子どもが欲しい夫婦にとって、妊娠や出産に関する治療は非常に重要なものです。新型コロナウイルス感染症における緊急事態宣言中、医師団体は不妊治療の延期を推奨していました。

 

新型コロナの影響が続く状況下で不妊治療はいつ再開すればいいのでしょうか。また、延期が推奨された理由は何だったのでしょうか。医師が解説します。

 

目次

 

新型コロナ流行で不妊治療が延期された理由は?

新型コロナウイルス感染症における緊急事態宣言が出されていた4月、生殖医療に関わる医師の団体・日本生殖医療学会が「緊急事態宣言中の不妊治療延期を推奨する」声明を発表しました。

 

また、妊娠・出産に関わる医療に従事する医師が集まった日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、日本産婦人科感染症学会の3団体も、日本生殖医療学会の考え方を尊重する声明を出しました。

 

この背景には、ヨーロッパ生殖医学会などの海外の学会が延期の声明を出した影響が大きいと考えられます。

 

日本は欧州と比べると新型コロナの蔓延や死者数は少ないものの、未だ新型コロナウイルスに関して解明できていないことが多くあります。

 

海外の事情も加味した上で、母子の体への影響などを懸念し延期が推奨されました。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの声明(2020 年 4 月 1 日版)

 

日本産婦人科学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応(第三版) 」

 

 

不妊治療はいつから再開すればいい?その判断の目安は?

 

 

緊急事態宣言が解除された現在、日本生殖医学会は治療を望む患者と相談した上で、段階的な不妊治療再開に関する提言をしています。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する日本生殖医学会からの通知(2020年5月18日版)

 

しかしその内容は「個別のご夫婦の事情を加味し、主治医と相談しながら決める」といったもので、具体的な治療再開の基準は示されていません。

 

新型コロナそれ自体や母子への影響はまだ研究段階であり、しっかりとした目安を出すことは難しい状況です。

 

年齢やライフプランなどの事情により、早く不妊治療を再開したい方も多いのではと思います。

 

日本、特に住んでいる地域の流行状況などを考慮しながら、主治医とよく相談して治療の再開時期を決めていくことになるでしょう。

 

 

新型コロナ流行の前後で不妊治療の内容に変化はある?

 

治療内容の具体的な変化

治療内容についての最終的な判断は医師と患者の同意に委ねられますが、新型コロナの影響によって以下のような事例があるとされています。

 

不妊の一因になる子宮内膜症などの婦人科系疾患や治療に伴う合併症の治療が平時より遅くなる

 

・排卵誘発剤注射やホルモン剤投与など、来院が必要な不妊治療の延期や一時的な中断

 

・一部自治体や医療機関での妊婦向けPCR検査の実施

 

オンライン診療の広がりも

不妊治療の分野でも、オンライン診療でのカウンセリングなどが実施されるようになってきています。

 

また、排卵日予測で妊娠の可能性を上げるタイミング法(リズム法)など、受診の必要性がない方法の徹底も進むかもしれません。

 

ただ、やはり受診しなければできない治療も多いのは事実です。できることできないことを医師に説明してもらって、今後の治療計画を立てましょう。

 

 

今、妊娠しても赤ちゃんに危険はない?

現在のところ、日本では妊娠中の新型コロナウイルス感染症の発症者が少なく、まだはっきりとはわかっていないのが実情です。

 

ただ、新型コロナに感染しても、流産や胎児の奇形が生じる可能性が高くなることはないとの報告もあります。

 

日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ (2020/05/25 更新) 」

 

 

解熱鎮痛剤の使用には注意!

妊娠を希望している人・妊娠中の人は、薬の副作用が胎児に与える影響を考慮して、服用できる薬が限られているので注意しましょう。

 

新型コロナの初期症状は風邪と似ています。

 

高熱が出たり呼吸器の症状が出た場合は自己判断で市販薬を服用せず、主治医に相談しましょう。

 

 

妊娠生活や出産のためにできる新型コロナ予防策

一般的な「3密を避けること」「手洗いやマスクの着用」などの予防策を徹底することが非常に重要です。

 

また、万が一発熱や息苦しさなどの症状が出てきた場合には、早めに最寄りの保健所に相談しましょう。

 

普段の妊婦検診の病院・先生にも相談し、いざという時の受診先を相談しておくのもよいかと思います。

 

里帰り出産は計画的に

新型コロナに対応するため、ぎりぎりの人員で対応にあたっている医療機関も少なくありません。

 

妊婦の都道府県をまたぐ移動はできる限り避け、里帰り出産をする場合でも早めの帰省を心がけましょう。

 

日本産科婦人科学会「妊婦の皆様へ~“里帰り(帰省)分娩”につきまして」

 

 

まとめ

 

メディアの報道も続いており、妊娠を希望する人・妊娠中の人は何かと心配が多いと思います。

 

まずは一般的な予防対策をしっかり行うことが重要です。

 

新型コロナの母子への影響については分かっていないことも多く、不妊治療も各団体・医療機関が手探りで進めているのが実情です。

 

不妊治療の再開にあたっては、ご自身やパートナーのライフプランなども加味しながら、主治医とよく相談の上で決めていくのが良いかと思います。

 

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