新型コロナウイルス感染症は私たちの働き方にも大きな影響を与えました。緊急事態宣言の後、在宅勤務(テレワーク・リモートワーク)や時差出勤で働くようになった人もたくさんいるのではないでしょうか。

 

環境の変化があまりに急であり、多くの人には思った以上の苦悩があると思います。今回は、新型コロナによる仕事や生活環境の変化に対するストレス、そしてその対処法について解説していきたいと思います。

 

目次

 

 

新型コロナがもたらした仕事でのストレスとは?

テレワークがコミュニケーションの機会を減らす

まず、テレワークを開始することで、普段職場にいる時よりも従業員同士のコミュニケーションが少なくなります。

 

その結果、仕事の生産性が下がることも予想できます。

 

さらに、一人暮らしであれば、ずっと自室にこもってパソコン作業を行うことになるので、孤独感を感じる人もいるでしょう。

 

しかも、この状況はいつまで続くか不明瞭であるがゆえに、とてもストレスが溜まるのです。

 

産業医としてこのようなお話をすると、「わが社はテレワークに移行したけど、勤務中はずっとウェブ会議でつながっているから大丈夫です」と返答されることもあります。

 

しかし、それでも、普段の勤務の時よりも確実に減っているものがあります。それは雑談です。

 

今まで社内で何気なく行われていた1~2分の雑談ですら、このウェブ会議システムをつないでいると禁止されているような感覚になります。

 

つまり、それだけ閉塞感も強く、プレッシャーやストレスが大きいのです。

 

「雑談」の機会を増やしてつながりを意識する

 

オンライン飲み会

 

今までは、自分の趣味などでストレスを発散できていたとしても、この社会情勢であればそれも叶わず、余計にストレスが溜まる人もいるでしょう。

 

では、それを分かった上でどのようにストレスを解消していけばいいのでしょうか。

 

それは、雑談ができる環境を自分で作ったり、その環境への参加を心がけることです。これがつながりの意識を高めて、孤独感を解消してくれます。

 

例えば、オンライン飲み会に参加するのもいいでしょうし、このような状況だから、少し疎遠になっているような旧友に連絡をするのも構いません。また、遠く離れた両親にビデオ通話してもいいですよね。

 

体を動かしてオンオフを切り替える

またテレワークでは、今まで自分にとって安心の場所であった家が「職場」になってしまいます。そのため、オンオフを切り替えないと、家にいるふとした瞬間に仕事のことが頭をよぎってしまいます。

 

最近はSNSなどでも自宅でできるストレッチやヨガが紹介されているので、それを見て体を動かすこともリフレッシュに繋がります。

 

また、ライブ配信(生放送)されてるストレッチなどもあります。これはコミュニケーションをとりながら体を動かすことができるので、孤独感が紛れる効果も期待できます。

 

 

新型コロナがもたらした生活・身体的ストレスとは?

夜更かし厳禁!普段の睡眠サイクルを守る

夜更かし厳禁

テレワークや時差出勤になると、起床時間が遅くなってしまう人が大半です。「今までより夜更かしできるな」と考えてしまうためです。

 

これは今後、睡眠障害になる可能性があり非常に危険な考え方です。

 

普段の就寝時間と起床時間から、大幅にずらさないように心がけて下さい。

 

また、起床したらすぐに、顔いっぱいに朝日を2~3分浴びることも忘れないようにしましょう。

 

朝日には体内時計をリセットしてくれる役割があります。乱れた生活リズムを整えて、普段の就寝時間に自然な眠気がやってきます。

 

買い物自粛でも、たんぱく質は意識して摂ろう

また、頻繁には買い物にも行けない状況のため、インスタントや出前などで食事を済ます人も増えるでしょう。

 

そのため、普段以上に食生活が乱れる可能性があります。

 

野菜などヘルシーな食材をたべることも大切ですが、たんぱく質の摂取が不足しがちになると疲労が溜まりやすいので、意識して摂取してください。

 

3大栄養素である、脂質と糖質に関しては、知らぬ間に過剰な摂取になっていますが、たんぱく質はかなり不足しています。

 

具体的には厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020)」で、18歳以上の男性では、1日65g、女性では1日50gのたんぱく質摂取を推奨していますので、目標としてください。

※牛乳コップ1杯(200g):タンパク質6.6g、ご飯茶碗一杯:同3.5g

 

意識の切り替えには身だしなみも大切!

身だしなみ

テレワークでは家が職場になるので、24時間いつでも仕事ができる環境になってしまいます。

 

ずっと仕事のことを考えている状態が続くと、慢性的なプレッシャーがかかりストレスフルです。

 

そこでオンとオフを切り替えるために、就業時間は自宅であっても仕事着に着替え、整髪や化粧などの身だしなみも整えましょう。必ずスーツとまではいかなくとも大丈夫ですが、パジャマのままで仕事をするのは控えましょう。

 

 

不安や恐怖から逃れるためのアルコールはNG

アルコールNG

 

新型コロナウイルス感染症によるストレス反応によって、喫煙や飲酒が増加してしまう人が多くみられます。

 

生活リズムが乱れることや通勤時間が変わることによって、普段より早い時間から遅い時間までお酒を飲み続けることができてしまいます。朝にお酒が残るまで深酒してしまう人もいるのです。

 

この先行きが見えない不安や恐怖をアルコールで紛らわすのは、非常に危険なので絶対にやめましょう。

 

誰もが情緒不安定になる社会情勢であるからこそ、このような時期に普段以上のアルコールが体内に入ると、感情のコントロールが出来なくなります。

 

そのため、ささいなことでイライラして、家族内でケンカが多発することも想定できます。さらに、エスカレートすると、家族へのDV、子供への虐待に繋がるケースも想定できます。

 

また、夫がアルコールの問題を抱えた時、一緒に生活している妻はかなりの精神的負担になるでしょう。

 

それは、夫が家庭外で飲酒絡みのトラブルを起こさないかの心配であったりもしますし、夫が家庭内で担うべき役割が飲酒によってできなくなると、その分、妻が肩代わりしないといけないからです。

 

さまざまな負担が増えてしまって、妻が調子を崩すこともあります。

 

 

分からない未来ではなく、今できることを考えよう

新型コロナの不安対策

 

これだけ先行きが見えない状況では、「この先はどうなるんだろう」とつい考えてしまうと思います。

 

しかし、今は専門家であっても、今後の見通しについて意見が分かれる状況です。実際、分からないことだらけなのでしょう。

 

分からない将来を考え過ぎて不安になってストレスがたまるのは辛いだけです。

 

そのような時は、出来る限りあなたに今できること、あなたが今すべきことに集中し、「今」を意識して過ごしてみてくださいね。

プロフィール

監修:医師 井上 智介
島根大学を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び臨床研修を修了する。 平成26年からは精神科を中心とした病院にて様々な患者さんと向き合い、その傍らで一部上場企業の産業医としても勤務している。