糖尿病の症状

糖尿病は、「1型糖尿病」「2型糖尿病」「妊娠糖尿病」などのタイプに分けられます。どちらも病状が重くなると、喉が渇きやすく尿が多くなる多飲多尿、体重減少、疲れやすい、足がつる、感染症にかかりやすいなどの症状が出てきます。

妊娠糖尿病とは、妊娠中に発症する糖代謝の異常です。母体だけではなく胎児への影響もあります。母体では、妊娠高血圧症候群、尿路感染症、羊水過多症などが現れる可能性があります。

糖尿病における合併症


●糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害は、血糖値の高い状態が長期にわたると発症する可能性がある合併症です。手足のしびれや痛みなどが生じます。

また、糖尿病によって動脈硬化を起こすと、動脈の血管の中が狭くなって血の巡りが悪くなります。特に指先などが循環不良で酸欠状態になりやすく、指先の皮膚や皮下脂肪、筋肉などが黒く変色することがあります。さらに悪化した場合、足に潰瘍ができたり壊死したりして足の切断を余儀なくされることもあります。

通常は強い痛みを感じますが、末梢神経障害を起こして痛みを感じないという特徴もあります。

●糖尿病網膜症
目の網膜にある血管が詰まったり変形することで、目のかすみや飛蚊症、視力低下、失明などにつながります。

糖尿病網膜症は、一度発症すると治すことはできないため、レーザー治療などで進行を抑制します。年齢が若いほど進行が早いため、糖尿病の場合は定期的に眼科検診を受けましょう。

●糖尿病性腎症
糖尿病で足がむくんでいたら、「糖尿病性腎症」を合併している可能性があります。腎臓は、血液をろ過して老廃物や塩分を尿として体外に排出する働きがあります。糖尿病によって腎臓の機能が低下すると、塩分や老廃物が排出されず、足がむくんでしまいます。

人工透析を受けなければならない可能性もあるため、糖尿病で足のむくみを感じた場合、早急に受診してください。

●皮膚の異常
糖尿病になると体の抵抗力が弱るため、皮膚にも影響が出ます。糖尿病の進行によってさまざまですが、主な症状としては、かゆみ、湿疹、水疱などがあります。

また、細菌やウイルスの感染により、皮膚炎を起こしやすくなります。カビへの抵抗力も落ちるため、水虫やカンジダ菌への感染につながることもあります。

糖尿病の原因

1型糖尿病


肥満度には関係なく、インスリンを作る膵臓の一部が自己の免疫により破壊されてしまったことなどで発症します。遺伝的な要因が関係している場合もあります。

原因がわからない場合もあり、その場合は「特発性」と呼ばれます。

2型糖尿病


2型糖尿病は、遺伝的な要因に環境要因が重なることで、インスリンが作用しなくなって発症すると考えられています。40歳以上で肥満の場合は、注意が必要です。

環境要因に関しては、主に生活習慣が関係しています。

食生活に関しては、過食、高脂質・高糖質の食事、それによる肥満が原因となります。また、運動不足や喫煙といった生活スタイルも、糖尿病の発症を促します。さらに、ストレスと糖尿病の関連も指摘されています。

妊娠糖尿病


妊娠糖尿病の原因は、高カロリーの食事や肥満などと考えられています。糖尿病になりやすい遺伝的な要素を持っている場合は、発病のリスクになります。

妊娠後期になっても高血糖の状態が続いた場合には、母体には妊娠高血圧症候群や尿路感染症のリスクが高まります。胎児には、巨大児や低体重児のリスクが通常の場合よりも高まります。

糖尿病の治療

糖尿病治療の基本は、食事療法運動療法です。医師や栄養士のアドバイスのもと生活習慣の改善を行ってもコントロールが難しい場合に、薬物療法も行います。

薬物療法


糖尿病の薬は、大きく内服薬と注射薬に分類されます。

●内服薬
内服薬としては、以下のような薬を使用します。

スルホニル尿素薬、速効型インスリン分泌促進薬、DPP-4阻害薬:膵臓からインスリンの分泌を促進する

αグルコシダーゼ阻害薬:糖質の吸収を緩やかにすることで、食後の血糖値の上昇を抑える

ヒグアナイド薬、チアゾリジン薬:インスリンの感受性を高める

SGLT2阻害薬:尿中へ糖の排泄を促進する

●注射薬
注射薬は、大きく2種類に分類されます。インスリンを化学修飾して作用時間を調整したインスリン製剤、インクレチンを介した血糖降下作用があるGLP-1受容体作動薬があります。

インスリンの注射は、1型糖尿病の人にとっては不可欠です。インスリンの注射には、作用時間に違いを持たせたさまざまな種類の薬があります。患者さんによって、作用時間の違う種類の薬を組み合わせて投与します。

注射は、腹部、大腿などに自分で打ちます。注射針は細いタイプを使用し、痛みが軽減できる工夫がされています。

●糖尿病治療薬の副作用
糖尿病治療薬の副作用で代表的なものは、低血糖です。糖尿病の薬は、高い血糖値を正常範囲まで低下させることを目的としています。しかし、普段よりも動いてしまった、食事量が普段よりも少なかったなど、薬の量と食事療法、運動療法とのバランスが崩れてしまうと低血糖になることがあります。

症状としては冷や汗、空腹感、動悸、倦怠感などがあり、さらに血糖値が低くなると意識障害や痙攣、昏睡状態に陥ることもあります。低血糖症状を自覚した場合は、糖分の摂取が必要となります。

αグルコシダーゼ阻害薬と呼ばれる薬剤を使用している場合に限っては、ただの糖分ではなくブドウ糖の摂取が必要になります。

糖尿病の予防

2型糖尿病は生活習慣病とも言われているように、生活の中で気をつけたいことがあります。

まず、自分の適正体重を知り、バランスのよい食事と運動、禁煙、ストレスを溜め込まないことが大切です。食事はエネルギー摂取量を把握し、栄養バランスよく摂取します。運動は、有酸素運動をとりいれ、週に150分を目安とします。

アルコールの摂取量に気をつけて、睡眠時間を確保することも糖尿病を予防するために大切なことです。

コーヒーやヤーコン茶、サラシア茶など、血糖値の改善が期待できる飲み物があります。しかし、言うまでもなく、それらに依存するのではなく、食事や運動を軸に自己管理をしていきましょう。