線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」という病名を聞いたことがありますか?
患者さんにより症状の重さに差はありますが、重症の場合は身体の末端に軽く触れただけでも「錐で突き刺されるような」といわれる痛みが走ります。場合によっては意識があいまいになり、寝たきりになってしまうこともある怖い病気です。

今回は線維筋痛症について、知っておきたい症状や特徴などを医師に聞きました。

「線維筋痛症」の症状とは…?

線維筋痛症は、全身が激しく痛む病気です。
全身の痛みをともなう病気はほかにも数多くありますが、線維筋痛症の場合、なぜ痛むのかという原因がまったく分からないことが特徴です。痛みは腱の付着する部位、つまり筋肉や関節などに起こるといわれています。非常に強い痛みが全身に起こる、とてもつらい病気です。

また、この全身の痛みのほかに、うつ症状夜よく眠れないといった精神面の症状が現れることがあります。あるいはストレスなどにより便秘と下痢を繰り返す「過敏性腸症候群」、頻尿や急に我慢できないほど強い尿意が出現する「過活動膀胱」など、自律神経の働きの乱れが一因とされる症状が出てくることもあります。目が異常に乾いたり、口渇がひどい、あるいは「逆流性食道炎」の症状を感じる人もいます。
女性であれば月経困難をともなうことがあります。

線維筋痛症は『原因不明』の病気

耐えきれないほどの全身の痛みを感じると、患者さんは病院を受診し、医師は原因を特定するためのあらゆる検査を行うことになります。検査は血液検査レントゲン、CT、MRIといった画像検査をはじめ、あらゆる検査をすることになるかもしれません。しかし、これらの検査では異常が出ないことも線維筋痛症の大きな特徴です。痛みに苦しむ患者さんにとって「原因不明」という判断は非常に大きなストレスになります。

日本には200万人もの患者さんがいるというデータもあります。しかし、現在でも日本の病院やクリニックなどの医療機関で線維筋痛症が十分に認識されているとは言えません。

治療法はあるの…?

この線維筋痛症は圧倒的に男性よりも女性に多く、特に中高年に多く発症すると言われています。
また、遺伝や精神的なストレス、けがや手術、何らかの感染などとの関連があると考えられることもありますが、やはり決定的なものは分かっていません。

そのため本当の意味での特効薬と呼べるようなものはまだなく、治療法も確立されていません。特にどの症状が強く出ているかを参考にして、ステロイド剤や抗うつ薬、消炎鎮痛剤、抗てんかん薬などを用いて治療を行っていく場合が多いようです。

医師からのアドバイス

実は日本では、2012年にプレガバリンという薬が線維筋痛症に伴う疼痛のための薬として承認されています。今後、このつらい線維筋痛症に苦しむ患者さんが少しでも楽になるように原因や有効な治療法が見つかっていくといいです。

(監修:Doctors Me 医師)