消化機能を助ける成分として今注目されているウルソデオキシコール酸。一体どのような成分なのでしょうか。今回は作用から副作用まで分かりやすくまとめてみました。

 

目次

 

 

ウルソデオキシコール酸ってどんなもの?

 肝臓の働き

 

ウルソデオキシコール酸は、私たちの体の中に微量に存在する胆汁酸のひとつです。また、医療用医薬品としても使用されている成分でもあります。

 

胆汁酸は肝臓で作られる「胆汁」という消化液に含まれ、脂肪の消化や水に溶けないビタミン(脂溶性ビタミン)の吸収を助けています。医薬品としては比較的安全に使用されている成分ですが、まれに一時的な下痢便秘などの副作用が報告されることもあります。

 

 

ウルソデオキシコール酸の作用と効果

 胃腸の症状に対するウルソの効果

 

胆汁酸の仲間であるウルソデオキシコール酸は、消化機能を助ける働きが知られています。以下で詳しく見ていきましょう。

 

胃もたれ消化不良の改善

高脂肪の食事を摂った後、「胃がもたれた」「なかなか消化されない」といった経験をした人も多いのではないでしょうか。これは消化しなければならない脂肪が多いために、消化機能が追いついていない状態です。

 

ウルソデオキシコール酸は脂肪を消化する胆汁酸の分泌を促進するだけではなく、脂肪などを分解する膵酵素の分泌も促進。さらにこの膵酵素を活性化させる役割も担っています。これらの働きによって胃もたれや消化不良を改善していきます。

 

消化器系機能を一括サポート

吸収された大部分のウルソデオキシコール酸は肝臓に取り込まれ、その後は胆嚢・胆管を通って十二指腸に排出されます。

 

しかし、そのまま体外に出るわけではなく、小腸から再度吸収されて肝臓に取り込まれます。これを「腸肝循環」と言い、この過程を繰り返しながら徐々に体外へ排出されていきます。

 

ウルソデオキシコール酸は腸肝循環をしながら様々な消化器に長時間作用し、消化機能をサポートしてくれるのです。

 

 

消化器系の万能薬「熊胆」とウルソデオキシコール酸の関係とは?

 熊胆とウルソの関係

 

熊の胆嚢を乾燥して得られる「熊胆(ユウタン)」は、漢方医学で使用される生薬の一種であり、約千年前から消化器系症状の万能薬として使用されてきたと言われています。1927年、日本において熊胆に含まれる有効成分がウルソデオキシコール酸だと判明し、その後に製剤化されました。

 

消化機能を助ける成分としてウルソデオキシコール酸が発見される以前から、人々はこの成分の有効性に目を付けていました。そして、今では処方箋医薬品の成分としても非常にスタンダードなものになっています。

 

医学・薬学が発展してきた過程で、古くから用いられてきた成分でありながら今も廃れずに使用されているということは、それだけ効果と安全性のバランスがとれている証なのかもしれません。

 

 

食べすぎ・飲みすぎが引き起こす肝臓の病気

 肝臓の病気

 

美味しいものを食べたり飲んだりすることは心身を満たします。ただし、食べ過ぎや飲み過ぎはさまざまな体の不調を引き起こす原因になってしまうことも忘れてはいけません。

 

例えば、アルコールの飲み過ぎは肝障害や脂肪肝に繋がる可能性があります。また、高脂肪の食事や不規則な生活によって胆石症を誘発することもあるでしょう。

 

特に近年、食の欧米化によりコレステロール結石の症状を有する方が増加していると言われており、ひどい場合は激痛や死に至る可能性も否定できません。生活習慣・食生活に気をつけながら食事を楽むのが一番ですね。

 

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ウルソデオキシコール酸、市販薬でも効果はある?

市販で使用されている成分も医療用で使用されている成分も、同じウルソデオキシコール酸ですから、成分が示す効果は同じだと言えるでしょう。

 

ただし表示されている効能は異なります。医薬品は肝機能改善やコレステロール系胆石の溶解、消化機能改善などですが、市販薬として表示されている効能は消化機能の改善(胃もたれ、消化不良、消化不良による腹部膨満感、食欲不振、消化促進、食べ過ぎ、胸のつかえ)のみです。

 

肝機能改善やコレステロール系胆石の溶解などの治癒が目的の場合は、必ず医師や薬剤師の指示・観察のもと、正しい用量・正しい期間においてウルソデオキシコール酸を使用してください。一方、消化機能の改善が目的であれば、市販薬でも有用な効果が期待できると考えられます。

 

 

ウルソデオキシコール酸は痩せる?二日酔いに効果はある?

 ウルソは痩せる?二日酔いに効果はある?

 

ここでは、よくある疑問に対して解答していきます。

 

ウルソデオキシコール酸で痩せる?

高脂肪食が招く胃もたれや腹部膨満感は、必要な食事・栄養を摂取することの妨げになり、食生活のリズムが乱れる可能性があります。また、胃もたれや腹部膨満感が運動不足を招くこともあるでしょう。

 

ウルソデオキシコール酸が高脂肪の食事を全てなかったことにするわけではありませんが、消化・吸収を助けることで上記の悪循環を防止する一助になります。つまり、消化機能の良い状態を保つことで「太らないような食事習慣を作ること」につながるわけです。

 

二日酔いに効果はある?

ウルソデオキシコール酸には、アルコールを代謝する作用はありません。しかし、アルコールと共に摂取した高脂肪食により引き起こされた消化不良や腹部膨満感を改善する効果は期待できます。

 

二日酔いの気持ち悪さはアルコールが原因のこともありますが、胃腸の調子が悪いことによって不快感が生じることも多いと考えられます。その場合にはウルソデオキシコール酸の働きは効果があるかもしれません。

 

 

まとめ

ウルソデオキシコール酸は熊胆として古くから慕われ、人々の胃腸の調子を整えてきました。その歴史が物語るように、効果と安全性は非常にバランスが良いと言えます。

 

食生活や生活習慣に気を配りたいあなたの消化機能の強い味方になってくれるでしょう。

 

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参考:

胆石症診療ガイドライン2016

https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/GS2_re.pdf

ウルソ錠 インタビューフォーム

https://www.info.pmda.go.jp/go/interview/2/400315_2362001F1088_2_11A_1F.pdf

日本生まれの肝 ・ 胆 ・ 消化機能改善剤 ウルソデオキシコール酸開発の歩み

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjhp/55/1/55_13/_pdf

プロフィール

薬剤師 志村駿介
大型調剤薬局にて調剤業務を経験。その後、市販薬やサプリメント、健康機器の販売業務にて人々のセルフメディケーションの手助けを行う。現在は薬学博士取得のためヨーロッパで最新の薬物治療や医療制度を学びながら、Malta Medicines Authorityにて医薬品の安全性評価や規制の仕事を行っている。