当初は新型コロナウイルス感染症治療薬として早期の承認が見込まれたアビガン(一般名:ファビピラビル)。ただ、その後の研究進捗が芳しくなく、人を対象とした医学的研究の結果報告が待たれていました。
今回は、その最終報告(暫定版)の内容について簡単に解説します。
目次
アビガンを飲むタイミングをずらして比較
アビガンの効果を調べる臨床試験は、藤田医科大学を中心に、全国の47医療機関で行われました。
新型コロナウイルス感染症の患者88人(軽症の人)のうち、アビガンを飲んだ患者と、アビガンを飲まなかった患者のグループに分け、5日間のあいだ、ウイルスの減り具合などを調べるものでした。
ただし、当初アビガンを飲まなかったグループも、6日目からは服用しています。
ウイルスは減って、熱も下がった!けど…
アビガンを飲んだグループでは、ウイルスが減少したとされる割合が66.7%、アビガンを飲まなかったグループでは56.1%でした。
アビガンを飲んだグループのほうが、ウイルスが減っているのが分かります。
また、37.5度未満まで熱が下がるのにかかる平均時間についても、アビガンを飲んだグループは2.1日、アビガンを飲まなかったグループでは3.2日となり、差が出ました。
ですが、研究グループは「ウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたものの、明確に『新型コロナの治療に効果がある』とは言えない」という内容の報告をしています。
アビガンの「効果が確認できない」と言われる理由は?
メインの評価項目である「ウイルスの減り具合(検出されるウイルスの減少割合)」について、アビガンを飲んだグループと飲まなかったグループにそれほど大きな差はつきませんでした。
明確に「アビガンが効いている」と言えるほどの数値ではなかったということです。
参加人数が少なかった背景も
その背景として、臨床試験に参加した人数が少なかったことなどが原因として考えられます。
参加人数が多いほど統計学的にも信頼できるデータになりますが、今回の試験に参加した患者は88人。その後、試験開始時点でウイルスが消えていた患者が19人いたということで、最終的には患者69人を対象とした研究結果となりました。
アビガンの副作用って?
試験の中では、血中尿酸値の上昇がもっとも多く確認されました。尿酸値が高いと痛風などの原因になることがあります。
ただ、アビガン服用期間後に再度血中尿酸値を調べてみたところ、ほぼ全員の患者が平常値に戻っていたという結果が出ています。
アビガンの承認見通しは?製品化はされない?
アビガンを開発した企業では、現在も承認を目指して臨床試験(治験)が進められています。
今回の臨床試験でも、その効果が完全に否定されたわけではありません。
今後さらなる研究結果の報告が待たれます。
国内初新型コロナ治療薬「レムデシビル」の効果や副作用は?アビガンの承認見通しは?