクの方が優れていますが、肌荒れのトラブルが続く場合は、ガーゼマスクに変えてみるのもよいでしょう。
また、皮膚にコットン、ガーゼなどを乗せてからマスクを着用することもマスクの摩擦を防ぐ1つの方法です。
ガーゼマスク、不織布マスクでも肌に合わない場合は、シルクのマスクなども販売されていますので試してみるとよいでしょう。
マスクのサイズ
マスクが小さすぎても大きすぎても皮膚に摩擦が起きやすくなります。
マスクは着用した時に鼻から顎までが隠れるくらいの大きさで、ゴムや紐の部分が耳に擦れて痛くならない程度のものがお勧めです。
口を動かしてもマスクが上下に動いたり、擦れて鼻が見えたりしないように調節しましょう。
まとめ
マスクの長時間着用や着脱が増えたことで、皮膚への摩擦、蒸れ、乾燥が起こり、肌荒れのトラブルが増加しています。
肌荒れにしっかり対処して、困ったときは皮膚科で相談しましょう。
プロフィール
- 医師 金城里美
- 専門分野は皮膚科全般(一般皮膚科、小児皮膚科、美容皮膚科、アレルギー科)。 東京医科歯科大卒業後、皮膚科医として大学病院、総合病院で7年間勤務。その後、内科・皮膚科クリニックで美容皮膚科の分野にも携わる。現在、総合病院の皮膚科で勤務。三児の母。