感染者が増え続けている新型コロナウイルス感染症。
今回は「レムデシビル」に続き、第二の新型コロナ治療薬となった「デキサメタゾン」について見ていきましょう。
新型コロナ治療薬「デキサメタゾン」とは
デキサメタゾンはいわゆるステロイド薬です。
ステロイドには「抗炎症作用」があります。実はこれまでにも、重度の蕁麻疹、アナフィラキシーショック、喘息などの治療で広く使われてきました。
最近は(新型コロナに限らず)肺炎でも使われています。感染による炎症から、肺を守るのが目的です。
デキサメタゾンが新型コロナに効果がある根拠
新型コロナで入院した患者を対象としたイギリスの試験で、「人工呼吸器を使ったり酸素投与をされている患者では、デキサメタゾンを使用することで、死亡率が低下した」という結果が出ています。
この結果から、新型コロナの治療薬として、デキサメタゾンが注目されるようになりました。
N Engl J Med. 2020 Jul 17「Dexamethasone in Hospitalized Patients with Covid-19 - Preliminary Report」
どんな場面で使用される?副作用は?
上記の通り、人工呼吸器が必要となるような重症患者や、人工呼吸器は使わなくともマスクなどで酸素を吸う必要のある中等度の患者が対象となります。
逆に軽症患者では、デキサメタゾンは使っても使わなくても死亡率に変わりはなかったとの結果も出ています。
また、デキサメタゾンにも副作用(血圧が上がる、胃潰瘍などの消化管出血、太りやすくなる、など)があるので、軽症患者での使用には慎重な検討が必要です。
デキサメタゾンとレムデシビルの違い
レムデシビルは、もともとはエボラ出血熱というウイルス感染症の治療に使われる抗ウイルス薬であり、新型コロナウイルスを直接攻撃する作用があります。
それに対して、デキサメタゾンは炎症を抑える働きを持つものであり、ウイルスを攻撃する作用はありません。
まとめ
新型コロナウイルスそのものについてまだまだ分かっていないこともたくさんあるため、治療薬についても研究途上といったところです。
デキサメタゾンも効果は限られており、副作用もあります。
使用に際しては、個々の患者ごとにしっかり適応を見極めていく必要があると思います。
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厚生労働省「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第2.2版」
プロフィール
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- 医師 赤木孝匡
- 甲府共立病院での初期研修ののち、救急医療、在宅医療、総合診療などの業務に従事。現在は浅井病院精神科での勤務を中心に、精神科外来・スーパー救急病棟、精神科訪問診療、内科合併症管理などを担当している。