胃もたれになると、食欲が落ちて何も食べたくない、という方も多いと思いますが、そのままでは体力が落ちてしまいます。では、胃にやさしい食べ物は一体どんなものがあるのでしょうか?
今回は、なるべく早く健康な胃を取り戻すために、胃もたれでも食べやすい食べ物や、ぜひ作ってみたい救済レシピ、回復に必要な栄養素など、栄養士の横川先生に教えてもらいました。
胃もたれになりにくい食生活もご紹介していますので、また胃もたれにならないよう、おいしく賢く予防していきましょう。
胃もたれの回復に役立つ栄養素は?
胃もたれなど、胃が弱っているときに役立つ栄養素には以下のようなものがあります。
炭水化物
三大栄養素の中では、炭水化物、たんぱく質、脂質の順で消化にかかる時間が長くなっていきます。そのため、消化に負担が少ない炭水化物を食べるのがオススメ。
炭水化物でも、脂質が多い菓子パンなどはNG。 おかゆやうどんなどは胃に優しく、体のエネルギー補給源にもなります。
たんぱく質
たんぱく質は、胃の粘膜の補修に役立ちます。豆腐、卵のほか、たら、かれい、たいなどの白身魚は脂肪分が少なく、あっさりとしたメニューも向くため、薄味にすれば疲れた胃腸を労ってくれます。
ジアスターゼ
ジアスターゼは大根やかぶに含まれている酵素で、消化を助けることで有名です。辛みが少ない大根の上部をすりおろし、みそ汁などに入れるとよいでしょう。
またジアスターゼも加熱に弱いという特徴があるため、みそ汁ができあがった後にトッピングしましょう。
さらに、山芋のヌルヌルした粘りには、大根の3倍もの消化酵素(ジアスターゼ、アミラーゼなど)が含まれているといわれ、疲れた胃腸の強い味方になります。加熱せずに食べられる山芋の「とろろ汁」などはオススメです。
ビタミンU(キャベジン)
名前の通りキャベツに含まれている、胃粘膜の保護をしてくれる成分で、胃薬の成分としても有名です。そんなビタミンUは水溶性なので、キャベツをみそ汁やスープなど、汁ごととれるメニューにするとよいでしょう。
ちなみに、キャベツには大根と同じく、消化を促すジアスターゼも含まれています。ビタミンUはジアスターゼ同様に加熱に弱いため、生のままであればよく噛んで食べる、またはさっと火を通す程度にしましょう。キャベジンとジアスターゼの相乗効果によって胃もたれや胸やけを和らげることが期待できます。
クエン酸
主に梅干しなどに含まれる酸味の成分です。クエン酸は唾液や胃液の分泌を促し、胃腸の働きをサポートしてくれます。おかゆなどに梅干しをのせて食べるとよいでしょう。また、梅干し、しょうゆ、しょうがを組み合わせた梅しょう番茶もオススメです。
グルタミン
グルタミンは胃粘膜の保護に役立つとされるアミノ酸で、キャベジン同様に胃腸薬にも使われています。食材でいえば、小麦、海藻、大豆製品の他、魚や肉にも含まれています。
しかし、水や熱に弱いため、生卵や刺身でとるとよいといわれ、生食を控えたい胃もたれときには食材からはとりにくいといえます。
さらには、グルタミンは体でも作られるアミノ酸ですが、ストレスなど何らかの要因で、体内で必要な量が追いつかなくなることがあるため、日ごろから胃腸が弱いと感じている場合、前もってサプリメントでとっておくのもよいでしょう。
サプリメントから摂取する場合は、使用方法をしっかり確認するようにしてください。
胃もたれでつらいとき、どんなものなら食べやすい?
火が通ったものや、胃酸の分泌を整え、消化を促すメニューが適しています。 具体的には、以下のような料理が食べやすく消化を促してくれます。
・おかゆや雑炊
・温野菜
・煮物
・茶碗蒸し
・汁もの
・すりおろし(大根やりんごなど)
胃もたれになってしまったときの救済レシピ
疲れた胃腸をケア!山芋のシンプルとろろ汁
【材料1人分】
・山芋(長いも)5cm(100g)
・だし汁 150mL
・みそ 小さじ1
・(トッピングに)梅干し ひとつ
・(お好みで) 小ネギ 適量
【作り方】
1. 山芋は皮を剥き、酢水につけすりおろす
2. 鍋にだし汁を温め、沸騰させたら味噌を溶き入れ、器にそそぐ
3. 2の器に1のすりおろした山芋を入れ、お好みで小ネギをトッピングしたらできあがり
【ポイント】
山芋を酢水につけることであく抜きだけでなく、変色を防ぎ、手についたときのかゆみ予防になります。また、酢水につける水とお酢の割合は水250mLに対して酢小さじ1/2程度になります。
山芋のヌルヌルした粘りには、大根の3倍もの消化酵素(アミラーゼ、ジアスターゼなど)が含まれているので、疲れた胃腸の強い味方になります。
胃もたれになりにくい食生活5カ条
胃もたれになりにくい胃をつくるために、5つのポイントに気をつけて普段の食生活を工夫してみましょう。
1. ゆっくりよく噛んで食べる。
よく噛むことで出てくる唾液には消化作用があるため、胃の負担軽減に役立ちます。
2. 脂肪分やカフェインなどの刺激物が多い食べ物や飲み物を食べ過ぎない。
脂質は消化吸収に時間がかかるため、頻度・量が多いと胃腸が疲れる原因に。また刺激物は、胃酸の分泌を増やし、胃の粘膜を荒らします。
3. アルコールの飲み過ぎに注意する。
アルコールは適度な量ならよいですが、過度に飲み過ぎると胃酸と胃粘液のバランスを崩す原因になります。
4. 食後にリラックス時間を作る
食後にすぐに動くことで、食べ物を消化するうえで必要な血液が胃の方へ行きわたりにくくなり、消化不良の原因になります。テレビを見たり、リラックスできる時間を挟むことで胃の負担を軽減できます。
5. 薄味を中心にする。
濃い味付けは胃の刺激となり胃壁を荒らしやすいため、素材の味を活かした薄味を心がけましょう。
最後に横川先生から一言
胃もたれの原因は日頃の食べ方や内容によって、胃が疲れることが原因の1つ。
「今日は脂っぽいお食事を食べ過ぎたり、飲み過ぎたかな?」と思った場合、次の日は元気でも胃腸に優しいメニューにしたりと前もって胃腸をケアしてあげるとよいでしょう。
参考資料
田中 明・蒲池 桂子(2016)『あたらしい栄養事典』日本文芸社.
石原結實(2018)『図解 カラダを温める食べ物』日本文芸社.
五明 紀春・古川 知子(2005)『食材健康大事典』時事通信出版局.
金丸 絵里加(2013)『毎日の健康スープと煮込みレシピ』PHP研究所.
谷川 祐子(2010)『おとなの楽習 (12) 家庭科のおさらい』自由国民社.
藤田 紘一郎(2016)『がんにならない整腸術』PHP研究所.
桑原 弘樹(2016)『サプリメント健康バイブル』学研プラス.
中嶋 洋子(2017)『これは効く!食べて治す 最新栄養成分事典』主婦の友社.
主婦の友社(2018)『 保存版 一生モノの知恵袋 最新栄養成分事典』主婦の友社.
プロフィール
- 監修:栄養士 横川 仁美
- 食と健康・美容を繋ぐ「smile I you」代表。 お味噌汁レシピ研究家×薬機法に強いセールスライター。 管理栄養士を取得後、保健指導や重症化予防、ダイエットサポート、電話相談のカウンセリング等を通して、のべ2000人の方の食のアドバイスに携わる。現在はコラム執筆・監修、レシピ作成、オンラインでのダイエットカウンセリングを中心に活動。 薬機法・景品表示法・健康増進法の知識も生かしながらさまざまなライティング活動を行っている