学習障害とは
文部科学省の定義によると、以下とされています。
「基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」
(引用:文科省)
学習障害の原因
具体的にどのようなものかは判明していませんが、脳の機能の病気と考えられています。
もともと学習障害がなかった大人が、けがや脳腫瘍などで脳の機能が障害された場合に、学習障害と似たような脳機能障害を表すこともあります。
子どもの学習障害では、MRIなどの一般的な画像検査では異常は見つかりません。しつけや教育が悪かったということでもありません。
読字障害(ディスレクシア)
見た文字を読むことが難しい障害です。
症状
・文字を見ると団子のように固まって見える
・となりの行の文字と重なって見えるためどこを読んでいたのか分からなくなる
・文字を知らないわけではないのに、文章になるとつなげて読めない
・漢字の音読みと訓読みを使い分けることが不得意
・日本語には苦労しなくても英語は不得意、またはその逆
・「れ」「ね」、「シ」「ツ」など似たような字の見分けが普通以上に難しい
上記のような症状から、目が悪いのかと眼科で検査を受けても、視力や眼球には異常が見られません。
書字表出障害(ディスグラフィア)
書こうとすると鏡文字になったり、見本を書き写すことができないといった状態です。また、ディスレクシアと重複することもあります。
症状
・書き順がおかしい
・独自の文字を作り出してしまう
・特に画数の多い漢字には苦労する
・「羊」のように複数の線が平行に並ぶ字について、3本なのか4本なのか分からなくなる
・文字の大きさをそろえて、行に沿って書くということが苦手
・黒板の文字をノートに写すのに手間取り、内容を理解する暇がない
成績が悪い・勉強が嫌い・集中力がないとされる子どもの原因を調べてみるとディスレクシアやディスグラフィアが隠れていることがあります。
子どもには「普通の状態」がどんなものか分からず、自分の症状が人とは異なることが分からないため、子どもが何に苦労しているのか、どの段階でつまづいているのかをよく聞きとらないと気付けないことがあります。
算数障害(ディスカリキュリア)
数や数字の概念、「+」などの記号を理解できません。
症状
・大小の概念や、文章題であらわされる状況を数式で表すことが苦手
・グラフや図表を読み取ることが困難
・アナログ時計が読めないこと
気付きにくい学習障害
学習障害は他の発達障害とは異なり、学校に行って勉強をするようにならないと気付かれない障害です。
また程度が軽いと学校の勉強程度は何とかこなせるが、社会に出てから支障が生じるということもあります。
同じ課題をするにしても、当事者には他の人がどのように見えているのか分からず、親や教師からすると、当事者がどのように見えているのか分からないため、問題に気付くのが遅れる傾向があります。
治療や相談出来る機関
学習障害は発達障害の一種であり、児童精神科が最適です。保健所や子育て支援センター、児童相談所などでも相談できます。
大人の学習障害
訓練や成長によって学習障害の症状は改善することもあります。学習障害には個人により程度が異なり、得意不得意も異なります。
またADHDなど他の発達障害との重複もあります。軽症の場合は、小児期には診断されず、大人になってから仕事についていけずに判明することもあります。
仕事をするようになると、「電話を聞きながらメモを取る」「会議で出た様々な意見をまとめてレポートする」といった複雑な能力を必要とする場面が増えます。
また計算間違いにしても、今までは成績が悪いだけで済んだのが、会社に損害を与えることにもなります。
最後に医師から一言
学習障害は「読むのが難しいのか、書くのが難しいのか、またはその両方なのか」本人がどの段階でつまづいているのかを見極める必要があります。
(監修:Doctors Me 医師)