癒着胎盤の症状

出産後、通常30分以内に胎盤が剥離して体外に排出されます。しかし、分娩が終わっても胎盤が子宮筋から剥離されないで、とどまっている状態が癒着胎盤です。
  
胎盤を組織している絨毛と子宮筋の状態から、楔入胎盤(絨毛が子宮筋層表面と癒着しているが、筋層内への侵入はない)、嵌入(かんにゅう)胎盤(絨毛が筋層内に深く侵入している)、穿通胎盤(絨毛が子宮筋層を貫通し、子宮漿膜面までおよんでいる)の3つに分類されます。
  
癒着胎盤で最も問題になるのは、出血性ショックや播種性血管内血液凝固症候群(本来出血部分でのみ起こる血液の凝固反応が血管の中などでも起こる)などによる母体死亡のリスクです。

癒着胎盤の原因

癒着胎盤の発生頻度は全分娩の0.001~0.002%とまれですが、全治胎盤がある場合や帝王切開や人口中絶の前歴がある場合などは、発生頻度が高くなります。
  
癒着胎盤は、胎盤を構成する絨毛という組織が子宮筋に侵入して起こりますが、帝王切開などによる傷などのため脱落膜の形成が十分でなかったり、胎盤が付着していたりする子宮壁に脱落膜が形成されないことなどが原因で絨毛が子宮筋層に侵入すると考えられています。
  
癒着胎盤の危険因子としては、全治胎盤や帝王切開などの、子宮手術の傷以外に、先天的な子宮内膜形成不全、多産、粘膜下筋腫などがあげられます。

癒着胎盤の治療法

癒着胎盤は、妊娠中に予測することは不可能で、分娩時に初めて判明することがほとんどです。分娩後30分を経過しても胎盤の娩出がみられない場合に、癒着胎盤を疑います。
出血を伴わない場合は、そのまま経過観察して自然に娩出されるのを待つこともあります。
  
出血を伴う場合は大量出血につながる危険があるため、胎盤用手剥離術(手で胎盤を剥離する処置)をおこないます。胎盤用手剥離術で胎盤が剥離できない場合は、子宮摘出術を用いる場合があります。