原因

慢性化した炎症


副鼻腔の粘膜に細菌や真菌(カビ)が感染して膿が発生し、膿を排出するため構造がうまく働かず、炎症が慢性化して蓄膿症になってしまいます。

また、炎症を繰り返すうちに粘膜がキノコのように盛り上がり、鼻茸(はなたけ)というポリープができることもあります。

風邪やウイルス


風邪やウイルスが原因の鼻水、鼻づまりが続いてしまい炎症を起こしてしまうことがあります。
また、ウイルス自体が副鼻腔内に侵入して、炎症を引き起こすこともあります。

アレルギー症状


アレルギー物質が原因の鼻水、鼻づまりが長引いてしまい、副鼻腔炎から蓄膿症へ悪化してしまうことがあります。

鼻の形


「鼻中隔」という鼻の左右を仕切っている真ん中の仕切りが、鼻の通りが悪くなってしまう形をしていると、副鼻腔内に炎症がおきやすくなります。

症状

鼻をかむ女性
症状はさまざまで、進行度合いによって変わります。
軽度の場合は、鼻炎(アレルギー性鼻炎)と同じような症状が見られます。

鼻炎だと決め付け、放置してしまうと、症状が進行して手術が必要になるほど深刻になってしまう恐れがあります。

軽度の場合




軽度の蓄膿症でよくみられる症状



  • 鼻水から臭い匂いがする

  • 臭い鼻水が喉に落ちる

  • 鼻声になる

  • 鼻がむくんでいる

  • 鼻がつまる

  • 上手く声が出せない





重度の場合




重度の蓄膿症でよくみられる症状



  • 鼻づまりと鼻水が多くなる

  • 膿のニオイによる口臭

  • 頬や額の裏に重い感じやしつこい痛み

  • 咳(膿が喉に流れこむ為)

  • 鼻づまりにによる睡眠時無呼吸症

  • 奥歯の痛み

  • 頭痛



治療法と手術の目安

薬

治療法


慢性副鼻腔炎の治療では、副鼻腔の膿を吸い出したり、副鼻腔を洗浄し、炎症を抑える薬や繊毛の働きを助ける作用のある抗生物質を2~3ヶ月続けて飲みます。

手術の目安


近年は栄養状態が良くなってきたことや、早めから病院を受診し治療することが増えたため、手術するほどの慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は減っていますが、改善が不十分な場合や鼻茸がある場合は手術を検討します。

手術法

上顎洞の骨を出し行う手術(従来)


■ 手術方法
腫れた粘膜を取り除き、副鼻腔の膿が外に出てこられる道を作ります。
口の中から顔面の肉をはがしていき、頬の裏にある上顎洞の表面の骨を出し、骨を削って上顎洞に至る手術です。

現在は悪性腫瘍(がん)を疑う場合や、副鼻腔にカビが感染して起こった副鼻腔炎に限っては、従来の手術法で行われています。

■ 注意点
手術後、何十年も経過してから、術後性頬部嚢胞と呼ばれる副鼻腔内の嚢胞(水のたまった袋)ができることがあります。
徐々に大きくなって頬がもり上がったり、となりにある眼球の神経を圧迫して視力低下や視野欠損を起こすこともあります。

何十年も前に受けた副鼻腔炎の手術が原因とは患者さんも思わないため、眼科で調べても原因が分からない場合があります。

従来の蓄膿症手術を受けた場合は、数十年前に受けた手術が影響を及ぼす場合があることを知っておく必要があります。

内視鏡による手術(現在)


内視鏡
■ 手術方法
細い内視鏡(先にカメラが付いた棒)を鼻の穴から差し込み、副鼻腔から鼻の穴の中に膿を出すための道を見つけ、その周辺をドリルで削って道を広げる方法です。

左右の鼻を分ける骨(鼻中隔)の形や、鼻の穴の中に生えている骨(上・中・下鼻甲介)にひずみがあり、副鼻腔の液体の流出を妨げている場合は、内視鏡を使用して骨を修正する手術を行うこともあります。

■ メリット
内視鏡での手術は、顔面を大きく切る従来の手術に比べ、傷口がわずかなので回復が早いというメリットがあります。

■ デメリット
手術中は小さいカメラの二次元映像を頼りに操作することになるので、副鼻腔と近い眼窩(眼球をおさめている骨の部屋)を傷つけ、目を動かす神経や筋肉を傷つけてしまうことで、目の動きや視力に影響が出る可能性があります。

また脳に近い部分を傷つければ、脳の周りを流れている髄液が漏れてくることがあります。

手術期間

入院中の女性
手術する場合は、病状によっては日帰り手術もあり、1週間程度入院することもあります。

術後から2週間程度は出血の状態を確認したり、傷から出る分泌液を掃除するために頻繁に通院することが必要です。

蓄膿症の手術の体験談(43歳/男性)

男性

子供の頃から鼻炎持ち


子供の頃から風邪をひくとすぐに鼻づまりになり、黄色い鼻水が出る、いわゆる蓄膿症に頻繁になっていました。

常に点鼻薬と鼻炎カプセルとティッシュを持ち歩き、慢性的に鼻がつまっているので眠っている時も口を開けて口呼吸でした。

耳鼻科には通っていましたが、「鼻茸があるみたいだからね?」と言われるだけで、そんな時に事件は起きました。

インフルエンザで鼻炎の症状が悪化


仕事中に40度まで発熱し早退し、インフルエンザと診断されました。
副鼻腔炎がパンパンになり顔が腫れ上がり救急車を呼ぶことに。

病院に搬送された後は、膿性鼻汁を大量に吸引され、翌朝には鼻づまりもかなり改善して退院できました。

診察の結果、手術をすることに


また、救急搬送されるかもしれないという不安があったので、都内の耳鼻科に行ったところ鼻茸が大きくなり過ぎて副鼻腔を完全に塞いでいました。

大学病院の紹介状を書いてもらい、その日のうちに行き診察の結果、手術になりました。

しかし予想外だったのは、1週間入院が必要なことと全身麻酔での手術になるということです。
たかが鼻茸を切る手術だと思っていたので、日帰りでささっと切るだけだと思っていただけに驚きました。

手術前〜手術後


手術前日は食事抜きでした。当日は入室してすぐに「麻酔します」と口にマスクを当てられ、私はほんの数秒で意識がなくなりました。意識が戻ったのはその日の夜で、異常なほどの喉の渇きで目覚めました。

鼻は両穴に大量の詰め物が入っていてパンパンに膨らんでいて、下の方は尿道にチューブが入っていました。

手術の痛み


麻酔が切れると一気に鼻周辺の痛みが襲ってきました。すぐに痛み止めを飲みましたが、ほとんど効果はありませんでした。2、3日は痛みが続きました。

退院


手術から3日くらいで鼻に詰まったガーゼを抜くと言われました。ガーゼを抜き終わると鼻から予想以上に大量の空気が入ってきました。あまりの鼻の通りの良さに、感動しました。それから3日後に無事に退院しました。

症状が酷い場合は手術がおすすめ


蓄膿症は良くある病気ですが、ほとんどの方は通院を繰り返していると思います。そんな方には是非手術をお勧めします。

最近は痛みの少ない術式もあるようなので、是非受診してみてください。

最後に医師から一言

副鼻腔炎は早期治療により、手術を必要とすることは少なくなっています。

風邪から起こった急性副鼻腔炎が慢性化することもありますので、鼻水・鼻づまり・頭の重い痛みが続く場合は、耳鼻科で診察を受けてみてください。

(監修:Doctors Me 医師)