国内での新型コロナウイルス感染症のピークが過ぎた一方で、世界各国ではすでに第2波・第3波による感染拡大が懸念され、一部の国では再び集団感染の報告が上がっています。
日本での再流行「第2波」はいつ頃訪れる見込みなのでしょうか。今からできる具体的な予防方法も含めて医師に解説していただきました。
目次
新型コロナウイルス流行の経緯
今回の新型コロナウイルス感染症は、中国・武漢で2019年年末に報告されてから拡大傾向となりました。
日本では今年1月に感染者が確認されて以降、感染者数が徐々に増加しました。
東京・神奈川・大阪などでは3月中旬から爆発的に増加。感染経路が特定できない発症が増え、医療体制崩壊の危険性もあったため、政府は約2カ月間にわたる緊急事態宣言を発令。外出の自粛や人との距離を保つ生活などを呼び掛けました。
その後、新規感染者数は明らかな減少傾向となり緊急事態宣言は5月末に全面解除となりました。
今後の新型コロナの再流行はいつ?第2波の時期は?
新型コロナウイルス感染症の今後の動向はまだ不透明です。
緊急事態宣言後でも、病院などでのクラスター感染(集団感染)と推定される報告が上がっています。
世界では第2波のリスクがすぐ近くに
世界においては6月1日の時点で、累積感染者総数は550万人を超えました。ブラジル・チリ・メキシコ・アジアなどの新興国では感染拡大が続いています。
WHO Coronavirus Disease (COVID-19) Dashboard
ヨーロッパやアメリカにおいては感染者数は減少しています。ただアメリカでは、中南米などで感染拡大が続いている状況から、秋から冬にかけて大規模な感染の波(第2波)に襲われるリスクが指摘されています。
さらに、冬になると季節性インフルエンザの流行も予想され、専門家からは医療体制を含めて厳しい状況になるとの見通しが伝えられています。
日本での第2波、その見通しは?
日本の状況はアメリカとは異なるので再流行の時期や状況がどうなるかは明確には予想できません。ただ、日本にもこれから第2波・第3波が来る可能性は高いと言われています。
その理由として、新型コロナウイルス感染症は、従来の風邪やインフルエンザといった上気道炎症状を引き起こすウイルスなどと同様、終生免疫(一度その病気にかかると二度とかからない一生涯の免疫)の確立は難しいという意見があるからです。
新型コロナの第2波に備える。予防・対策は?
画像引用:厚生労働省「新型コロナウイルスを想定した『新しい生活様式』を公表しました
治療法や治療薬がまだ確立されていない現状においては、個人のレベルにおいての予防対策がとても重要です。
「新しい生活様式」を実践しよう
厚生労働省や政府の専門家会議は、新型コロナ予防を前提とした「新しい生活様式」を徹底することを求めています。
具体的には、
・身体的距離(最低でも1メートル)の確保
・マスクの着用
・手洗い
・3「密」(密閉空間、密集場所、密接場面)を避ける
などが挙げられます。
地域や施設の感染状況を適宜チェックする
そのほか、地域ごとの感染状況を確認するように心がけるといいでしょう。
クラスターが発生した施設は可能な範囲で利用を控えたり、利用する場合には感染防止対策がしっかり行われているのかを確認したりするのも有効です。
お出かけは近場から
また、不要不急の帰省や旅行は特定警戒都道府県であった都道府県との間の移動を避けるようにすること、観光は近隣のエリアから始めることも推奨されています。
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」
新型コロナの重症化リスクがある人の対策は?
高血圧・糖尿病・心疾患・呼吸器疾患の合併症がある方は重症化リスクが高いとされています。
そのため、原因疾患のコントロールや生活習慣の見直しといった予防医学や慢性疾患の管理が重要です。
同時に、3つの「密」のような集団感染環境を予防すること、リモートワークなどを活用した新しい働き方を取り入れていくなど人との接触を減らすことも心がけてみてください。
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新型コロナの治療薬・ワクチンはいつできる?
感染を予防するためのワクチン開発は世界各国で進んでいます。
国内の製薬企業でも開発が進められていて、年内に臨床試験(製品の効果や副作用に関しての調査を行い安全性を担保する)が開始される見込みです。ただ、実用化は来年以降になると言われています。
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まとめ
新型コロナウイルス感染症の最初のピークは過ぎましたが、第2波・第3波の再流行のリスクが指摘されています。
また、秋冬になるとほかの感染症などの流行も懸念され、十分な医療体制が提供されるのかどうかは未知数です。
基礎疾患がある場合は、その治療や管理を良好にすることと集団感染を予防すること、そして、それ以外のみなさんも含めて、新しい生活様式を取り入れることが重要です。
プロフィール
- 監修:医師 武井 智昭
- 慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、高座渋谷つばさクリニック 内科・小児科・アレルギー科院長。 0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。